■ 検査法関連
大腸菌はなぜ脇役に、大腸菌群はなぜ完全引退に?──EU衛生基準が導いたリスク指標の再構築
かつて食品微生物検査の主役の一つであった「大腸菌」や「大腸菌群」。だが今、EUの食品衛生管理の舞台では、以前ほどの頻繁な登場は見られない。食品安全基準という「本舞台」においては、大腸菌の役割は大きく縮小し、主な出演の場は特定の「特番枠」である二枚貝に限られている。一方、大腸菌群は制度全体から完全に姿を消した。また、工程衛生基準という「新しい番組」でも、大腸菌の出演機会は限定的である。本稿では、2005年にEUで施行された Regulation (EC) No 2073/2005 を出発点とするこの“配役交代”の背景にある制度と科学の視点を解説していく。
手洗いだけでは不十分?:空港のノロウイルス対策に学ぶ感染防止のポイント
日本を含め、2025年冬は世界各国でノロウイルスの大流行が報告されています。食品業界では「食品を介した感染」に注目しがちですが、多くの人が触れる「表面」を介した接触感染が見落とされがちなことが、最新の研究で明らかになりました。特にノロウイルスは、インフルエンザウイルスやコロナウイルスとは異なり、脂質膜(エンベロープ)を持たないため、固体表面での生存期間が長い特徴があります。そのため、固体表面を介した感染リスクが高く、適切な消毒が重要になります。
今回紹介するのは、空港におけるノロウイルスの感染リスクを調査した最新の研究。この研究では、「手洗いよりも表面消毒の方がはるかに効果的である」という結果が示されています。
では、この研究から、食品企業にとってどのような示唆が得られるのでしょうか? 詳しく見ていきましょう。
スペインでもリステリア食中毒の増加:高齢化社会の新たな挑戦
以前、スウェーデンでリステリア食中毒が高齢化社会に伴い増加していることを紹介しました。本記事では、スペインに関しても同様の報告が2024年に出版されていますので紹介します。2001年から2021年までの過去20年間におけるスペインでのリステリア症感染者数およびその患者の内訳について、詳細な統計データが収集されました。その結果、過去20年間でリステリア症患者は増加傾向にあることが確認されました。特に注目すべきは、妊婦や健康な人の患者数に比べて、高齢者および基礎疾患を持つ患者数の増加が顕著である点です。スペインも他のEU諸国と同様に高齢化が進んでおり、高齢化に伴ってリステリア症のリスクがますます高まっているようです。
乳酸菌培地の培地成分を読解してみよう
本記事では、 MRS培地やBCP培地など乳酸菌培地に、果たしてどれぐらい乳酸菌の選択性があるのかについて、整理してみる。培地成分を読解してみよう。