エタノール殺菌とその殺菌メカニズム

なぜ70%が最も殺菌力が高いのか?

 エタノール殺菌では、70%の濃度が最も効果的である。 なぜエタノールの殺菌作用にこの濃度が最も殺菌効果があるかについては、必ずしも明確な研究があるわけではなく、その原理やメカニズムについては不明な点も現時点では多い。本記事では現時点で推測されているメカニズムや、また、エタノール殺菌の有効性の範囲について、特にノロウィルスの消毒方法や除菌に用いる場合の不活化効果の限界、およびその理由を解説する。

解説する。

 もっともこれまでに多く報告されている実験データからはおおよそ次のように考えることができる。 70%アルコールなどで微生物細胞を処理した場合の顕微鏡観察の結果、細胞膜が壊れ内容物が露出していることが観察される。従ってアルコールの効果としては、細胞膜を破壊することにあると考えられている。 水溶液中のエタノール分子は、水分子とポリマー構造を形成する。特に水分子とエタノール分子が1:1、すなわち重量比で70%溶液の場合に、 エタノール分子と水分子の最も安定したクラスターを形成すると考えられている。このクラスターはエタノール分子が水分子を挟むような状態でできる。すなわち巨大な疎水性表面を外側に持ったクラスターになる。このクラスターが、疎水性である細胞膜を破壊すると考えられている。

エタノールではノロウィルスを殺菌できない理由

 エタノールではノロウイルスの殺菌に効果がない。その理由を説明するために、ここでウイルスの二つの種類について述べる。新型コロナウイルスやインフルエンザウィルスは、宿主に感染をしてリン脂質を反転させて、出ていくときに宿主の膜をまとったまま出ていく。こういうタイプはエンベロープ型ウィルスと呼ぶ。インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスなどがこのタイプである。宿主との親和性という戦略においては、このようなウィルスは感染メカニズムという点では巧妙なやり方だいえる。しかし、環境へのストレスという観点では、前ページで説明したように、細胞膜というのは基本的に弱い構造をもつことになる。したがって、これが弱点となり、アルコールとかいろいろなストレスに対してはエンベロープ型は弱いということになる。

 一方、ノロウイルスは宿主の感染後に宿主細胞から出ていくときにエンベロープ(宿主細胞の細胞膜)をまとわない。まとわないということは、RNAの外側にタンパクだけがあるという状態である。これは基本的には環境に置かれると、リン脂質二重膜という弱点を抱えていないので、アルコールを含む各種ストレスに強い。


 以上がアルコール殺菌で新型コロナウィルスやインフルエンザウィルス殺菌はできるが、コロナウィルスの殺菌はできない理由である。