■ 過去20年間の注目論文

過去20年間の世界での注目論文を解説します。これらの記事を読むことによって 食品微生物学の各トッピクス の基礎力が身につきます。このコーナーの記事は、次の記事によって構成されています。

1)公益社団法人日本食品衛生学会の会員限定メールマガジンで私が執筆した記事を、学会の許可を得て、メルマガ発行以後1年以上経ったものについて公開しています。ただし、最新状況を反映して、随時、加筆・修正しています。

2)本ブログのためにオリジナルに書き下ろした記事。

増殖制御・消費期限
英国における消費期限切れ食品への意識:消費者と事業者の視点

消費期限と賞味期限、消費者にとって紛らわしい言葉ですね。この事情は英国でも同じようです。消費期限を超えた食品を販売することについて日本より厳格な法的枠組みを持つ英国。その英国における一般消費者と食品事業者がどのような視点を持っているかについて本記事では紹介します。 2023年11月に英国食品基準庁が発表した消費期限切れ食品に関する消費者と事業者の意識調査結果を詳しく解析し、具体的な事例と共に紹介します。

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増殖制御・消費期限
EFSAによる消費期限設定法ガイドライン

前の記事では、EUの食品事業者が自社製品に賞味期限と消費期限のどちらの表示を施すかについて、EFSAが示した判断基準ガイドラインを紹介しました。この記事では、消費期限表示が適用される場合に、どのような日数を消費期限に設定すべきかに関するEFSAのガイドラインの内容について説明します。

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増殖制御・消費期限
消費期限VS賞味期限:EFSAが提供する明確なガイドラインと便利なフローチャートで判断を簡単に!

自社の製品について、賞味期限と消費期限、どちらを製品に設定するべきか迷う食品事業者も多いと思います。EUの食品事業者も同じ悩みを抱え、欧州食品安全機関(European Food Safety Authority、EFSA)にガイドラインの作成を依頼しました。2020年に発行されたこのガイドラインは、食品事業者が一目で製品のどちらの期限を設定すべきかを判断できる直感的なフローチャートを提供しています。この記事では、EFSAの提供する分かりやすいガイドラインとその具体的な内容について詳しく解説します。どの製品にどの期限を設定するか、このフローチャートで簡単に理解できます!

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リステリア
仙台市のリステリア症18例解析: 世界的なデータベースとの比較

 日本におけるリステリア症では、原因食品が特定された食中毒事例は1例に限られますが、原因食品不明のリステリア症の患者は病院でしばしば発生しています。仙台市も例外ではなく、2006年から2019年までの13年間に仙台市内の病院で報告された18例のリステリア症患者のゲノムを世界のデータベースと比較した結果、食品や重篤な症状の原因となるリステリア菌株と、仙台の臨床株との間には密接な関係があることが判明しました。

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リステリア
中国食品微生物規格の一大転換:リステリア規格、幅広い"Ready to Eat"対応へ

米国やEUでは「Ready to Eat」食品全てにリステリア・モノサイトゲネスの規格基準が設定されているのに対し、日本は生ハムやチーズに限定されています。では、北東アジアの隣国、中国はどうなのでしょうか?実は、中国でもこれまでは、肉製品に限定された規格でしたが、2021年の大幅な微生物規格改正により、水産、野菜・果実、飲料など、広範な「Ready to Eat」食品でリステリアに対する微生物規格基準を導入しました。本記事で、その舞台裏を詳しく探ります。

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ノロウィルスおよびその他ウィルス関連
ノロウィルス感染防除としてのトイレ徹底洗浄

ノロウイルスはレストラン、ready to eat 食品の製造現場、オフィス、公共施設、クルーズ船や高齢者施設など、さまざまな環境での食中毒の大きなリスク要因となります。特に衛生管理が徹底されていないトイレからの感染拡大も重要な要因の一つとなります。では、ノロウイルスのアウトブレイクを防ぐためには、どのような対策が効果的でしょうか?本ブログ記事では、クルーズ船のトイレ洗浄に関する大規模な潜伏調査事例から、トイレ洗浄とノロウイルスのアウトブレイクとの関連性について考察します。

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ノロウィルスおよびその他ウィルス関連
レストランでのノロウィルス防除のベストプラクティスとは?

前記事では、米国のレストランでのノロウィルスのアウトブレイクを防ぐためには、従業員の教育がいかに重要かを紹介しました。では、具体的にどのような従業員教育がベストプラクティスとなるのでしょうか?この記事では、米国FDAの職員が行ったリスクアナリシスの結果に基づいて、その疑問に答えます。

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ノロウィルスおよびその他ウィルス関連
レストランのポリシーによるノロウイルス感染率の違い

 世界中のレストランで頻発するノロウイルスによる食中毒は、主にウイルスに感染した従業員が原因で起こります。この問題を解決するためには、レストランにおけるノロウイルス対策が欠かせません。では、どのような対策が最も推奨されるのでしょうか?米国のCDCは、ノロウイルスのアウトブレイクを経験したレストランで実施されていた従業員教育と衛生対策に注目し、食中毒リスクを低減する要因を探求しました。

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ノロウィルスおよびその他ウィルス関連
ノロウイルス感染後、実際に何日間排出が続く?

 ノロウイルスに感染した後、私たちは実際にどれくらいの期間ウイルスを排出し続けるのでしょうか?治癒後も排出が続くと言われるノロウイルスに関する情報は多いですが、具体的な日数や期間に関する詳細データは意外と少ない。そんな中、約15年前の2008年にテキサス州ヒューストンのベイラー医科大学で発表されたこの研究は、今でもその価値を持っています。アトマー博士らのチームは、当時としては先進的な高感度リアルタイム定量PCRを使用。その結果、ノロウイルスは治癒後、驚きの最長8週間も糞便中に検出されることが確認されたのです。

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カンピロバクター
米国における生ガキによるカンピロバクター食中毒:水産物の知られざる危険

昨年、日本で流しそうめんによるカンピロバクター食中毒事件が発生し、その意外性が注目を集めました。同様に、米国でも昨年暮に、カンピロバクター食中毒の意外な原因食品としてカナダ・ブリティッシュコロンビア産の特定の生ガキによるカンピロバクター食中毒が報告されました。これらのケースは、一見カンピロバクター食中毒の原因と無関係と思える食品からの食中毒リスクを浮き彫りにしています。実は、生ガキによるカンピロバクター食中毒は、新たなケースではなく、2021年にも米国ロードアイランド州で食中毒事件が起こっています。本記事では、これらの生ガキに起因するカンピロバクター食中毒の事例を詳しく探り、その背景と予防策について解説します。

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