腸内細菌、ヒト常在菌
食生活はヒトの腸内細菌叢を迅速かつ再現性よく変化させる新着!!

 私たちの腸内フローラは、私たちが摂取する食品に大きく左右されることはよく知られています。特に長期間にわたる食生活の腸内フローラへの影響はよく知られています。しかし、毎日の食事レベル、つまり短期間ではどうでしょうか?具体的にどれほどの速度で、どのような幅で変化するのか、これまで詳細には解明されていませんでした。2014年の研究は、この領域に新たな光を当てました。この記事では、この研究が明らかにした驚くべき事実を探り、私たちの腸内細菌叢が日々の食事にどれほど迅速かつ再現性の高い変化を示すかを明らかにします。

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基礎講座ー食品安全性における微生物の国際基準・規格
日本の規格基準における黄色ブドウ球菌が映し出す「ヒト」という変数、そしてEUにはなぜ基準がないのか

日本の加熱食肉製品(包装前加熱殺菌)には、黄色ブドウ球菌≤10³/gという成分規格がある。スーパーに並ぶハムやソーセージの多くが、この基準をクリアして出荷されている。一方、EUの微生物基準(Regulation (EC) No 2073/2005)を開いてみると、加熱食肉製品に対する黄色ブドウ球菌の基準は存在しない。食品安全基準にも、工程衛生基準にも、である。

 なぜ日本には基準があり、EUにはないのか。なぜ、食中毒菌である黄色ブドウ球菌が日本の規格では「10³/g以下」という“許容値”が設定されているか。そしてなぜ日本の規格基準は、5つの食肉製品区分のうち3つにだけ黄色ブドウ球菌を入れ、2つには入れていないのか。この「10³/g以下」という数字と「入っていない1つのカテゴリー」に注目すると、日本の規格基準の設計思想が浮かび上がる。そしてその先に、日本とEUの管理哲学の根本的な違いが見えてくる。黄色ブドウ球菌という菌が映し出しているのは、食品安全管理における最も厄介な変数 ——「ヒト」の問題だ。前記事に引き続き、本稿では、日本とEUの基準のズレを糸口に、これからのHACCPと微生物制御の本質的なあり方を考察する。

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サルモネラ
加熱食肉製品のサルモネラ管理:日本とEUに横たわる思想差

日本の食肉加工現場において、「加熱食肉製品(包装前加熱)」からサルモネラ属菌が検出されることは、絶対にあってはならない「規格基準違反」である。我々はこれを当然の前提として受け入れている。

 ところが、欧州(EU)の微生物基準に目を向けると、面白い違いが見えてくる。実は、EUの食品安全基準において、豚や牛を原料とする加熱済み食肉製品には、サルモネラ不検出基準は置かれていない。この一見すると「緩い」ともとれるEUの姿勢は、決して衛生管理の手抜きではない。むしろ、科学的合理性とプロセスへの絶対的な信頼に裏打ちされた、タフな工程・環境の管理思想の現れである。本稿では、日本とEUの基準のズレを糸口に、これからのHACCPと微生物制御の本質的なあり方を考察する。

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基礎講座ー微生物の増殖条件とその制御
有機酸の“効き”はなぜ違うのか

有機酸が微生物を抑える基本メカニズムは、酸性環境下で非解離型(HA)となった有機酸は相対的に脂溶性(疎水性)が高まり、細胞膜を通過して細胞内へ入る。中性に近い細胞内で解離し、水素イオン(H⁺)を放出して内部pHを下げる。その結果、微生物はATPを消費して排出を試みるが負担が大きくなり、増殖が抑えられ、場合によっては死滅する。酢酸ナトリウムの日持ち向上剤であっても、プロピオン酸やソルビン酸のような保存料であっても、基本の作用は同じである。

 では、ここで一つ疑問が生まれる。同じメカニズムなのに、なぜ有機酸ごとに効き方が違うのか。 本記事では、この疑問に答えるための要素を解説する。読み終えると、有機酸を使用する際の目安を見積もるための“考え方”が身につくはずである。

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■ 世界最新ニュース
【緊急続報】EUリステリア新規則施行まで100日:最新技術文書が確定させる「証明」の義務

2026年7月1日のリステリア新規則施行(規則(EU) 2024/2895)まで、残りわずかとなりました。昨年1月の本ブログ記事では、欧州委員会(EC)による基準厳格化の輪郭と、日本企業が直面する「立証責任の転換」について警鐘を鳴らしました。

 この施行を目前に控え、実務上の大きな動きがありました。2026年2月26日、欧州リステリア参照研究所(EURL Lm)より、保存性試験の技術的な国際規格(ISO)に完全準拠した技術ガイドラインとなる「チャレンジテストおよび保存性試験に関する技術ガイドライン(第4版・修正1)」が公開されました。本稿では、この技術文書が確定させた「科学的証明」の具体的要件と、輸出実務が直面する過酷な条件について整理します。

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基礎講座ー指標細菌
LST vs BGLB:液体培地に見る米国(FDA/ISO)と日本の制度設計の違い

前回の記事では、寒天培地における「デソキシコレート寒天(日本)」と「VRBA(米国)」の違いを通じて、制度ごとに培地設計の意図が異なることを示した。今回はその続編として、液体培地におけるLST培地とBGLB培地の使われ方に注目し、米国(FDAやISO規格)と日本の制度設計の“構造そのものの違い”を見ていきたい。

 大腸菌群という検査対象は同じであっても、「どの培地をどの順番でどう使うか」という設計は、制度の背景思想を色濃く反映している。LST → BGLBという二段階構成の米国・ISO方式と、BGLB単独で始める日本方式──この2つの方式を比べることで、なぜ検査の進め方が違うのか、その背景と実務への影響が理解できるはずである。

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基礎講座ー指標細菌
「デソキシコレート寒天」vs「VRBA」──成分の違いと検査現場への影響を整理する

日本の食品衛生検査では、「大腸菌群(Coliforms)」検査が多くの食品で行われている。大腸菌群検査はEUでは2005年に廃止されているが、米国では乳製品分野に限定して今でも採用されている。しかし、米国と日本では、同じ大腸菌群検査でも使用している培地と検査手順に決定的な違いがある。本記事では、デソキシコレート寒天(DC寒天)とバイオレットレッド胆汁寒天(VRBA)の違いを成分レベルで掘り下げ、それぞれの培地が現場にもたらす影響までを具体的に整理する。

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基礎講座ー食品安全性における微生物の国際基準・規格
指標菌とインデックスは何が違うのか― 2007年EU粉ミルク改正が示した「役割の再配置」

日本の食品業界では、「指標菌」という言葉が日常的に使われている。しかしこの言葉の背後には、二つの異なる意味が含まれている。ひとつは、工場の衛生状態や工程管理の水準を見るための菌。もうひとつは、病原菌の存在可能性を間接的に推測するための菌である。後者は、いわば病原菌の“代理人”であり、専門的にはインデックス微生物と呼ばれる。

 この二つは本来、目的が異なる。ところが歴史的経緯の中で、両者はしばしば混同して使用されてきた。2007年、EUは粉ミルク規制を改正した。この出来事は、まさにその混同を整理する契機となった。本稿では、2007年改正を手がかりに、

何がインデックスになり得るのか

何が単なる工程指標にとどまるのか

を構造的に整理してみたい。

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お知らせ
天皇誕生日(祝日)のためブログ更新はお休みさせていただきます

2月12日は、建国記念日(祝日)のためブログ更新はお休みさせていただきます。

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■ 世界最新ニュース
ラベルの文字だけでは、もはや製品を守れない時代-2025年12月EUリステリア新ガイダンスの意義―

2026年2月、米国で冷凍アトランティックサーモンのリコール事案が発生しました。一見すると、世界各地で報告されてきたスモークサーモンにおける典型的な Listeria monocytogenes (Lm) 汚染事例に見えます。しかし、本件の特筆すべき点は、当該製品が「非RTE(要加熱調理用)」として流通していた点にあります。この事案の背後には、米国FDAが発行している”ラベルに加熱指示が書かれていても、実際に消費者が加熱せずに食べる可能性がある場合はRTE食品と見なされる”とのガイダンスが背景にあります。

 そして極めて重要なことに、欧州委員会(EC)も2025年12月の最新ガイダンスにおいて、これと同様の基準を明文化しました。本記事では、米欧の規制が「同期」した現状と、日本の食品企業が直面する新たな品質保証の要件について考察します。

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