■ 過去20年間の注目論文

食品工場衛生管理における微生物検査ー環境モニタリング
食品製造施設におけるATP検査と微生物検査の有効性:豆腐製造施設のケーススタディ

 食品産業において、洗浄と衛生の監視のため、迅速なATP検査が広く使われています。本記事では、豆腐製造施設においてATP検査と微生物検査を行ったケーススタディを紹介し、ATP検査の有効性を検証しました。汚れの取れにくい標的箇所を絞り込んだ重点洗浄活動の介入前と介入後で検証した結果、ATP、一般生菌数、乳酸菌の衛生要件を満たさないスワブの割合が減少しました。本記事は、豆腐製造施設だけでなく、食品製造施設全般においてATP手法を用いた衛生監視の参考になります。

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リステリア
北京の病院で明らかになった妊婦のリステリア症の実態: 2013年~2018年の調査結果

 リステリア症は妊娠中の母親と胎児に重大な健康リスクをもたらすことがありますが、中国での妊婦のリステリア症の発生状況については十分に認識されていません。この記事では、北京産科婦人科病院で2013年から2018年の6年間に確認された妊婦のリステリア症例数について報告した、李博士率いる首都医科大学北京産科婦人科病院の研究チームの論文を紹介します。この研究は、中国でのリステリア症の実態を理解するための重要な一歩となります。

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腸内細菌、ヒト常在菌
ショッピングカートは微生物の温床?

 前回の記事で携帯電話の微生物汚染についてご紹介しましたが、ショッピングカートの微生物汚染についてお伝えします。アリゾナ大学のゲルバ博士らによると、日常的な消毒が見落とされがちなショッピングカートは、清掃員が頻繁に清掃する公衆トイレやおむつ交換台の表面よりも多くの細菌が存在しているようです。この研究結果により、私たちの健康に与える影響を考えさせられます。今回の記事では、その詳細と対策方法についてお伝えします。

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腸内細菌、ヒト常在菌
携帯電話にはどんな微生物が付着しているの?

日常的に使っている携帯電話には、知らないうちに数多くの微生物が付着しているかもしれません。一体どのような微生物がそこに潜んでいるのでしょうか?また、携帯電話が病原微生物の感染原因になる可能性はあるのでしょうか?ここでは、2005年から2019年にかけて出版された研究結果を基に、携帯電話に付着する微生物の実態に迫ります。 

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ノロウィルスおよびその他ウィルス関連
食中毒の裏側:米国レストランでの発生原因、従業員の健康状態が鍵を握る

 レストランで食事をする時、従業員の健康状態を気にしたことはありますか?実は、米国で発生する食中毒の約40%が体調不良の従業員から起きているという事実があります。今回発表されたCDCの調査によると、経営者の92%が従業員に体調不良時の報告義務を課していると回答しましたものの、その方針が明文化されている店舗は66%にとどまります。更に驚くべきは、FDAが推奨する「休職が必要な5つの症状」を全て盛り込んだポリシーを採用している店舗はわずか23%だということです。

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カンピロバクター
牛肉のカンピロバクター食中毒リスク!焼肉店での事例から考える

 2023年5月の連休前の4月21日、22日に福島県福島市の焼肉店で食事をした男女18人がカンピロバクター食中毒になったニュースが報道されました。報道によれば、焼肉店で提供された牛肉の加熱が不十分だった可能性が指摘されています。そこで、本記事では、日本の牛肉がどの程度カンピロバクターに汚染されているのかを調査した研究例を紹介し、牛肉によるカンピロバクター食中毒リスクについて解説します。

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リステリア
スモークサーモンのリステリア増殖を抑える方法とは?サーモン寿司にも注意が必要な理由

スモークサーモンによるリステリア食中毒は、特にEUで頻発している問題です。しかし、サーモン加工工場でのリステリア菌の二次汚染を完全に防ぐことは困難です。そこで、流通段階でのリステリア増殖を抑制する方法が求められています。本記事では、スイスのチューリッヒ大学のエイチェール博士が提案する、高濃度(30%)の乳酸ナトリウム(NaL)を冷製スモークサーモンに注入する方法を紹介します。さらに、サーモン寿司においてもリステリアに注意が必要な理由を解説します。

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リステリア
ナイシンと有機酸の組み合わせでリステリア菌を制御!調理済み食品の安全性を向上させる方法

リステリア菌は食品工場での混入リスクが高いことで知られていますが、本菌は食品製造工場でバイオフィルムを形成しやすく、調理済み食品(RTE)製品への混入の完全防止は必ずしも容易ではありません。そこで米国で注目されているのが、流通段階でのナイシンと有機酸を組み合わせた制御方法です。本記事では、この方法が調理済み食品のリステリア菌制御にどのように役立つかを解説します。RTE製品の安全性を高めるために、ぜひ一読してみてください。

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ノロウィルスおよびその他ウィルス関連
食中毒細菌の歴史を探る:1977年以降に認識された食中毒細菌シリーズの第3作、ノロウィルス

  1977年以降に認識された食中毒細菌の歴史シリーズ3記事目の本記事では、ノロウィルスに焦点を当ててお届けします。1972年には既に胃腸炎の原因として知られていたノロウィルスですが、2002年に新属名として国際的に認知され、食中毒統計や論文で取り上げられるようになりました。この記事では、ノロウィルスの発見と研究史を解説します。

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腸管出血性大腸菌
腸管出血性大腸菌(EHEC):その発見と研究の壮絶な道のり【新しい食中毒細菌研究史3部作・第2話】

 この3部作では、驚くべき発見から衝撃的な研究史まで、1977年以降の食中毒細菌の世界に迫ります。シリーズ2記事目の本記事では、腸管出血性大腸菌(EHEC)がどのようにして科学のスポットライトを浴びることになったのか、そしてその歴史の中でどのような発見があったのかを徹底解説。腸管出血性大腸菌の登場の舞台裏をわかりやすくお届けします。

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