■ 食品微生物の基礎講座

基礎講座ー食品安全性における微生物の国際基準・規格
日本とEUの食品の微生物規格基準の違い、HACCP制度化にともなう弁当及びそうざいの衛生規範等の廃止理由をわかりやすく説明します

 この記事では、現行の日本とEUの食品の微生物規格基準の違いについて、わかりやすく説明する。また、2021年6月、HACCP制度化にともない、弁当及びそうざいの衛生規範、漬物の衛生規範、洋生菓子の衛生規範等の一連の衛生規範が廃止された。これまで、EUの工程衛生基準に近い役割を果たしていた各種衛生規範がなぜ廃止されたのか、その背景について解説する。さらは、今後、EU、日本を問わず、食品事業者が対応すべき自主的な工程管理や自主検査の方向性についても解説する。

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基礎講座-HACCPと微生物検査
食品の微生物検査の目的と精度計算法をわかりやすく説明します

 食品の微生物検査の目的を正しく理解し、その精度について理解しておく必要がある。微生物検査ではどれぐらいの確率で正しく汚染食品を検出できているのだろうか。例えば汚染率10%の食品サンプルをn=3で微生物検査をした場合に、偽陰性の結果を出してしまう確率は?あるいは、汚染率10%の食品サンプルを95%の精度で分析するためには何サンプル分析すればいいのか。本記事では、これらの算出を自分でExcel計算できるようになるために、分かりやすく、順を追って解説する。

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基礎講座-HACCPと微生物検査
HACCP導入により微生物検査は必要なくなるの?どの微生物検査が残るの?

HACCP義務化の背景には、工程管理により微生物検査を減らしていくという考え方がある。分布及び存在量の少ない危害微生物のリスク判定に、最終製品の数少ないサンプルを抜き打ち検査しても、安全性を担保出来ないからである。では、HACCP導入により微生物検査は必要なくなるだろうか?微生物規格基準を証明する検査以外に、どのような微生物検査が残るのか?本記事ではHACCPに基づく衛生管理における微生物検査の在り方の基本事項について整理する。

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基礎講座ー食品の加熱殺菌
食品の水分活性と加熱殺菌時の微生物の耐熱性の関係

低水分活性食品中では加熱殺菌時における微生物の熱耐性が上昇する。したがって、これらの食品の加熱には注意が必要である。水分活性を下げると、どのぐらい微生物のの耐熱性は上昇するのだろうか?本記事は、食品の水分活性が微生物の耐熱性及ぼす影響についてまとめる。

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基礎講座ー食品の非加熱殺菌
食品の高圧処理殺菌

 食品の高圧処理(HPP)は、高静水圧処理(HHP)または超高圧処理(UHP)とも呼ばれ、食中毒細菌や腐敗細菌を不活性化する食品保存の非加熱技術である。高圧加工食品では、味、食感、外観、栄養価へのマイナスの影響は、加熱食品に比べると少ない。したがって、食品の高圧処理は、加熱殺菌に代わる加工技術として注目されている。本記事では、微生物の殺菌の観点から、高圧処理の基本事項について整理する。

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基礎講座ー食品の非加熱殺菌
オゾン殺菌

 本記事ではオゾンガスとオゾン水についての基本事項をまとめる。オゾンは、強い酸化剤であり、高い殺菌力がある。また、無毒な酸素に自然分解するので、食品の殺菌剤として用いる際に残留物が残らないという利点がある。オゾンガスとして用いる場合と、オゾン水として用いる場合がある。オゾンガスとして使用する場合は、高濃度オゾンガスが必要となるほか、ガスの拡散による有毒性や広範な機器に及ぶ腐食性などの課題が多く、産業界での応用は現時点で限定されている。一方、オゾン水として使用する場合、わずかな濃度(1~5ppm)で抗菌活性を発揮することができる。オゾン水については食品業界のみならず、家庭や医療業界など後半な応用が今後も期待できる。

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基礎講座ー食品微生物学の基礎
なぜ、腸管出血性大腸菌がいる生レバーは禁止で、サルモネラ菌がいる生卵は禁止されていないの?

 牛の生レバ-の中には腸管出血性大腸菌が検出される場合がある。したがって、生レバーの生食は禁止されている。一方、生卵にはおよそ5000~2万個に一個の割合で1~20cfuのサルモネラ菌が汚染している。しかし、生卵を食べることは禁止されていはない。なぜか?この記事では、その理由について考察してみたい。2つの食中毒菌の食中毒を起こすための発症菌量の違いと、また、これらの発症菌量の違いをもたらす大きな要因としての両者の胃酸に対する抵抗性の違いを説明する。

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基礎講座ー食品微生物学の基礎
食中毒菌は、トイレや会話中にうつるか?

 この記事では、サルモネラ菌や大腸菌O157はトイレでうつらないの?食卓での会話中にうつらないの?なぜ食中毒菌は食べ物を食べることにより、感染するの?食中毒菌の感染には食べ物の成分が必要なの?などなどの疑問について説明する。また、そもそも食品微生物学の定義に係る問題についてあらためて整理したい。

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基礎講座ー食品微生物学の基礎
病原微生物は人間に戦いを挑んでいるのか?

 大学で食品微生物を教えていると、毒素型食中毒細菌はなぜ人間にとっての毒を出すのか?大腸菌O157が牛の腸内にいても牛は健康なのに、人間だけなぜ感染を起こすのか?などの質問を受けることがある。食品微生物学という人間中心の学問を学んでいると、病原微生物が人間に戦いを挑んでいるかのような視点になりがちである。しかし地球生物学の観点からは、人間を中心として微生物を見る見方は間違いである。この記事では微生物と人間との関係について、地球上の微生物の歴史の観点から整理してみたい。

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基礎講座ーその他の食中毒菌
クロノバクター・サカザキ(Cronobacter sakazakii)

 本記事では、 乳児用調製粉乳への汚染から乳児への感染が心配されるクロノバクターサカザキ(Cronobacter sakazakii)とはどのような細菌なのかについて整理する。また、乳児用調製粉乳の調乳の注意事項や、粉ミルクと液体ミルクの違いについても、微生物学的安全性の観点から解説する。

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