■ 過去20年間の注目論文

リステリア
エノキダケとリステリア食中毒

 日本と欧米とでは食生活が異なるのでリステリア食中毒はおきにくいと考えている人も多いと思います。ところが、日本、韓国、中国などの東アジア特有の食文化の食材が海を渡って米国でリステリア食中毒を起こしています。それはエノキダケです。最近では、米国にもこれらの国々から輸出されています。本記事では、米国での輸入エノキダケによる食中毒についてまとめてみました。

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カンピロバクター
腸内細菌叢の多様性が不足するとカンピロバクター腸炎になりやすい

腸内細菌叢が多様なら外来病原菌を駆除する能力があるのではないかと、一般的には推測されています。しかし、このことを実際に科学的な観点からデータを示した報告は多くは存在しません。特にヒトに関しては殆どデータがありません。今回紹介する論文は、このことを科学的なデータで示した例です。カンピロバクター腸炎に関する報告です。ボランティア実験者の腸内細菌を調べた結果、やはり腸内細菌の多様性がある人の方がカンピロバクター腸炎にはなりにくいようです。

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ノロウィルスおよびその他ウィルス関連
ノロウイルスによる65歳以上高齢者の死亡率

 ノロウイルスの症状は通常、軽症で、感染者の多くは完治し、長期の後遺症はないとされています。しかし、65歳以上の高齢者の場合は、ノロウイルス感染により、死亡するケースもあります。では、ノロウイルスによってどれぐらいの人数の高齢者がなくなっているのでしょうか?実は、これに関する統計は国際的にあまり存在していません。そこで、英国健康保護局のハリス博士らは、ノロウイルス感染によるを高齢者(65歳以上)の死亡数を推定しました。

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ノロウィルスおよびその他ウィルス関連
ノロウイルス感染力は冷凍で下がるか?

 一般に細菌は凍結と誘拐を繰り返すと、細胞損傷を起こし、徐々に死滅していきます。ノロウイルスの場合はどうでしょう?ヒトノロウィルスは培養方法が確立していないこともあり、凍結融解を繰り返した時の死滅や感染力についての評価データは殆ど存在していませんでした。そこで、米国農務省農業研究所のリチャード博士がこれを実験してみました。

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腸内細菌、ヒト常在菌
家庭の常在菌

 人間や建築物の環境に生息する常在菌についての研究は、驚くほど少ないのが実情です。シカゴ大学のラックス博士らは、家庭環境に関連する常在菌の集中的な縦断的分析を行い、2014年にScience誌にその成果を発表しました。家庭環境の常在菌は各家庭で大きく異なり、家の住人である人の手の皮膚の常在菌によって影響されていることがわかりました。

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サルモネラ
オランダ史上最悪のサルモネラ大規模食中毒の原因食品としてのスモークサーモン(2012年)

 サケがサルモネラ食中毒の原因になることは稀です。しかし、オランダでは、過去に記録された最悪のサルモネラ大規模食中毒の原因食品はスモークサーモンでした。2012年にオランダで確認されたサルモネラ食中毒(Salmonella Thompson)の概要を紹介します。推定400万から600万人のオランダ国民がサルモネラ菌に汚染されたスモークサーモンを食べた可能性があり、23,000人がS. Thompsonによる急性胃腸炎を発症したと推定されています。オランダ国立公衆衛生・環境研究所(RIVM)感染症管理センターのフリースマ博士らの報告です。

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カンピロバクター
鶏肉の冷蔵肉や冷凍肉ではカンピロバクターの生存期間はどれくらいなの?

 鶏肉を冷蔵や冷凍保存すると、カンピロバクターの生存期間はどれくらいで、どれぐらいの速度で死滅するのでしょうか?この記事では冷蔵庫や冷凍庫に入れた鶏肉中におけるカンピロバクターの死滅の割合を定量的に測定した論文を紹介します。その結果、冷凍や冷蔵した鶏肉もカンピロバクターの重要な感染経路になることが示されました。

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腸内細菌、ヒト常在菌
周辺環境の生物多様性が皮膚の常在菌とアトピー性皮膚炎に与える影響

アトピー性皮膚炎は、乾燥してバリア機能の低下した皮膚にダニ、ほこりなどの様々なアレルゲンが侵入して起きると考えられています。しかし、詳しい原因はわかっていません。アトピー性皮膚炎の原因の一つとして、私たちの身の回りの生物の多様性の減少に結びつける考え方があります。人々が自然環境や生物多様性と接触する機会が減ることで、人間の常在微生物叢とその免疫調整能力に悪影響を及ぼす可能性があります。本記事では、健常者と比較して、アトピー患者は、自宅周辺の環境の生物多様性が低く、皮膚上の細菌叢の多様性も有意に低いことを示す論文を紹介します。

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腸管出血性大腸菌
スズメなど野鳥が葉物野菜の腸管出血性大腸菌の汚染源になり得るか?

  葉物野菜を感染経路とする腸管出血性大腸菌が米国で多発しています。その主な汚染経路は畑の近傍の牛の糞の飛沫や、糞で汚染された灌漑水などが推定されています。では、野鳥が腸管出血性大腸菌を畑に持ち込む可能性はないのでしょうか?この記事は、この可能性を調べた論文を紹介します。

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腸管出血性大腸菌
葉物野菜を感染経路とする腸管出血性大腸菌食中毒の10年間統計(米国およびカナダ )

 葉物野菜は、米国では、腸管出血性大腸菌 O157食中毒の感染経路として、牛ひき肉に次いで、 2 番目に多い感染源食品です。特にロメインレタスを感染経路とする食中毒は、他の種類の葉物野菜よりも頻繁におきています(葉物野菜の中の54%)。また、葉物野菜を感染経路とする腸管出血性大腸菌には季節性があるようです(春と秋に多発)。本記事で紹介する論文は、米国とカナダで 2009~2018 年に発生した葉物野菜に関連する腸管出血性大腸菌食中毒を調査したものです。米国疾病対策予防センター(CDC)、カナダ公衆衛生庁、米国食品医薬品局(FDA)、米国カリフォルニア州公衆衛生局の研究者たちの共同執筆レポートです。

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