■ 過去20年間の注目論文

過去20年間の世界での注目論文を解説します。これらの記事を読むことによって 食品微生物学の各トッピクス の基礎力が身につきます。このコーナーの記事は、次の記事によって構成されています。

1)公益社団法人日本食品衛生学会の会員限定メールマガジンで私が執筆した記事を、学会の許可を得て、メルマガ発行以後1年以上経ったものについて公開しています。ただし、最新状況を反映して、随時、加筆・修正しています。

2)本ブログのためにオリジナルに書き下ろした記事。

リステリア
米国FDAがリステリア・モノサイトゲネスではなくリステリア属菌の環境モニタリングを推奨する理由とは?新着!!

 食品製造工場における環境モニタリングプログラムでは、Listeria monocytogenesの検出が重要視されています。しかし、米国FDAのガイドラインでは、まずリステリア属菌を指標菌としてモニタリングを行うことで十分な効果が得られるとされています。本記事では、リステリア属菌のモニタリングが推奨される理由と、米国における具体的な事情について詳しく解説します。

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一般生菌数や衛生指標菌
テーブル表面での大腸菌の生存期間はどれぐらい?

大腸菌は哺乳動物の糞便に由来するグラム陰性菌で、その環境耐性の弱さからふん便指標に利用されています。ところで、大腸菌が人の清潔でない手を介してテーブルに移ると、どれくらいの時間その場所で生き延びることができるでしょうか?この問いは、衛生管理上非常に意義深いものです。この記事では、テーブルなど固体表面上で大腸菌がどれだけの時間生き延びることができるのか、科学的研究結果を通じて解き明かします。

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黄色ブドウ球菌
黄色ブドウ球菌保菌者の割合は?その実態と原因解明

 前記事では、イタリアの食事施設の調理者が原因で黄色ブドウ球菌中毒が起きた事例を紹介しました。ここで気になるのは、一般の人々の中で黄色ブドウ球菌はどれぐらいの割合で保菌しているのかという疑問です。黄色ブドウ球菌は健康な成人の前鼻に常在する常在菌であり、世界人口の20%から30%が断続的および持続的に感染していると言われています。本記事では、その保菌率やなぜ保菌してしまうのかの原因についての詳細な実態を解明します。黄色ブドウ球菌の保菌に関心がある方必見です!

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■ 過去20年間の注目論文
米国のサルモネラ規制基準:鶏肉中の菌数と血清型の科学的根拠を探る

前回の記事では、米国において生の鶏肉に対するサルモネラ菌の規格基準が適用される可能性について、米国農務省の発表を紹介しました。この基準では、菌数を10 CFU/g (ml) とすることが検討されており、対象は特定の血清型(Salmonella EnteritidisやSalmonella Typhimuriumなど)に限定される見込みです。しかし、なぜこのような菌数レベルと血清型が農務省の規制対象として設定されることになったのでしょうか。今回の記事では、この米国農務省の規格基準の科学的根拠に関連する論文を紹介します。

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リステリア
スウェーデンにおけるリステリア食中毒の増加:高齢化社会の新たな挑戦

 高齢化が進む日本では、免疫力の低下した人々が増加しており、リステリアによる食中毒のリスクが高まっています。この問題は日本に限らず、ヨーロッパ各国でも共通しており、特にスウェーデンでのリステリア食中毒の増加傾向が顕著にな […]

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カンピロバクター
家庭での生鶏肉調理:交差汚染のリアルリスクとカンピロバクター

前記事で、家庭での鶏肉調理時におけるサルモネラ菌の二次汚染リスクを詳しく解説しました。多くの研究がキッチンの再現実験をベースに報告されていますが、実際の家庭のキッチンでの調理状況を詳細に観察した研究はほとんどありません。今回は、ポルトガルの12人の一般家庭での生鶏肉調理を直接観察し、交差汚染のリアルなリスクに焦点を当てた興味深い研究を紹介します。安全な調理のヒントも含め、ぜひご一読を!

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サルモネラ
台所でのサルモネラ交差汚染の危険性:鶏肉の正しい取り扱い方法とは?

生の鶏肉とサルモネラ。EUでは法的な規格基準が設定され、小売店で販売される生鶏肉のサルモネラの汚染対策が行なわれていますが、米国や日本では現時点では生の鶏肉に微生物規格基準は設定されておりません。生の鶏肉を取り扱う際、間違った方法で調理を進めると、サルモネラが他の食材や調理器具に移る「交差汚染」のリスクが増大します。この記事では、そのリスクを深堀りし、台所での安全な鶏肉の取り扱い方法を解説します。

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増殖制御・消費期限
英国における消費期限切れ食品への意識:消費者と事業者の視点

消費期限と賞味期限、消費者にとって紛らわしい言葉ですね。この事情は英国でも同じようです。消費期限を超えた食品を販売することについて日本より厳格な法的枠組みを持つ英国。その英国における一般消費者と食品事業者がどのような視点を持っているかについて本記事では紹介します。 2023年11月に英国食品基準庁が発表した消費期限切れ食品に関する消費者と事業者の意識調査結果を詳しく解析し、具体的な事例と共に紹介します。

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増殖制御・消費期限
EFSAによる消費期限設定法ガイドライン

前の記事では、EUの食品事業者が自社製品に賞味期限と消費期限のどちらの表示を施すかについて、EFSAが示した判断基準ガイドラインを紹介しました。この記事では、消費期限表示が適用される場合に、どのような日数を消費期限に設定すべきかに関するEFSAのガイドラインの内容について説明します。

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増殖制御・消費期限
消費期限VS賞味期限:EFSAが提供する明確なガイドラインと便利なフローチャートで判断を簡単に!

自社の製品について、賞味期限と消費期限、どちらを製品に設定するべきか迷う食品事業者も多いと思います。EUの食品事業者も同じ悩みを抱え、欧州食品安全機関(European Food Safety Authority、EFSA)にガイドラインの作成を依頼しました。2020年に発行されたこのガイドラインは、食品事業者が一目で製品のどちらの期限を設定すべきかを判断できる直感的なフローチャートを提供しています。この記事では、EFSAの提供する分かりやすいガイドラインとその具体的な内容について詳しく解説します。どの製品にどの期限を設定するか、このフローチャートで簡単に理解できます!

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