■ 世界最新ニュース
食品微生物分野の世界の最新注目ニュースを紹介します。
EU新リステリア規則、なぜ生まれたのか——一つの食品事故とひとつの判決の物語
6月29日公開記事の後半部分では、2026年7月1日に施行されたEUのリステリア新規則(Regulation (EU) 2024/2895)について、そのポイントを解説しました。「リステリア菌が増殖可能な食品」について、消費期限中に100 cfu/gを超えないことを製造業者が証明できない場合、流通・販売段階の製品にも25g中不検出という厳しい基準が適用される、というのが今回の改正の核心でした。
今回はその補足として、「なぜこのような改正に至ったのか」という背景を掘り下げてみたいと思います。実はこの改正の背景には、ある一つの食品事故と、それをめぐって争われたEU司法裁判所(CJEU)の判決があると考えられています。今回はその事件の概要をご紹介したうえで、この判決がどのように今回の改正につながったと考えられるのかを整理します。
インスタントラーメンでサルモネラ食中毒?—EFSAが報告した多国間アウトブレークと低水分食品リスク
2026年6月30日、EFSA(欧州食品安全機関)がインスタントラーメンを原因食品とするサルモネラの多国間アウトブレイクについて報告書を公表しました。即席麺を原因食品とするサルモネラ食中毒事例は、少なくとも筆者が確認した範囲では過去に前例が見当たりません。加熱調理を前提とする食品でのサルモネラ事例として、整理しておく価値があります。
粉末サプリでもサルモネラ食中毒は起きる―米国で相次いだモリンガ葉粉末関連アウトブレークから考える、健康食品原料の盲点
「サプリメントで食中毒」と聞くと、多くの方は少し意外に感じるかもしれません。食中毒といえば、肉、卵、魚介類、弁当、惣菜、サラダなど、水分が多く、細菌が増えやすい食品を思い浮かべるのが普通でしょう。一方、粉末サプリメントやカプセル製品は乾燥しており、水分活性も低い。微生物が増えにくい食品です。
しかし、2025年秋から2026年にかけて、米国ではモリンガ葉粉末またはモリンガ粉末を含むサプリメントに関連した サルモネラアウトブレークが複数報告されています。これらは同一事件の単なる続報ではなく、FDAおよびCDCは、関与した製品、ブランド、サルモネラ の血清型などに基づいて、別個のアウトブレークとして整理しています。これらは「粉末だから安全」「カプセルだから食中毒とは無縁」とは言えないことを示す事例です。天然由来の植物粉末を原料とする健康食品では、微生物が製品中で増えにくくても、原料段階でサルモネラが混入していれば、摂取時の感染リスクは現実に残ります。
米国の乾燥乳粉末関連サルモネラリコールから考える原料管理の基本
連休中に入ってきた米国のニュースで、乾燥乳粉末に関連するサルモネラ汚染リスクにより、複数の食品リコールや公衆衛生アラートが相次いでいます。
公式情報で確認できる関連製品には、スナックミックス、ポテトチップ、ポークラインドおよびシーズニング、粉末飲料ミックス、肉・鶏肉製品などがあります。最終製品だけを見ると一見ばらばらに見えますが、その背景には、乾燥乳粉末を含む原料がシーズニングや加工食品に使われ、複数の下流製品へ広がったという共通点があります。
このような「原料の汚染リスクが下流製品へ波及する」事例は、決して前代未聞の珍事件ではありません。むしろ、食品安全の教科書に出てくるような典型的なリスクです。
しかし、典型的だからこそ、現場では定期的に思い出す必要があります。
今回は、米国で起きている乾燥乳粉末関連のサルモネラリコールを例に、低水分食品におけるサルモネラリスクと、原料起点のリコールが下流製品へ連鎖する仕組みについて整理します。
【緊急続報】EUリステリア新規則施行まで100日:最新技術文書が確定させる「証明」の義務
2026年7月1日のリステリア新規則施行(規則(EU) 2024/2895)まで、残りわずかとなりました。昨年1月の本ブログ記事では、欧州委員会(EC)による基準厳格化の輪郭と、日本企業が直面する「立証責任の転換」について警鐘を鳴らしました。
この施行を目前に控え、実務上の大きな動きがありました。2026年2月26日、欧州リステリア参照研究所(EURL Lm)より、保存性試験の技術的な国際規格(ISO)に完全準拠した技術ガイドラインとなる「チャレンジテストおよび保存性試験に関する技術ガイドライン(第4版・修正1)」が公開されました。本稿では、この技術文書が確定させた「科学的証明」の具体的要件と、輸出実務が直面する過酷な条件について整理します。
ラベルの文字だけでは、もはや製品を守れない時代-2025年12月EUリステリア新ガイダンスの意義―
2026年2月、米国で冷凍アトランティックサーモンのリコール事案が発生しました。一見すると、世界各地で報告されてきたスモークサーモンにおける典型的な Listeria monocytogenes (Lm) 汚染事例に見えます。しかし、本件の特筆すべき点は、当該製品が「非RTE(要加熱調理用)」として流通していた点にあります。この事案の背後には、米国FDAが発行している”ラベルに加熱指示が書かれていても、実際に消費者が加熱せずに食べる可能性がある場合はRTE食品と見なされる”とのガイダンスが背景にあります。
そして極めて重要なことに、欧州委員会(EC)も2025年12月の最新ガイダンスにおいて、これと同様の基準を明文化しました。本記事では、米欧の規制が「同期」した現状と、日本の食品企業が直面する新たな品質保証の要件について考察します。
【緊急解説】EFSAが「嘔吐毒(セレウリド)」の厳格な管理基準を決定!―乳児用ミルク事件のリスク評価詳細を読む
先週お伝えした、EU各国で発生している乳児用ミルクのセレウス菌毒素(セレウリド)汚染によるリコール事件。 今週、欧州委員会からの要請を受けたEFSA(欧州食品安全機関)が、「迅速リスク評価報告書(Rapid Risk Assessment)」を公開しました。
原文(2026年1月30日発行)を詳細に読み解くと、今回の決定は、「毒素量ベースでの管理」へとパラダイムシフトする重要な転換点になる内容でした。 特に、汚染源の可能性や分析時の技術的注意点にも触れられており、日本の品質管理担当者にとっても見逃せない情報です。速報として解説します。
【最新ニュース】乳幼児用粉ミルクのセレウリド汚染:グローバル供給網に潜む「死角」を考察する
先週(2026年1月下旬)、世界の食品安全関係者の間で重大な関心を集めるニュースが飛び込んできました。フランスの乳業大手ダノン(Danone)社をはじめ、ネスレ、ラクタリスといった世界的企業が、乳幼児用粉ミルクの広範囲な自主回収を開始しました。原因は、セレウス菌が産生する耐熱性毒素「セレウリド(Cereulide)」による汚染の疑いです。フランスではすでに乳児の死亡事例も報告されており、当局による厳重な捜査が進められています。なぜ、高度な品質管理を誇るはずの乳業大手が、これほど大規模な汚染を許してしまったのか。その背景には、グローバルな原材料供給網の「盲点」がありました。
年末の米国を揺るがした「生牡蠣のサルモネラ中毒」。22州に広がる異例のアウトブレイクを読み解く
2025年末、米国で非常に珍しい食中毒事例がCDCから報告されました。生牡蠣を原因とするサルモネラ食中毒です。牡蠣による食中毒といえば、通常はノロウイルスや腸炎ビブリオが原因の大半を占めますが、今回は稀な血清型であるSalmonella Telelkebir(サルモネラ・テレルケビル)による広域アウトブレイクとして、CDCが調査を進めています。
通常、生牡蠣の微生物リスクと言えばノロウイルスや腸炎ビブリオ/Vibrio が中心であり、サルモネラが主役として登場することはほとんどありません。 本稿では、この年末アウトブレイクを概観するとともに、生牡蠣に対する微生物規格基準が米国・EU・日本でどのように設計されてきたのか、その歴史的背景を含めて整理してみます。
米国の鶏肉サルモネラ規制、白紙撤回──三年間の流れはなぜ逆転したのか
2022年から始まった米国の鶏肉製品に対するサルモネラ規制強化の流れは、パン粉付き製品への基準適用を経て、生鶏肉全体へと拡大される予定でした。筆者もこれまでブログ記事で順次紹介してきましたが、2025年4月、米国農務省食品安全検査局(FSIS)は生鶏肉全体への新規制案を正式に撤回しました。業界からの反発が理由と説明されていますが、その背後には政権交代による食品安全政策の大きな転換が色濃く見え隠れしています。本稿では、この逆転劇の経緯と背景を整理し、日本企業の品質管理担当者にとっての示唆を考えたいと思います。









