グラム陽性菌と陰性菌ー概略の理解

 梅雨期にはあちらこちらで水たまりができる。雨滴の中は、塵や埃が混ざっていなければ基本的には菌は存在しない。しかし、地上に落ちて水たまりとなると急激に細菌が増殖する。講演者が梅雨期に空き瓶にたまった細菌数を調べたところ2×105cfu(coloniy forming unitの略、平板培養法で求める微生物の生菌数の単位)/mlの菌が検出された。ビンの壁面に微量に付着する有機物を利用して細菌が増殖したものと考えられる。このように梅雨時には、テラス、道路の路肩、草木の表面、あるいはビルの陰など、日の差しにくいところに水たまりができ、そこでは本来乾燥土壌や草木表面には存在しにくい多くの細菌が繁殖する。このように湿ったところを好む水生型菌をグラム陰性菌と呼ぶ。

大腸菌やサルモネラ菌などもグラム陰性菌の仲間であり、トイレから出たあとの靴底などに付着して運ばれてきたこれらの菌は梅雨期には湿った土壌や水たまり中などでは、乾燥した固定表面に比べると生存率がぐんと高まっていると考えられる。したがって、梅雨時にはこれらグラム陰性菌の食中毒菌が身の回りに存在して、食品への二次汚染のチャンスが高いといえる。また、例えば、食品工場の液汁や飲料などの吹きこぼれや洗浄後の水溜りなどではシュードモナスや大腸菌群といったグラム陰性菌が旺盛に増殖する。

一方、陸上にはグラム陽性菌と呼ばれる細胞壁の厚い菌が多い。海の潮間帯で誕生したと考えられる生命は海洋生物と陸上生物に分岐・進化し、細菌も同じように海洋細菌と陸上細菌に進化したと考えられている。陸に上陸し、乾燥や急激な温度変化のある陸上での生活に適応したのはグラム陽性菌である。例えば、動植物の表皮に生息する黄色ブドウ球菌や、ミクロコッカス属などは乾燥に強い。特に、バチルス属(枯草菌や納豆菌など)とクロストリジウム属(ボツリヌス菌など)の2属は耐熱胞子を作り、乾燥した陸上へ最もうまく適応進化した究極の陸上型進化菌といえる。