基礎講座ー指標細菌
え、まだ出てる?──大腸菌群の“出演過多”と日本制度のリアル新着!!

EUではすでに“降板”、米国でも連邦法では乳製品などごく限られた分野に留まっている──。
そんな大腸菌群(Coliforms)が、なぜか日本ではいまも食品衛生の“現役スター”として、あらゆる場面で登場し続けている。本記事では、そうした日本独特の“配役状況”を紹介し、なぜこのような構造が維持されているのかを、制度と歴史の観点から簡潔に整理する。

※本記事では、「俳優」「出演」「舞台」などの比喩を用いながら、制度・運用の違いを視覚的に整理しています。制度的根拠や科学的背景は、各所で明記しています。

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お知らせ
夏季リフレッシュ休暇を取らせていただきます(8月5日~8月19日)

勝手ながら、8月4日(月)は夏季リフレッシュ休暇、8月11日(月)はお盆休み、8月18日(月)も夏季リフレッシュ休暇を取らせていただき、ブログ更新をお休みさせていだきます。

8月25日(月)から記事更新再開します。

東京海洋大学名誉教授 木村 凡

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基礎講座ー食品安全性における微生物の国際基準・規格
EUとは異なる?米国における微生物指標菌の扱い──大腸菌群と大腸菌の立ち位置

前回の記事では、EUにおいて大腸菌(E. coli)が“主役の座”を降板し、腸内細菌科菌群が工程衛生において重要な役割を担っている様子を描いた。

では、米国ではどうだろうか?

 実はそこには、日本でもおなじみの大腸菌群(Coliforms)が登場する。EUでは“完全引退”となったこの古株が、乳製品分野で今なお国家制度に裏付けられた現役俳優として活躍している。一方で、EUで主役だった腸内細菌科菌群(Enterobacteriaceae)は、米国では限定的な分野にのみ登場しており、制度的には「準レギュラー」の立場にある。

 そして大腸菌(E. coli)は、病原性株を除けば“現場対応型の名バイプレイヤー”として多くの工程で信頼されている。

本記事では、EUとはまた異なる“米国版・食品衛生ドラマ”のキャスティング構造を解き明かす。

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お知らせ
海の日(休日)のためブログ更新はお休みとなります

7月21日(月)は海の日(休日)のためブログ更新はお休みさせていただきます。

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■ 検査法関連
大腸菌はなぜ脇役に、大腸菌群はなぜ完全引退に?──EU衛生基準が導いたリスク指標の再構築

かつて食品微生物検査の主役の一つであった「大腸菌」や「大腸菌群」。だが今、EUの食品衛生管理の舞台では、以前ほどの頻繁な登場は見られない。食品安全基準という「本舞台」においては、大腸菌の役割は大きく縮小し、主な出演の場は特定の「特番枠」である二枚貝に限られている。一方、大腸菌群は制度全体から完全に姿を消した。また、工程衛生基準という「新しい番組」でも、大腸菌の出演機会は限定的である。本稿では、2005年にEUで施行された Regulation (EC) No 2073/2005 を出発点とするこの“配役交代”の背景にある制度と科学の視点を解説していく。

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サルモネラ
卵は洗うべきか、冷やすべきか──日米欧に見る制度と微生物リスク管理法の違い

なぜ米国や日本の卵は冷蔵されているのに、EUでは常温で売られているのか?リスク管理や科学的根拠に基づいて国や地域ごとの制度の違いを比較してみると、卵の流通管理方法の国際的な違いは、洗浄の有無を含めて非常に示唆的で興味深い。本記事では、食品微生物の立場から、日米欧における卵の取り扱いの違いを、リスク管理と科学的理解の観点から整理し、各国の制度の背景と科学的根拠を比較する。

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基礎講座ー食品安全性における微生物の国際基準・規格
日本の食品微生物規格は遅れがち? では、食中毒発生率は?

これまでの記事では、日本の食品微生物規格がHACCP導入後も昭和期の製品検査型の枠組みを引きずっていること、そしてEUではHACCPに連動したリスクベースの規格が確立されていることを紹介してきた。
制度の整備状況だけを見れば、日本は国際的に大きく遅れているように映る。

 しかし、2023年の最新データをもとに実際の食中毒発生率を比較してみると、むしろ日本の方がEUよりも低いという興味深い結果が見えてきた。

 本記事では、その背景にある構造的・制度的な違いを再確認しつつ、「制度の遅れ」と「統計上のリスク低さ」がなぜ同居しているのかを考察していく。
 サルモネラ症、腸管出血性大腸菌感染症(STEC)、リステリア症を中心に、100万人あたりの発生率を比較し、補足としてカンピロバクター症のデータも取り上げる。

制度の優劣は、そのままリスクの大小に結びつくのか?――その答えを、データから読み解く。

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基礎講座ー食品安全性における微生物の国際基準・規格
HACCPを導入しても日本の微生物規格はこのままでいいのか?—昭和の基準を残したまま制度が機能するのかを問う

以前の記事(シリーズ第2弾、3弾)で紹介したように、EUでは2005年にHACCPを制度の中核に据えた際、各国にバラバラに存在していた微生物規格基準を整理し、病原菌に特化したシンプルな食品安全基準へと再構成した。

 一方、日本では2021年にHACCP制度が義務化されたものの、それに合わせた微生物規格基準の見直しは行われず、依然として昭和期に設計された基準がそのまま残されている。

 本記事では、HACCP制度だけが導入され、基準が取り残されたという構造的な問題点について、改めて整理しておきたい。その背景や理由を追及するのではなく、現在の制度がどうなっているのか、どこに論理的なズレがあるのかを明確にしておくことが目的である。

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基礎講座ー食品安全性における微生物の国際基準・規格
日本に工程衛生基準は必要か?HACCP運用とのバランスを考える― EU食品微生物基準シリーズ第4弾

 日本では2021年6月にHACCPが完全義務化されたが、工程衛生基準のような補助的な仕組みは導入されていない。一方、EUではHACCPの補助的な手段として「工程衛生基準」を活用し、全体の衛生管理を補完している。では、日本も工程衛生基準を導入すべきなのか?それとも、HACCPのみで管理を続けるべきなのか?本記事では、日本のHACCP運用の現状と課題を整理し、工程衛生基準の導入が日本の食品業界にとって有益かどうかを考察する。

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お知らせ
今週のブログ更新について

この状況をご理解いただき、ご了承いただけますと幸いです。皆様の温かいサポートに感謝し、引き続き当ブログをよろしくお願いいたします。

敬具

東京海洋大学名誉教授 木村 凡

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