食品製造工場ラインでのリステリア検査において、代わりに一般生菌数や大腸菌群検査などを使用することはできないか、と考える品質管理担当者は多いかもしれません。しかし、実際に行われた検証結果によると、大腸菌や一般生菌数の検査結果とリステリア菌の検査結果は一致せず、これらの検査では代用することができないことが明らかになりました。本記事では、この問題を詳しく検証した論文を紹介します。リステリア検査の重要性とその正確性について理解するために、ぜひお読みください。 

Dunn et al.
Prevalence of Listeria monocytogenes and indicator microorganisms in Florida cantaloupe packinghouses, 2013–2014
Food Microbiol. 2022 Jun:104:103970. doi: 10.1016/j.fm.2021.103970. Epub 2021 Dec 17. 

 フロリダ大学のダン博士らは、フロリダ州のカンタロープ(マスクメロン)包装工場におけるリステリア菌(Listeria monocytogenes)と各種指標微生物(大腸菌、大腸菌群、一般生菌数、リステリア属)の検出率の比較を行ない、これらの指標微生物が食品工場内のリステリア菌の存在を予測できるのかどうかについて検証を行ないました。

Male and female inspectors wondering if they could substitute the Listeria test for the E. coli test.

 2011年、Jensen FarmsのパッキングハウスでL. monocytogenesに汚染されたカンタロープによる集団リステリア食中毒が発生しました。 全米28州にわたり147人が感染し、33人が死亡するという痛ましい事件となりました。(CDC 2012)。今回紹介するダン博士の研究は、このような事故の背景のもとに、カンタロープ工場のリステリア菌の汚染のモニタリング調査を行ったものです。

cantaloupe-processing-factory

大腸菌群、大腸菌、一般生菌数はリステリア・モノサイトゲネス存在の指標になりうるか?

大腸菌や大腸菌群がリステリア菌の存在の指標になりうるかについては、次のような結果となりました。

  • 複数の施設(サンプリングしたフロリダ州のカンタロープパッキングハウス5カ所)で広範な調査を行った結果、大腸菌群は、20%から40%という高い頻度で検出されました。しかし、これらの大腸菌群が検出された箇所から、リステリアモノサイトゲネスが検出されたのはわずか1%未満(2/374)でした。また、大腸菌が検出されたのはゾーン2注)のウェットキャッチエリアの1箇所のみでした。
  • 一方、今回全調査を通じて、リステリア菌がサンプリング検出されたのは2か所だけでしたが、少なくともその2か所においては大腸菌群も大腸菌も検出されませんでした。同様に、リステリア菌が検出された2か所に置いての一般生菌数はほかのサンプリング場所よりむしろ低い生菌数を示しました。

注)工場環境モニタリングにおけるゾーン別区分けについての基礎事項は下記の記事をご覧ください。

食品工場衛生管理における微生物検査ー環境モニタリングの重要性

Male and female inspectors who are disappointed that they can't correctly test the king's choice for the night shift, which ends with an E. coli test.

 以上の結果は、少なくとも大腸菌群、大腸菌、および一般生菌数の存在をモニタリングして、リステリア・モノサイトゲネスの存在を予測することはできないことを示しています。

 以下は、博士らの考察に加えて、ブログ執筆者の推測を交えての考察となりますが、このようにリステリア菌と大腸菌群を指標菌として用いることができない理由として、以下のように考察できます。

  • 大腸菌群はグラム陰性菌であるが、リステリア・モノサイトゲネスは異なるグラム陽性菌で、耐性が異なる。特にリステリアは工場内の隙間に侵入し、他の菌が死滅後も生き残る可能性が高い。実際、今回の調査でも、リステリアはパッキングハウスBの2つの表面で検出され、その1つはコンベア接触部、もう1つはネジの頭でした。
  • 同様に一般生菌数についても、一般的な微生物の指標であるが、リステリアという特異なグラム陽性菌で、環境耐性の強いグラム陽性菌についてはその存在を予測できないと推察されます。

 大腸菌群や一般生菌数を工場の環境プログラムで検査することの意味は、もちろん、工場の一般衛生管理上、重要ですが、このこととリステリア・モノサイトゲネスの工場での存在の検出は別物と考えるべきだといえそうです。

リステリア菌の指標には大腸菌群や一般生菌数は不適当

リステリア属菌はリステリア菌の指標になりうるか?

 つぎに、リステリア・モノサイトゲネスが所属する、より大きな属であるリステリア属菌の指標としての有効性を検証する試みが行われました。博士たちの研究結果をみると、リステリア・モノサイトゲネスは今回の実験でわずか2か所でしか検出されませんでした。一方、リステリア属菌は多くのサンプリング箇所で確認されました。

工場からリステリア菌が出て驚く品質管理担当者。

 2013年の調査結果について、各パッキングハウスごとのリステリア属菌およびリステリア・モノサイトゲネスの検出状況は以下のとおりです。

  • パッキングハウスA:リステリア属菌は56サンプル中47サンプルで検出(83.9%)、リステリア・モノサイトゲネスは非検出
  • パッキングハウスB:リステリア属菌は46サンプル中30サンプルで検出(65.2%)、リステリア・モノサイトゲネスは46サンプル中2サンプルで検出(4.4%)
  • パッキングハウスC:リステリア属菌は55サンプル中38サンプルで検出(69.1%)、リステリア・モノサイトゲネスは非検出
リステリア除菌が出てもリステリアモノサイトゲネスとは限らない。

 今回実施された検証結果では、リステリア・モノサイトゲスの検出率が低いために、この結果から、リステリア属菌がリステリア・モノサイトゲネスの良好な指標として機能するかどうかは、まだ明確には言えません。しかし、今回の検証結果では、多くのリステリア属菌が検出されてもリステリア・モノサイトゲネスが検出されないという事例が確認されました。

 なぜこのような分布の違いが見られるのでしょうか? 一つの理由として、リステリア属菌の中にはリステリア・モノサイトゲネスと異なり、動物を宿主とすることができない種(L. aquaticaL. cornellensisL. grayiL. booriaeを含むListeria sensu latoなど)が存在するため、その生態的な特性が影響している可能性が考えられます。

リステリア食品の中には、リステリア、monocyte genesのように動物を宿主とできないものがある。

まとめ

 博士の研究により、大腸菌、大腸菌群、一般生菌数は、リステリア菌(Listeria monocytogenes)の予測因子としては不十分であることが結論されました。

 一方、リステリア属菌については、リステリア属菌が検出されたからといって、必ずしもListeria monocytogenesであるとは限りません。しかし、日常的な環境モニタリング検査においては、指標細菌の考え方に従い、より簡便で広範な菌をモニタリングするというアプローチがあります。この点で、リステリア属菌の検査は、ready to eat食品の製造工場の環境モニタリングには効果的と言えます。米国で2017年に発行されたガイダンスではリステリア属菌の環境モニタリングを推奨しています。ただし、食品接触面(ゾーン1)や食品そのものからリステリア属菌が検出された場合にはリスクに直結するため、これらがListeria monocytogenesであるかどうかの同定が必要になります。

 リステリア属菌の環境モニタリングでの使い方については、米国FDAが詳しいガイダンスを発行しています。これについては後日、別の記事で改めてわかりやすくまとめたいと思います。

リステリアの検査を行う。気になった品質管理担当者。