食品工場衛生管理における微生物検査ー環境モニタリング
16S rRNAアンプリコンシーケンスによる粉ミルク工場の細菌叢解析

クロノバクター・サカザキ、サルモネラ菌の粉ミルク汚染は乳児への深刻な健康危害をもたらします。粉ミルク工場では、包装段階前のクロノバクター・サカザキの混入を防ぐことが重要です。その為に、工場環境の細菌叢解析が重要な意味を持ちます。本記事では、16S rRNAアンプリコンシーケンスス技術を用いて、アイルランドの2つの粉ミルク工場の微生物菌叢を2年間にわたりモニタリングした報告を紹介します。本研究は、16S rRNAアンプリコンシーケンス解析を用いて 粉ミルク工場環境の細菌叢を調べた最初の研究です。

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基礎講座-HACCPと微生物検査
食品工場衛生管理における微生物検査ー環境モニタリングの重要性

食品製造工場では、HACCPに加えて、食品製造工場の環境微生物モニタリング(Environmental monitoring program; EMPプログラム)が不可欠となる。HACCPの運用だけでは微生物による食中毒事故を防げないことが、これまでの多くの食中毒事例やリコール事例から示されているからだ。この記事では、食品製造工場環境の微生物モニタリングの基礎について解説する。

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腸内細菌、ヒト常在菌
ヒトとペットが共有する皮膚の常在菌

 ヒト常在菌の差異の要因としては、(遺伝的)血縁関係、食生活、年齢などが考えられています。しかし、私たちの周囲の環境、つまり私たちが交流しているペットもまた、ヒトの常在菌に影響を与えている考えられます。コロラド大学のソング博士らは、60家族の糞便、口腔、皮膚の微生物叢を調査しました。

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リステリア
エノキダケとリステリア食中毒

 日本と欧米とでは食生活が異なるのでリステリア食中毒はおきにくいと考えている人も多いと思います。ところが、日本、韓国、中国などの東アジア特有の食文化の食材が海を渡って米国でリステリア食中毒を起こしています。それはエノキダケです。最近では、米国にもこれらの国々から輸出されています。本記事では、米国での輸入エノキダケによる食中毒についてまとめてみました。

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基礎講座-HACCPと微生物検査
国際食品微生物規格委員会(ICMSF)やEUにおける食品微生物検査サンプリングプランをわかりやすく説明します

食品の微生物検査において、「陰性」判定の持つ意味は、サンプリング方法(サンプリングプラン)によって異なる。本記事では、国際食品微生物規格委員会(ICMSF)のサンプリングプランをわかりやすく説明する。このサンプリングプランはEUの食品安全基準や工程衛生基準で採用されている。サンプリングプランにおいては、その内容自体を理解することよりも(これは簡単に理解できる)、「なぜそのようなサンプリングプランになるのか?」を理解することのほうが重要である。この記事では、初心者のために、「なぜ?」を重点を置いて解説をする。

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カンピロバクター
腸内細菌叢の多様性が不足するとカンピロバクター腸炎になりやすい

腸内細菌叢が多様なら外来病原菌を駆除する能力があるのではないかと、一般的には推測されています。しかし、このことを実際に科学的な観点からデータを示した報告は多くは存在しません。特にヒトに関しては殆どデータがありません。今回紹介する論文は、このことを科学的なデータで示した例です。カンピロバクター腸炎に関する報告です。ボランティア実験者の腸内細菌を調べた結果、やはり腸内細菌の多様性がある人の方がカンピロバクター腸炎にはなりにくいようです。

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ノロウィルスおよびその他ウィルス関連
ノロウイルスによる65歳以上高齢者の死亡率

 ノロウイルスの症状は通常、軽症で、感染者の多くは完治し、長期の後遺症はないとされています。しかし、65歳以上の高齢者の場合は、ノロウイルス感染により、死亡するケースもあります。では、ノロウイルスによってどれぐらいの人数の高齢者がなくなっているのでしょうか?実は、これに関する統計は国際的にあまり存在していません。そこで、英国健康保護局のハリス博士らは、ノロウイルス感染によるを高齢者(65歳以上)の死亡数を推定しました。

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ノロウィルスおよびその他ウィルス関連
ノロウイルス感染力は冷凍で下がるか?

 一般に細菌は凍結と誘拐を繰り返すと、細胞損傷を起こし、徐々に死滅していきます。ノロウイルスの場合はどうでしょう?ヒトノロウィルスは培養方法が確立していないこともあり、凍結融解を繰り返した時の死滅や感染力についての評価データは殆ど存在していませんでした。そこで、米国農務省農業研究所のリチャード博士がこれを実験してみました。

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■ 世界最新ニュース
魚肉練り製品でリステリア食中毒発生(デンマーク)

 デンマークで発生したリステリア菌の集団感染の原因食が魚肉練り製品であることが判明しました。2022年8月中旬から10月にかけて、デンマークでは、リステリア菌の同一遺伝子型を原因とするリステリア症患者7人を記録しました。これらの患者から採取したリステリア菌の遺伝子型は魚肉練製品から分離されたリステリア菌の遺伝子型と一致しました。

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腸内細菌、ヒト常在菌
家庭の常在菌

 人間や建築物の環境に生息する常在菌についての研究は、驚くほど少ないのが実情です。シカゴ大学のラックス博士らは、家庭環境に関連する常在菌の集中的な縦断的分析を行い、2014年にScience誌にその成果を発表しました。家庭環境の常在菌は各家庭で大きく異なり、家の住人である人の手の皮膚の常在菌によって影響されていることがわかりました。

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