■ 食品微生物の基礎講座

基礎講座ー食品微生物学の基礎
グラム陽性菌と陰性菌の特徴ー化学物質に対する耐性の違い

グラム陽性菌と陰性菌の細胞表層構造の違いは、細菌の化学物質に対する耐性の違いにも直結する。大まかに述べると、グラム陽性菌は化学物質に弱く、陰性菌は強い。陰性菌では外膜のリポ多糖がさまざまな化学物質の侵入を防ぐバリアーとして働く。一方、陽性菌の持つ細胞壁は分厚く、物理的には強固であるが、実は、構造上、スカスカであり、化学的バリアーとしては、ほとんど役に立たないといってよい。

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グラム陽性菌と陰性菌ー構造の違い

本記事では、グラム陽性菌と陰性菌の細胞構造の特徴と違いについて簡単に述べておきたい。構造の基本的理解が、これら2種類の細菌の生息環境、性質、食品衛生上の管理の観点に密接に関連してくるので、要点だけ簡単の述べておく。厚いペプチドグリカン層の細胞壁を持つグラム陽性菌は、グラム染色液で強く染まる。一方、薄いペプチドグリカン層しか持たず、その代わり、細胞壁の外側が粘膜多糖で覆われているグラム陰性菌はあまり強く染まらない。

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グラム陽性菌とグラム陰性菌の違いードライとウェットでの生き残りやすさ

 グラム陽性菌とグラム陰性菌の特徴や違いのうち、まず最も大きな点について述べる。大腸菌などのグラム陰性菌は乾燥した固体表面が苦手である。基本的に水っぽいところに生息する水生細菌の仲間に近いといってよい。私は時々、大学のトイレのノブに大腸菌の汚染があるかどうかを調査するが、ほとんど大腸菌が検出されることはなく、ドアノブに生存しているのは黄色ブドウ球菌やバチルスなどのグラム陽性菌ばかりである。大腸菌などのグラム陰性菌は、バチルスや黄色ブドウ球菌などのグラム陽性菌と違って、食品工場のラインのゴムやステンレスなどのドライ表面は基本的に苦手な菌と考えてよい。

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グラム陽性菌と陰性菌の違いー概略の理解

グラム陽性菌とは何か。グラム陰性菌とは何か。グラム染色の目的・意義、グラム染色でわかること、グラム陽性菌とグラム陰性菌の違い、種類、細胞壁の構造の違いについて、これから数記事で説明していく。これらの基本を理解しておくと、食品微生物学において、毒素型食中毒菌、感染型食中毒菌の違い、食品製造工場での生残や2次汚染のしやすさ、化学的薬剤への感受性などがドミノ倒しのように理解できるようになる。

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食品微生物学の基礎 (このシリーズの目的)

このシリーズ記事は食品微生物学の初心者が食品微生物学の基礎を習得するためのものです。大きな事をまず理解するという観点で、やや大胆に例え話を含めながら行います。私は大学の食品微生物学研究室に30年以上在籍し、 また日本食品微生物学会や国際食品微生物衛生委員会(ICFMH)の公式ジャーナルの編集委員長や編集委員として幅広い知識に触れてきました。これらの経験のエッセンスをこのシリーズで伝授します。

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