■ 過去20年間の注目論文

カンピロバクター
1977年以降に人類が認識した食中毒細菌、その歴史とは?(カンピロバクター編)

  カンピロバクター、大腸菌O157、ノロウイルスなど、現在の食中毒微生物の主役たちは、いつ頃人類が認識するようになったのでしょうか?実は、これらの微生物はすべて、比較的新しい存在であり、1977年以降に登場しました。この記事では、カンピロバクターがどのようにして研究史上に登場したかに焦点を当て、その歴史を掘り下げてみます。

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リステリア
米国のリステリア『ゼロ・トレランス』方式に識者から疑問の声、カナダやICMSFも懸念

 米国では、すべての調理済み食品に対してリステリア菌の「ゼロ・トレランス」方式が採用されていますが、米国やカナダ、ICMSFなどの専門家たちからはこの方式について疑問の声が上がっています。特に、多くの食品がリコールされる結果となっているため、2021年にはこれらの識者たちから共同提言が出されました。本記事では、彼らが指摘する問題点や提言内容について詳しく解説します。

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リステリア
中国でのリステリア症迅速診断に革命!メタゲノム解析の成功事例

 リステリア菌に感染した患者は、脳髄膜炎や意識障害を発症することがあり、迅速な抗生物質投与が必要です。しかし、現在の診断方法には問題があります。例えば、血液からの培養では陽性率が低い場合や結果が出るまでに時間がかかるということがあります。しかし、中国・蘇州大学病院のリー博士らが、メタゲノム解析を使用することで、患者の血液や髄液から直接リステリア症を正確かつ迅速に検出することに成功しました。この記事では、その成功事例を紹介します。

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リステリア
30年間の世界・米国におけるリステリア菌の食品汚染実態と食中毒リスク:その歴史と日本の未来予測

  リステリア菌は、どのような種類の食品で汚染率が高く、どのような種類の食品で食中毒を起こしているのでしょうか?本記事は、世界および米国で50万サンプル以上の統計をまとめた最新論文から、リステリア菌が多い食品やそのリスク、そして日本の未来予測について解説します。

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微生物食中毒全般
胃の役割:食中毒感染を防止するための重要性

 胃酸のpHは2.0程度なので、食べ物と一緒に胃の中に入ってくる病原微生物を殺菌する力があります。このことから、胃酸は、ヒトの食中毒菌感染を防ぐのに役に立っていると考えられています。しかし、実はこれを直接的に証明するデータはありません。もちろん、人のボランティア実験は行うことができません。また動物を用いた実験データも実はほとんど存在していません。今回紹介する記事は、確かに胃酸の存在が感染型食中毒の感染防除に役立っているということを実験的に証明した事例です。

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リステリア
病院提供のサンドイッチで低濃度汚染でもリステリア症

 リステリア症患者の 92% は、1食あたり 105 cfu を超える摂取量に起因すると推定されています。したがって、1g当たり100cfu以下の低濃度では、健常者はリステリア症にならないと考えられています。しかし、基礎疾患のある人はこの限りではありません、この記事では、病院食として用いられていたサンドイッチに低濃度にリステリア菌が汚染していたため、入院患者がリステリア症になった英国事例を報告します。

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HACCPと微生物検査
HACCP管理者が学ぶ米国FDAの警告シリーズ❶:A社(パン製造工場)

 食品製造会社がHACCPの実戦力を養うには、米国食品医薬品局(FDA)が食品製造会社へ送ったHACCP不備に関する警告書を読んでみることが有効です。本ブログでは、これらの警告書のうち、微生物関連に関する不備事例に焦点を当て、その要点をシリーズ(連続ではなく、随時掲載)で紹介していきます。シリーズ第1回の本記事では、パン製造会社Aの実例を紹介します。

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腸内細菌、ヒト常在菌
乳児の牛乳アレルギーの原因に腸内細菌が関係している

先進国におけるアレルギー患者の増加を説明する一つの仮説として、抗生物質の誤用、食生活の変化などの21世紀の生活習慣が腸内細菌群を変化させているからだと考えられています。今回紹介する論文は、子供の牛乳アレルギーに腸内細菌の存在が密接に関わっていることを明らかにしています。

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食品工場衛生管理における微生物検査ー環境モニタリング
16S rRNAアンプリコンシーケンスによる粉ミルク工場の細菌叢解析

クロノバクター・サカザキ、サルモネラ菌の粉ミルク汚染は乳児への深刻な健康危害をもたらします。粉ミルク工場では、包装段階前のクロノバクター・サカザキの混入を防ぐことが重要です。その為に、工場環境の細菌叢解析が重要な意味を持ちます。本記事では、16S rRNAアンプリコンシーケンスス技術を用いて、アイルランドの2つの粉ミルク工場の微生物菌叢を2年間にわたりモニタリングした報告を紹介します。本研究は、16S rRNAアンプリコンシーケンス解析を用いて 粉ミルク工場環境の細菌叢を調べた最初の研究です。

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腸内細菌、ヒト常在菌
ヒトとペットが共有する皮膚の常在菌

 ヒト常在菌の差異の要因としては、(遺伝的)血縁関係、食生活、年齢などが考えられています。しかし、私たちの周囲の環境、つまり私たちが交流しているペットもまた、ヒトの常在菌に影響を与えている考えられます。コロラド大学のソング博士らは、60家族の糞便、口腔、皮膚の微生物叢を調査しました。

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