■ 過去20年間の注目論文
中国食品微生物規格の一大転換:リステリア規格、幅広い"Ready to Eat"対応へ
米国やEUでは「Ready to Eat」食品全てにリステリア・モノサイトゲネスの規格基準が設定されているのに対し、日本は生ハムやチーズに限定されています。では、北東アジアの隣国、中国はどうなのでしょうか?実は、中国でもこれまでは、肉製品に限定された規格でしたが、2021年の大幅な微生物規格改正により、水産、野菜・果実、飲料など、広範な「Ready to Eat」食品でリステリアに対する微生物規格基準を導入しました。本記事で、その舞台裏を詳しく探ります。
ノロウィルス感染防除としてのトイレ徹底洗浄
ノロウイルスはレストラン、ready to eat 食品の製造現場、オフィス、公共施設、クルーズ船や高齢者施設など、さまざまな環境での食中毒の大きなリスク要因となります。特に衛生管理が徹底されていないトイレからの感染拡大も重要な要因の一つとなります。では、ノロウイルスのアウトブレイクを防ぐためには、どのような対策が効果的でしょうか?本ブログ記事では、クルーズ船のトイレ洗浄に関する大規模な潜伏調査事例から、トイレ洗浄とノロウイルスのアウトブレイクとの関連性について考察します。
レストランでのノロウィルス防除のベストプラクティスとは?
前記事では、米国のレストランでのノロウィルスのアウトブレイクを防ぐためには、従業員の教育がいかに重要かを紹介しました。では、具体的にどのような従業員教育がベストプラクティスとなるのでしょうか?この記事では、米国FDAの職員が行ったリスクアナリシスの結果に基づいて、その疑問に答えます。
レストランのポリシーによるノロウイルス感染率の違い
世界中のレストランで頻発するノロウイルスによる食中毒は、主にウイルスに感染した従業員が原因で起こります。この問題を解決するためには、レストランにおけるノロウイルス対策が欠かせません。では、どのような対策が最も推奨されるのでしょうか?米国のCDCは、ノロウイルスのアウトブレイクを経験したレストランで実施されていた従業員教育と衛生対策に注目し、食中毒リスクを低減する要因を探求しました。
ノロウイルス感染後、実際に何日間排出が続く?
ノロウイルスに感染した後、私たちは実際にどれくらいの期間ウイルスを排出し続けるのでしょうか?治癒後も排出が続くと言われるノロウイルスに関する情報は多いですが、具体的な日数や期間に関する詳細データは意外と少ない。そんな中、約15年前の2008年にテキサス州ヒューストンのベイラー医科大学で発表されたこの研究は、今でもその価値を持っています。アトマー博士らのチームは、当時としては先進的な高感度リアルタイム定量PCRを使用。その結果、ノロウイルスは治癒後、驚きの最長8週間も糞便中に検出されることが確認されたのです。
米国における生ガキによるカンピロバクター食中毒:水産物の知られざる危険
昨年、日本で流しそうめんによるカンピロバクター食中毒事件が発生し、その意外性が注目を集めました。同様に、米国でも昨年暮に、カンピロバクター食中毒の意外な原因食品としてカナダ・ブリティッシュコロンビア産の特定の生ガキによるカンピロバクター食中毒が報告されました。これらのケースは、一見カンピロバクター食中毒の原因と無関係と思える食品からの食中毒リスクを浮き彫りにしています。実は、生ガキによるカンピロバクター食中毒は、新たなケースではなく、2021年にも米国ロードアイランド州で食中毒事件が起こっています。本記事では、これらの生ガキに起因するカンピロバクター食中毒の事例を詳しく探り、その背景と予防策について解説します。
カンタロープの中の隠れた脅威:果肉に潜むサルモネラ
2023年10月から11月にかけて、米国とカナダでカンタロープを原因とする大規模なサルモネラ食中毒が発生中です。アメリカで発生するマスクメロン由来のサルモネラ食中毒事件は、これまでにも多数報告されていますが、果肉内部への侵入経路は?外部の洗浄だけでは不十分な理由とは?本記事では、カンタロープの栽培過程でのサルモネラの侵入経路と、それを防ぐための最新研究を探求します。
りんごと大腸菌O157リスク
先週、茨城県の果樹園で紙コップに入った試食のりんごを食べた後、12人が食中毒の症状を訴えた事件が発表されました。6歳男児と70歳代女性が集中治療室(ICU)で治療を受けているようです。りんごでなぜ大腸菌O157食中毒が起きるのか?食品微生物学のリスク管理の視点から、この記事ではりんごの安全性と大腸菌O157との関係について、これまでの海外の事例解説を含めて解説します。りんごの表面や内部、そして食中毒を引き起こす微生物の増殖について、専門的な視点で分析します。
腸管出血性大腸菌O26はO157と比べるとどれくらい危険?
最近の報道で目にすることが増えた腸管出血性大腸菌、特にO157の発生が再び注目を集めています。先週、静岡県の高齢者施設での悲劇的な集団食中毒事件や、先月、岐阜県の焼き肉店での5歳の男の子のO157食中毒は、私たちに深い懸念を抱かせました。しかし、O157だけが問題ではありません。他の血清型も存在し、それらは同様に深刻な影響を及ぼす可能性があります。例えば、今年8月に山梨県甲府市の認定こども園でO26型による集団感染事件が発生しました。その際、新食品微生物学入門講座の受講者から、「大腸菌O26はO157と比較してどれほどの重篤性があるのか?」「幼児はO157のように溶血性尿毒症(HUS)になるリスクはあるのか?」という質問を受けました。この記事では、大腸菌O26とO157を比較し、それぞれの病原性の強さや、特に幼児における溶血性尿毒症(HUS)への影響について詳しく解説します。大腸菌のリスクについての理解を深めましょう。
食中毒の原因は従業員の鼻腔と手指からの黄色ブドウ球菌!イタリアの事例から学ぶ
黄色ブドウ球菌は、多くの場合、人の手指の表皮に生息しています。従業員の手が直接食品に触れることで、黄色ブドウ球菌が食品に移行し、エンテロトキシンを生成して食中毒を引き起こすことがあります。この記事では、実際にイタリアの食堂で従業員の鼻腔や手指からの黄色ブドウ球菌による汚染が原因となり食中毒が発生した事例を紹介します。この事例は、ブドウ球菌中毒の典型的な例であり、食品取扱者が鼻や手にエンテロトキシン産生黄色ブドウ球菌を保有していたことが食品汚染の主な原因とされています。