米国CDCは、2022年8月19日、米国複数州で発生中の腸管出血性大腸菌O157:H7の広域食中毒の感染経路として、ウェンディーズ( Wendy’s restaurants)のハンバーガーに使われているロメインレタスの可能性があると発表しました。特定の食品がこの集団発生の原因であることはまだ確認されていませんが、患者の聞き取り調査によると、多くの感染者が、発病前にウェンディーズ でロメインレタスを使ったハンバーガーやサンドイッチを食べたと報告しています。

レタスバーガー

腸管出血性大腸菌食中毒の概要

 米国CDCの2022年8月19日発表によると、現在、米国複数の州の公衆衛生および規制当局、米国食品医薬品局(FDA)、米国農務省食品安全検査局(USDA-FSIS)は、この複数州で発生している腸管出血性大腸菌O157:H7感染症の食品源を特定するためにさまざまな種類のデータを収集中です。

 2022年8月18日現在、4つの州から合計37人の集団発生株の腸管出血性大腸菌O157:H7への感染者がCDCに報告されています。

CDCホームページからのマップ

CDCホームページのから

発病者は2022年7月26日から2022年8月8日までの日付で発生しています。

CDCホームページからの感染者数の推移

CDCホームページのから

 患者の年齢は6歳から91歳で、年齢の中央値は21歳、62%が男性です。情報がある24人のうち、10人が入院しています。入院している10人のうち、ミシガン州の3人が溶血性尿毒症症候群注)を発症しています。現時点で、死亡者は報告されていません。

注)腸管出血性大腸菌や溶血性尿毒症症候群の基礎事項を確認したい方は、下記の記事をご覧ください。
食中毒菌10種類の覚え方 ①腸管出血性大腸菌

胃痛で苦しむ若い男性

 CDCによると、このアウトブレイクにおける患者数は、報告されている数よりも多い可能性があります。また、アウトブレイク患者は、現在確認されている州よりさらに広域に広がる可能性があります。なぜならば、患者の腸管出血性大腸菌O157:H7感染の確定診断には通常3〜4週間かかるためです。したがって、最近の発症した患者はPulseNetに報告されていない人がいるからです。また、特に若い人などでは、自然治癒して、大腸菌の検査を受けていない人も多くいると想定されています。

聞き取り調査により感染経路として浮上したウェンディーズのハンバーガーのロメインレタス

 州および地域の公衆衛生担当者は、患者に対して、病気になる前の1週間に食べた食品について聞き取り調査を行っています。その結果、 8月19日現在、次のことが分っています。

  • 聞き取りを行った26人のうち、22人(86%)が発病前の1週間にウェンディーズ(Wendy's)レストランで食事をしたと回答しています。
  • 病人が食べたウェンディーズ・レストランは、ミシガン州、オハイオ州、ペンシルバニア州にあります。
  • ハンバーガーやサンドイッチなど、様々なメニューを食べたと報告されています。
  • ウェンディーズのハンバーガーやサンドイッチに添えられていたロメインレタスは、メニューの中で最もよく食べられている食材の1つです。

 調査員は引き続き食材レベルでのデータ分析を行い、他に発生源となりうる食材がないかどうかを調査しています。

ロメインレタス

公衆衛生上の措置

 現在、ウェンディーズ は、ハンバーガーに使用されているロメインレタスを当該地域のレストランから撤去するという予防措置を取っています。ウェンディーズでは、サラダには別の種類のロメインレタスを使用しています。調査員は、ロメインレタスがこの集団発生の原因であるかどうか、またウェンディーズのサンドイッチに使用されたロメインレタスが他の事業者で提供または販売されていないかどうかを確認するために作業を行っています。

 ウェンディーズは調査に全面的に協力しています。

2022年10月15日追記情報
  CDCは、ウェンディーズ社で発生した大腸菌感染症の調査を2022年10月4日に終了し、結局、感染源となる特定の食材から腸管出血性大腸菌を分離できないまま、調査を終えました。ただし、本事件は最終的に、82人の患者への聞き取り調査により、68人が発症前にウェンディーズで食事をしたと報告し、そのうち46人がウェンディーズのサンドイッチかハンバーガーでロメインレタスを食べたと回答しました。発病日は2022年7月26日から2022年8月17日までとなりました。合計109件の感染が同一の大腸菌O157:H7株と一致することが確認され、109件のうち52名が感染により入院を必要としました。また、13人が溶血性尿毒症症候群(HUS)(大腸菌感染症の合併症で、腎不全に至る可能性がある)の治療を必要としました。

微生物検査を行う男女の検査員

サラダやレタスは腸管出血性大腸菌食中毒の感染経路として過去にも多く報告されている

 米国ではサラダやレタスが原因で腸管出血性大腸菌食中毒がこれまでに何度も起きています。生野菜の種類別に統計をとると、大部分はレタス(74%)に起因しています。 その他としては、キャベツ(6%)、ネギ(8.5%)、シダ(6.4%)、そしてホウレンソウ(5.3%)となります。これに関する関連記事は下記の記事をご覧ください。

サラダ及び生野菜による細菌性食中毒統計(米国)

 また、最近では2022年1月にスーパー販売のミックス野菜サラダで腸管出血性大腸菌O157のアウトブレークが連続発生しています。
スーパー販売のミックス野菜サラダで腸管出血性大腸菌O157のアウトブレークが連続発生(米国)

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