冷凍イチゴを感染経路としたドイツ児童の大規模食中毒事例

 ノロウィルスの食中毒といえば、日本においては2017年に刻み海苔で全体で2,000名を超える患者が発生した大規模な食中毒が記憶に新しいところです。ところで海外でノロウイルスによる大規模食中毒事例といえば、2012年にドイツの小学生や幼稚園の児童1万人以上が中国から輸入した冷凍イチゴによって集団感染した事例が有名です。この食中毒はドイツ史上最悪の食中毒となってしまいました。

今回紹介する論文はその経過を報告した論文です。

※ノロウィルスの基礎事項を確認したい方は、下記記事をご覧ください。
食中毒菌10種類の覚え方 ⑩ノロウィルス

イチゴでノロウィルス食中毒になったドイツの子供

 2012年9月下旬から10月上旬にかけて、ドイツで過去最大の食中毒が発生しました。ドイツの⼩学校、幼稚園で1万1000人の⼦どもがノロウイルスに感染し、集団⾷中毒を起こしました。解析疫学では、最も可能性の高い因子としてイチゴを含む料理が疑われました。これらの料理はケータリング会社の地域の複数の厨房で調理され、集団発生のピークの2日前に学校で提供されていました。

 イチゴ由来のノロウイルスと患者由来のノロウイルスの遺伝子型はいずれも、これまでにドイツでは報告されていないタイプの遺伝子組換え型II.16/II.13であることを明らかなりまた。患者の発生したすべての施設では、中国から輸入された同一ロットの冷凍イチゴが使用されていたことから、原因は中国産冷凍イチゴの可能性が⾼いと推定されました。問題のイチゴは中国の⼭東省⻘島市で収穫され、冷凍・包装された後にドイツに輸出されたものであることがわかりました。

 ベリー類は、ベリー畑への灌漑や施肥の際などの様々な段階でノロウイルスに汚染される可能性があります。また、また、ノロウイルスに感染したヒトにより、収穫や包装の段階で汚染される可能性もあります。

 この食中毒事件を受けて、ドイツ連邦政府は、輸出⾷品検査の厳格化、冷凍フルーツ関連企業に対する検査を中国に申し入れました。また、この事例を契機に、欧州連合(EU)は、2013年以降、中国から輸入される冷凍イチゴに関しノロウイルス検査のための無作為サンプリングを課しています。

 この事例は、ロウイルスが冷凍イチゴに存在すること、世界規模で食品が流通する時代に、輸入冷凍果物などからも大規模食中毒を発生させるリスクを⽰しています。

 

この論文は、2013年に発表され、これまでに60回引用されています。

論文→Detection and Typing of Norovirus from Frozen Strawberries Involved in a Large-Scale Gastroenteritis Outbreak in Germany
Food Environ Virol (2013) 5:162–168

※この記事は公益社団法人日本食品衛生学会の会員限定メールマガジンで私が執筆した記事を、学会の許可を得て、メルマガ発行以後1年以上経ったものについて公開しています。ただし、最新状況を反映して、随時、加筆・修正しています。