■ 食品微生物の基礎講座
病原微生物は人間に戦いを挑んでいるのか?
大学で食品微生物を教えていると、毒素型食中毒細菌はなぜ人間にとっての毒を出すのか?大腸菌O157が牛の腸内にいても牛は健康なのに、人間だけなぜ感染を起こすのか?などの質問を受けることがある。食品微生物学という人間中心の学問を学んでいると、病原微生物が人間に戦いを挑んでいるかのような視点になりがちである。しかし地球生物学の観点からは、人間を中心として微生物を見る見方は間違いである。この記事では微生物と人間との関係について、地球上の微生物の歴史の観点から整理してみたい。
クロノバクター・サカザキ(Cronobacter sakazakii)
本記事では、 乳児用調製粉乳への汚染から乳児への感染が心配されるクロノバクターサカザキ(Cronobacter sakazakii)とはどのような細菌なのかについて整理する。また、乳児用調製粉乳の調乳の注意事項や、粉ミルクと液体ミルクの違いについても、微生物学的安全性の観点から解説する。
なぜカタラーゼ試験でグラム陽性菌の中から乳酸菌を見分けることができるのか?
本記事では、カタラーゼ試験でグラム陽性菌の中から見分けることができる乳酸菌について説明する。なぜ乳酸菌だけがグラム陽性菌の中でカタラーゼ陰性なのか?カタラーゼ陰性なのに、なぜ酸素条件下で生存できるのか?そもそも、なぜ乳酸菌は酸素があっても乳酸発酵しかしないのか?つまるところ、乳酸菌とはどのような細菌なのかについて説明する。最後に、乳酸菌の定義、特徴、性質および乳酸発酵について基礎知識をを整理する。
微生物の増殖と酸素の関係の関連事項をすべて解説します
食品微生物学分野においては、分離した細菌がグラム陰性桿菌である場合、次に重要な判断は、好気性細菌か通性嫌気性菌の判定である。本記事では、細菌の増殖と酸素の関係を理解するために、まずは、解糖系とは何か、クエン酸回路(TCA回路)とは何か、電子伝達系とは何かについてわかりやすく説明を加える。また、好気性細菌とは何か、通性嫌気性菌とは何か、偏性嫌気性菌とは何かについても述べる。
グラム陰性菌の整理に必要なOF試験判定
食品微生物検査において、分離した細菌がグラム陰性桿菌である場合、次に重要な判断は、好気性細菌か通性嫌気性菌の判定である。好気性細菌か通性嫌気性菌の判定の簡便法としてOF試験(Oxidation Fermentation test)がある。本記事では、OF試験の原理や判定方法についても述べる。また、OF試験結果が食品微生物検査に持つ意味についても解説する。
オキシダーゼ試験の仕組み-グラム陰性菌、特に腸内細菌科菌群の検査法として重要
本記事では、 オキシダーゼ試験(オキシダーゼテスト、シトクロームCオキシダーゼ試験、もしくは、チトクロームCオキシダーゼ試験などの別称あり) とは何か、この試験でわかること、その原理や試験方法(擬陽性などの注意事項含む)、グラム陰性菌で本試験結果が陽性や陰性だった場合の食品衛生学的意義、特に生食用食肉 規格基準に採用されている腸内細菌科菌群の検査法としての重要性、などについて解説する。
グラム陰性菌とグラム陽性菌の特徴、違い、種類を整理する微生物分類方法(食品微生物学整理箱)
最近は 16srrna遺伝子解析に基づく種の同定が 盛んになっている。その結果、細菌の分類が微細かつ複雑になってきた。しかし食品微生物学の分野では、詳細な分類を行う前に、頭の中で大きな枠組みを理解しておくことの方が重要である。この記事以降、数記事にわたり、食品微生物学の中で登場する各種グラム陰性菌やグラム陽性菌の種類や特徴の整理・覚え方に便利な微生物分類方法、すなわち、頭の中の食品微生物学整理箱をについて述べたい。グラム陽性菌とグラム陰性菌とでは、頭の中で整理しておくべき整理箱の構成が少し違う。これらの枠組みを頭の中に入れておくと便利である。
保存料「ナイシン」について
前記事では、日本で広く用いられている保存料や日持向上剤について記した。本記事では、ソルビン酸やしらこなどのように、日本では保存料表示義務のある食品添加物のナイシンについて解説する。ナイシンは、乳酸菌同士の抗菌作用として用いられる天然抗菌剤のバクテリオシンの一つである。ポリカチオンペプチドの一つであり、体への影響や体に悪いというデータはなく、過去40年間にわたり食品の保存の目的で全世界で広く使用されている。
有機酸以外の保存料、日持ち向上剤について
「保存料不使用」、「保存料無添加」などの言葉が歓迎されているように、ソルビン酸などの保存料は体に悪い、危険な添加物であるとの消費者イメージがある。本記事では、保存料とは何かについて説明をし、保存料と日持ち向上剤の種類やその抗菌メカニズムについて、抗菌ペプチドのポリリジン、しらこたん白などを例に挙げ、解説する。また、日持ち向上剤についても、グリシンを中心に説明する。
水分活性と微生物の増殖
本記事では水分活性とは?水分との違いは?について、わかりやすく解説する。結合水や自由水の理解、食品の水分活性の測定方法(求め方)の原理、塩蔵など、水分活性を下げることによって保存性を高めている食品、水分活性と細菌やカビなどの微生物の増殖との関係、水分活性で覚えておくと便利な値も説明する。