冷蔵検体を翌日検査するために凍結してよいのか新着!!
「冷凍食品を前日から冷蔵庫で一晩解凍し、翌日検査する運用をどう評価するか」という質問を前回取り上げた。FDA、USDA、ISOはいずれも、必要に応じて冷凍検体を冷蔵温度帯で解凍する方法を認めている。今回は、そのちょうど逆の問題である。
食品の微生物検査に関わる方から、次のような趣旨の質問があった。
「現場で採取した冷蔵検体を冷凍蓄冷剤で保冷して持ち帰り、その日のうちに検査できない場合、いったん冷凍して翌日検査する運用はどう考えるべきだろうか。ゆっくり凍結することで菌が損傷することも気になる。」
複数の現場から検体を集めていると、検査室へ戻るのが夕方になることもある。その日のうちに微生物検査を開始するのは難しい。そこで、いったん冷凍して翌日に検査する。現場では十分にありそうな運用である。質問された方が気にしていたのは、「ゆっくり凍結すると菌が損傷しやすいのではないか」という点であった。
確かにその心配には理由がある。しかし、FDA、USDA、ISOの文書を見ると、実は論点はその一歩手前にある。問題は「急速凍結か緩慢凍結か」ではなく、そもそも採取時に冷蔵
冷凍食品を一晩解凍してから微生物検査してよいのか?―日本の規格基準とFDA・USDA・ISOの考え方
食品微生物検査について講演をしていると、現場の方から実務的な質問をよくいただく。今回取り上げるのは、次のような質問である。
「冷凍食品を前日から冷蔵庫に入れて一晩解凍し、翌日に微生物検査をしています。このような運用で問題ないのでしょうか?」
実際の検査室では、決して珍しくない運用ではないだろうか。一方、日本の冷凍食品の規格基準を知っている方なら、「公定法では冷凍したまま試料を調製することになっているはずだ」と思われるだろう。では、冷凍食品を冷蔵庫で一晩
O157は水分活性0.92で増える?――「0.95の壁」で身につける水分活性の感覚
私の食品微生物学の入門講座では、水分活性について次のような確認問題を出している。
「大腸菌O157について、水分活性が0.88の場合、増殖するだろうか?」
正解は「増殖しない」である。ところが実際には、「基本的には増殖できないが、条件によっては増殖できる場合がある」を選ぶ受講者が意外に多い。水分活性0.88という数字を見ると、「O157ならさすがに増殖しないだろう」と考える人もいるかもしれない。では、数字を少し変えてみよう。
水分活性が0.92だったらどうだろうか?
途端に迷わないだろうか。0.92なら増えるのか。増えないのか。そもそも大腸菌O157の増殖限界はいくつだっただろうか。ここに、水分活性を勉強するときの一つの落とし穴がある。0.88、0.92、0.95、0.97……という数字を見たことはあっても、その数字が微生物にとってどの程度厳しい環境なのかという「感覚」は、案外身についていないのである。そこで今回は、一つだけ数字を覚えてほしい。
米国で1万人超―RTEレタスで過去最大規模のCyclospora食中毒
米国で、Cyclospora(サイクロスポラ)による非常に大規模な食中毒が発生しています。2026年8月20日時点で、患者数は10,930人、入院454人、死亡2人。17州から患者が報告されています。原因食品として強く関連付けられているのは、メキシコ中部産のアイスバーグレタスです。FDAによる調査は現在も続いています。
Cyclosporaは、食品安全の分野では以前から知られている病原体ですが、このブログではこれまでまとまって紹介したことがありませんでした。そこで今回は、この米国で起きている大規模食中毒を紹介するとともに、「そもそもCyclosporaとはどんな生物なのか?」を簡単に整理してみたいと思います。
EUで食中毒菌の全ゲノム解析が制度化―本当の価値は「過去の食品株」と「今日の患者株」をつなぐこと
2026年8月23日、EUで食中毒菌の全ゲノム解析(WGS)を活用した新たな監視制度の適用が始まりました。Commission Implementing Regulation (EU) 2025/179 に基づく制度です。これにより、WGSを用いて食中毒の原因菌をEU全体で追跡・比較する仕組みが、いよいよ本格的に動き始めました。本ブログでは、約2年前の2024年10月、この制度化に向けたEUの動きを紹介しました。当時は、「米国GenomeTrakrのようなWGS監視がEUでも本格化する」という観点からの紹介でした。それから約2年。制度は正式に成立し、2026年8月23日から実際の適用段階に入りました。
本記事では、改めて、この制度を理解するうえで重要なポイントを整理したいと思います。それは、WGSの本当の威力は、いま発生している患者株同士を比較することだけではないということです。数年前に食品や食品工場から分離された菌株と、今日の患者由来株を照合できる――そこにこそ、WGSを食品安全行政に導入する大きな意味があります。今回は、2024年の記事以降、何が明らかになったのかを整理し、最後に日本で最近報告されたリステリア菌血症11例の事例を通じて、日本の現状も考えます。
夏季リフレッシュ休暇を取らせていただきます(8月10日~8月17日)
勝手ながら、8月4日(月)は夏季リフレッシュ休暇、8月11日(月)はお盆休み、8月18日(月)も夏季リフレッシュ休暇を取らせていただき、ブログ更新をお休みさせていだきます。
8月25日(月)から記事更新再開します。
東京海洋大学名誉教授 木村 凡
焼き鳥でカンピロバクターとサルモネラの同時感染
厚生労働省が、生食用鶏肉の衛生管理に関する全国的なガイドラインを策定する方針であることが、2026年7月2日にNHKで報じられました。ガイドラインの具体的な内容はまだ明らかになっていませんが、食品会社の品質管理担当者の間でも、生食用鶏肉とカンピロバクターへの関心が高まっているのではないでしょうか。
そこで今回は、ガイドラインそのものの解説ではなく、鶏肉に関連した少し珍しい症例報告を紹介します。一人の患者が、鶏肉に関係する代表的な二つの食中毒菌、カンピロバクターとサルモネラに同時に感染した事例です。東京都立多摩総合医療センターの医師らが報告したものです。
今週のブログ更新について
親愛なる読者の皆様へ、
いつも当ブログをご愛読いただき、心より感謝申し上げます。
通常、毎週月曜日に新しい記事をお届けしておりますが、今週は業務が立て込んでいるため、ブログの更新をお休みさせていただきます。
来週以降は、また通常どおり食品微生物に関する話題をお届けしてまいりますので、引き続き当ブログをよろしくお願いいたします。









