■ 食品微生物の基礎講座

食品微生物学の入門者へむけての基礎講座です。基礎講座全体の目次については、ブログのタブの【全ブログ記事目次】で基礎講座全体の記事目次を確認ください。

基礎講座ー食品安全性における微生物の国際基準・規格
EUの食品微生物基準を理解する:食品安全基本法から微生物基準規則まで

食品の国際取引が活発になる中で、EUの食品安全基準は日本の食品業界にとって無視できない存在となっている。特に、EUの食品微生物基準は、HACCPの実践や輸出入時の品質管理に直結する重要な規則である。

EUの食品安全規則は、一見すると多くの規則が存在するように見えるが、実際には「食品安全の基本法」→「食品衛生パッケージ」→「微生物基準規則」という明確な構造を持っている。

本記事では、この体系をわかりやすく整理し、それぞれの規則の役割を解説する。EUの規則の全体構造を理解したい読者にとって、本記事を読むことで基本的な枠組みを把握できるはずだ。

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基礎講座ー食品安全性における微生物の国際基準・規格
EFSAと日本の食品安全委員会の設立背景:BSE危機からの教訓

1990年代にイギリスで発生したBSE危機は、世界中の食品安全政策に革命をもたらした。この記事は、その教訓から生まれたイギリスの食品基準庁(FSA)、ヨーロッパの食品安全機関(EFSA)、そして日本の食品安全委員会の設立背景に迫り、これらの機関がどのようにして食品のリスク評価と管理の新しい標準を設けたかを解説する。

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基礎講座ー微生物の増殖条件とその制御
ガス置換包装と微生物増殖の防止:食品の安全性と品質保持のために

食品の品質保持と微生物学的安全性の確保においては、pHの調整、水分活性の管理、保存料の使用、温度管理に加え、ガス置換包装(Modified Atmosphere Packaging, MAP)の適切な導入と制御が極めて重要である。

 特に、包装内部の気相組成の調整と温度管理の併用は、食品の風味や栄養成分を損なうことなく微生物の増殖を抑制できる手段として注目されており、保存期間の延長や廃棄削減といった実務上の利点も大きい。
 本記事では、食品保存技術としてのガス置換包装の基本と、微生物増殖抑制との関係性に焦点を当て、その仕組みと効果、さらには導入時の留意点について解説する。

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基礎講座ー食品の加熱殺菌
食品の殺菌におけるF値とF0値について超わかりやすく解説します!

 食品殺菌の理論について混乱する入門者の皆様、その心配はもう不要である。D値、Z値、そしてF値という専門用語がややこしく感じるかもしれないが、今回の記事ではF0値を超簡単に理解できるように説明する。殺菌理論が苦手という人ほど、この記事は役に立つだろう。さらに、具体的な応用例として、日本のレトルト殺菌法(120°Cで4分間)が国際基準のF0値にどのように換算され、ボツリヌス菌に対する安全性(F0=3)が保証されているかも一緒に探求する。この記事を通じて、殺菌理論の基本が理解でき、実践的な知識が得られるだろう。 

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基礎講座-HACCPと微生物検査
微生物の定性検査結果から菌数を推測 ②- 対数正規分布と標準偏差活用ガイド

食品の安全性評価に不可欠な微生物濃度の精密推定は、統計学の力を借りて正確性を担保できる。特に、ランダムに発生する微生物の分布を予測するポアソン分布と、豊富なデータからの統計量を活用する対数正規分布の理解は、食品中の微生物濃度を正確に求める上で欠かせない。前記事でポアソン分布に基づく予測法を解説した。今回はデータが豊富な場合に適用される対数正規分布に焦点を当て、その使い方を解説する。この知識を武器に、微生物検査結果の解釈にに一層の厳密さを身に着けよう。

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基礎講座-HACCPと微生物検査
微生物の定性検査結果から菌数を推測①-ポアソン分布公式でやてみよう

食品の品質管理には、初期の微生物数を正確に把握することが不可欠である。食中毒菌の濃度をどのように推測するかは、食品の安全性と消費期限の設定に直結する。この記事では、定量法が困難な場合でも、定性検査の結果を基に菌数濃度を見積もる統計的アプローチについて、数的処理が苦手な人でもわかるように解説する。読者の食品企業が直面する日々の課題に対する実践的な解決策を提供する。

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基礎講座ー指標細菌
大腸菌、大腸菌群、腸内細菌科菌群ー食品製造工程・製品での望ましい指標菌の在り方を整理すると

大腸菌、大腸菌群、腸内細菌科菌群は、食品及びその製造環境における重要な衛生指標菌とされる。それぞれには衛生指標菌としての特有の特性と意義がある。大腸菌と大腸菌群の違いはある程度理解されているかもしれないが、腸内細菌科菌群を含めたこれらの細菌が持つ特徴、それらの利点や欠点を深く理解している食品微生物学入門者は意外と少ない。この記事では、食品製造および製品検査におけるこれらの指標菌の役割とその違いに焦点を当て、明確に整理し、理解を深めることを目指す。

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基礎講座ー食品安全性における微生物の国際基準・規格
絡み合う規則の迷宮!米国食品の微生物基準を解き明かす

 世界には『コーデックス食品基準委員会』による国際標準が存在し、多くの国々がこれを基に自国の食品安全基準を設定している。特にEUでは、これをさらに発展させて統一されたEU基準を設定している。日本も、食品衛生法に基づく明確な基準を適用している。一方で、米国では独自のアプローチを採用しており、法的拘束力を持つ連邦法の規定は限られている。その代わりに、「民生品目記述票(CID)」などの政府調達における品質基準やFDAのガイダンス文書などを中心にしたシステムが採用されている。この記事では、米国独自の食品微生物規格の構造の説明と、それがどのように適用されているのかを、分かりやすく解説する。読み進めることで、食品微生物学入門者の読者にとって、米国の食品安全規格の世界とその理由を理解できるようになるだろう。

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■ 食品微生物の基礎講座
初心者向け: ISO法による大腸菌検査の酵素基質培地法 - シンプルに解説

EUでは食品中の大腸菌の検査に、酵素基質培地法が一般的に採用されている。日本の食品業界でもこの方法に注目が集まり、多くの企業が自主検査に導入している。では、培地の選び方や培養温度は?本記事では、国際的に認知されたISO標準法に基づく大腸菌の検査手法を詳しく解説する。

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基礎講座ー食品安全性における微生物の国際基準・規格
食品微生物学入門者のためのガイド:コーデックス、ISO、EU/米国規則の理解と位置づけ

新入社員や食品微生物学の初学者が直面する最初の課題の一つは、コーデックス、ISO、EU規則、FDAやBAMなど、食品安全に関わるさまざまな国際的な規則とその複雑な関係性の理解だ。これらのキーワードの意味と、それらが食品微生物安全においてどのように組み合わさり、相互にどのような役割を果たしているのかを把握するのは、多くの入門者にとってはとても難しい挑戦となる。しかし、心配は無用だ。この記事では、コーデックスやISOなどの国際規則と、EUや米国のような地域規則との間の独特な関係に光を当て、例え話を交えながら、入門者がこれらの位置づけを理解しやすくするための説明を行う。

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