■ 食品微生物の基礎講座

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■ 食品微生物の基礎講座
消費期限切れ食品の法的扱い:日本とEUの違いを解説

 食品のラベルに記載されている「賞味期限」と「消費期限」。これらの違いや、期限を超えた商品の法的な取り扱いはどうなるのか?特に、消費期限は微生物学的な安全性を基に設定されており、期限を超えるとその安全性は保証されないとされている。しかし、実際には消費期限を超えた食品の販売や加工材料としての使用は違法なのだろうか?この記事では、日本とEU諸国の法的な位置づけの違いを中心に、消費期限切れ食品の法的扱いについて詳しく解説する。

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■ 食品微生物の基礎講座
大腸菌の酵素基質培地:その本当の役割とは?

日本における食品安全規制では、糞便系大腸菌群(E.coli、ブロック体)の検査に関する規格基準が設定されている。以前、サイエンスフォーラムで実施した食品微生物学入門講座の受講生と個別質疑を行っている際に、この会社の日常的な自主検査において、糞便系大腸菌群の検査(E.coli、ブロック体)から、β-グルクロニダーゼ活性を用いた酵素基質培地に切り替えたいと上司に話したところ、この培地では、大腸菌O157がカバーできていないのでダメだと言われたという経験を私に話されたことがある。この記事では、本当にそうなのか?このような理解の仕方が見落としている盲点について解説し、また、改めて、指標菌培地としての酵素基質培地の役割を整理してみたい。

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基礎講座-HACCPと微生物検査
EUにおける食品工場の環境モニタリングのための統一プロトコル(リステリア菌)

食品製造工場の環境モニタリングには、ISO規格に具体的なプロトコルが提示されていない。しかし、実際の現場でモニタリングを行う際には、具体的なプロトコルの存在が便利である。そこで、EUの専門家たちは2012年に、特に重要なリステリア菌に対して統一プロトコルの策定に取り組んだ。本記事では、このプロトコルの内容を詳しく紹介する。なお、本記事はリステリア菌に焦点を当てているが、食品工場での微生物サンプリング方法の基本を提供しているため、食品微生物学の初心者にとっても、是非、目を通していただきたい内容となっている。

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基礎講座ー食品工場での洗浄、殺菌方法
食品工場の清浄度管理に役立つATP試験とは? わかりやすく解説!

 食品工場で洗浄殺菌後に清浄度を確認する方法としてATP試験は効果的な手法である。この記事では、ATP試験の基本概念について、わかりやすく解説する。

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基礎講座ー食品微生物学の基礎
人間と微生物、負け組同士の戦いに関する学問が食品微生物学 - 宇宙人は植物を尊敬し、人間も微生物も相手にしていない?

本記事では、食品微生物学や微生物学の入門者に対して、食中毒菌や腐敗細菌と人間との関係について解説する。人間も微生物も、恒星エネルギーの利用の観点でみれば、植物に対しての負け組である。植物と異なり、太陽エネルギーを化学エネルギーに変換できないからだ。宇宙人から見れば、植物こそがが尊敬すべき生命体であり、人間と微生物については、どちらも似たり寄ったりの下等生物と見なしているかもしれない。すなわち、食品微生物学とはエネルギーの観点から見た地球生物学における負け組同士の戦いに関する学問と捉えることもできる。

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基礎講座-HACCPと微生物検査
食品工場衛生管理における微生物検査ー環境モニタリングの重要性

食品製造工場では、HACCPに加えて、食品製造工場の環境微生物モニタリング(Environmental monitoring program; EMPプログラム)が不可欠となる。HACCPの運用だけでは微生物による食中毒事故を防げないことが、これまでの多くの食中毒事例やリコール事例から示されているからだ。この記事では、食品製造工場環境の微生物モニタリングの基礎について解説する。

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基礎講座-HACCPと微生物検査
国際食品微生物規格委員会(ICMSF)やEUにおける食品微生物検査サンプリングプランをわかりやすく説明します

食品の微生物検査において、「陰性」判定の持つ意味は、サンプリング方法(サンプリングプラン)によって異なる。本記事では、国際食品微生物規格委員会(ICMSF)のサンプリングプランをわかりやすく説明する。このサンプリングプランはEUの食品安全基準や工程衛生基準で採用されている。サンプリングプランにおいては、その内容自体を理解することよりも(これは簡単に理解できる)、「なぜそのようなサンプリングプランになるのか?」を理解することのほうが重要である。この記事では、初心者のために、「なぜ?」を重点を置いて解説をする。

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基礎講座-HACCPと微生物検査
日本とEUの食品の微生物規格基準の違い、HACCP制度化にともなう弁当及びそうざいの衛生規範等の廃止理由をわかりやすく説明します

 この記事では、現行の日本とEUの食品の微生物規格基準の違いについて、わかりやすく説明する。また、2021年6月、HACCP制度化にともない、弁当及びそうざいの衛生規範、漬物の衛生規範、洋生菓子の衛生規範等の一連の衛生規範が廃止された。これまで、EUの工程衛生基準に近い役割を果たしていた各種衛生規範がなぜ廃止されたのか、その背景について解説する。さらは、今後、EU、日本を問わず、食品事業者が対応すべき自主的な工程管理や自主検査の方向性についても解説する。

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基礎講座-HACCPと微生物検査
食品の微生物検査の目的と精度計算法をわかりやすく説明します

 食品の微生物検査の目的を正しく理解し、その精度について理解しておく必要がある。微生物検査ではどれぐらいの確率で正しく汚染食品を検出できているのだろうか。例えば汚染率10%の食品サンプルをn=3で微生物検査をした場合に、偽陰性の結果を出してしまう確率は?あるいは、汚染率10%の食品サンプルを95%の精度で分析するためには何サンプル分析すればいいのか。本記事では、これらの算出を自分でExcel計算できるようになるために、分かりやすく、順を追って解説する。

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基礎講座-HACCPと微生物検査
HACCP導入により微生物検査は必要なくなるの?どの微生物検査が残るの?

HACCP義務化の背景には、工程管理により微生物検査を減らしていくという考え方がある。分布及び存在量の少ない危害微生物のリスク判定に、最終製品の数少ないサンプルを抜き打ち検査しても、安全性を担保出来ないからである。では、HACCP導入により微生物検査は必要なくなるだろうか?微生物規格基準を証明する検査以外に、どのような微生物検査が残るのか?本記事ではHACCPに基づく衛生管理における微生物検査の在り方の基本事項について整理する。

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