食中毒菌のサルモネラ菌の感染力を逆手にとって、サルモネラ菌を正義の味方に使う論文が,2021年10月21日にネイチャーコミュニケーションに出版されました。サルモネラ菌を癌治療に使おうというものです。 マサチューセッツ大学アマースト校の研究グループの研究です。

Intracellular delivery of protein drugs with an autonomously lysing bacterial system reduces tumor growth and metastasess
NATURE COMMUNICATIONS | (2021) 12:6116 |
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 要点だけのべると、サルモネラの腸管上皮細胞への巧妙な病原性の仕組み、 すなわちエンドサイトーシスを誘導し、まんまと腸管上皮細胞の中に侵入し、さらに宿主からの防御機構から逃げるというシステム、これらを逆手に利用したものです。

正義の味方に改心するサルモネラ菌

 研究グループは、癌細胞を攻撃する薬剤を生産できる遺伝子組み換えをしたサルモネラ菌株をまず設計しました。このサルモネラ菌を用いて、癌細胞に特異的に攻撃を加え、がん細胞内の中で薬剤を放出させるという仕組みです。すでに乳がんの動物モデルのテストで成功をしています。

 まだ臨床試験前の段階ですが、マウスでの検査結果は非常に有望です。 この研究グループの中心のバンデッセル博博士とフォーブス博士らはベンチャービジネスの立ち上げました。またマサチューセッツ大学も特許を申請し、このベンチャーに特許を供与しています。現在このベンチャービジネスば臨床試験について FDA の承認を求めている最中のようです。

 食品微生物の世界では悪者のサルモネラ菌が癌治療の世界では、正義の味方になる日も近いかもしれません。