高齢化が進む日本では、免疫力の低下した人々が増加しており、リステリアによる食中毒のリスクが高まっています。この問題は日本に限らず、ヨーロッパ各国でも共通しており、特にスウェーデンでのリステリア食中毒の増加傾向が顕著になってきています。本稿では、スウェーデンにおけるリステリア食中毒の増加状況とその背景について、具体的な事例を交えて解説します。

Surveillance of infectious diseases in animals and humans in Sweden 2022,
National Veterinary Institute (SVA), Uppsala, Sweden. SVA:s rapportserie 89 1654-7098

2022年の事例

 2022年のリステリア症は合計で125件報告され、大多数の症例が高齢者グループに属していました。中央年齢は79歳で、ほとんどの症例が80歳以上の年齢層で報告されています。女性67件、男性57件であり、診断から1か月以内には45件(報告された症例の36%)が死亡しました。

 主な原因食品はスモークサーモンと調理済みのひき肉製品でした。これらの食品から分離されたリステリア株は全ゲノム解析により分析され、分離菌株の全ゲノムデータはアメリカの国立生物工学情報センター(NCBI)のGenBankデータベースにアップロードされました。これにより、全ゲノム配列レベルでの原因究明が実施されました。このレポートの研究者らは、リステリア研究における人由来の食品分離株の全ゲノム配列を国際データベースで照合することの重要性を強調しています。

スモークサーモンとミートボール

上図はイメージであり、実際の食中毒関連製品とは関係ありません。

過去15年間のリステリア症数の推移

 スウェーデンでは過去10年間に、年間約70~120件のリステリア症の人間の症例が報告されています。アウトブレイクは、真空パックされた魚、半軟質チーズ、冷製カット、冷凍コーン、およびレディミールと関連していました。

 特筆すべき点として、過去15年間でリステリア症の発生件数が段階的に増加しているという傾向があります。スウェーデンでこのレポートを発表した研究者たちは、同じ傾向が他のヨーロッパ諸国でも観察されていると述べています。

パソコンを観てディスカッションする研究員

 研究者たちは、このようなリステリア症の増加傾向の原因を突き止めることは容易ではないとしながらも、スウェーデンの国における高齢化の進行が一因である可能性を指摘しています。リステリア症に感染しやすい高齢者の割合が増えていることが、増加傾向に影響を与えているのではないかと推測しています。

リステリア症の増加傾向のグラフ

 上図は、本記事の紹介レポートをクリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際 (CC BY 4.0) ライセンスに基づき、一部日本語訳で掲載しています。

実際に、過去15年間のリステリア症患者の年齢構成を見ると、年齢が上がるにつれて患者数が急速に増加していることが明らかになります。

年齢別リステリア患者数

 

上図は、本記事の紹介レポートをクリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際 (CC BY 4.0) ライセンスに基づき、一部日本語訳で掲載しています。

これらの結果を踏まえ、スウェーデンの研究者たちは、特に高齢者に対して、加工済みでそのまま食べられる食品(ready to eat食品)の摂取に注意するよう勧告しています。特にスモークサーモンには注意が必要だと指摘しています。

シニアに忠告する医者

 なお、ヨーロッパにおけるリステリア症の原因としてのスモークサーモンについて詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。

ドイツでは最もリステリア菌感染しやすい食べ物はスモークサーモンである

ノルウェーのスモークサーモン工場でのリステリア菌汚染実態

まとめ

 今回は、スウェーデンにおけるリステリア症の発生実態について紹介しました。高齢化社会の進展に伴い、リステリア感染のリスクは今後さらに高まると研究者たちは推測しています。高齢化社会といえば、日本もまったく同じ状況です。日本でも、今後リステリア症の感染者が増加することは予想され、減少することはないでしょう。日本の食品産業界にとっても、リステリア症への対策はますます重要になってくると考えられます。

心配をする日本の食品会社の研究員