フランスで発生した冷凍ピザによる腸管出血性大腸菌アウトブレイク

 2022年3月から4月にかけてフランス全土で冷凍ピザによる腸管出血性大腸菌感染が発生しました。2022年4月25日現在、55人の患者が確認されています。ほとんどの患者は子供たちです。溶血性・尿毒症症候群(HUS))も多くの子供たちが発症し、死者も2名出ています。また意識不明の植物状態の子供たちもいて、現在フランス全土で大きな心配時となっています。世界最大の食品・飲料会社のネスレ社の傘下のブイトーニ社の冷凍ピザが原因であると当局は推定しています。現在フランス公衆衛生当局によりついてこの工場の衛生管理状態について調査中です。

注)溶血性・尿毒症と腸管出血性大腸菌食中毒の関係をを確認したい方は、下記の記事をご覧ください。
腸管出血性大腸菌の病原メカニズム

冷凍ピザ

アウトブレイクの概要

 フランス公衆衛生局の4月25日の発表によると、2022年4月13日現在、55人の患者が確認されています。この55例は、フランス全土に散らばって発生しています。2022年1月18日から3月16日までに小児52名と成人1名の感染が報告されました。そのうち51人が腸管出血性大腸菌 O26株に、2人が O103株に感染しています。その他にも、フランス公衆衛生局に届けられた26例感染症については、現在調査が進行中のようです。

ピザを食べて食中毒になった子供たち

 52人の小児の年齢は1歳から17歳で、中央値は7歳、23人(44%)が女性、47人(87%)がHUS、7人(13%)がSTEC胃腸炎を呈しています。2人の子供が死亡しています。

子供の墓で悲しむ母親

 なお、フランスの新聞社Midi libreの下記ウェブサイトでは、今回の被害者の一人である12歳の少女レナちゃんの両親がテレビの取材に応じた悲痛なインタビュー映像を公開しています。

https://www.midilibre.fr/2022/04/13/ecoli-dans-les-pizzas-buitoni-notre-fille-est-dans-un-etat-vegetatif-le-calvaire-des-parents-de-lena-12-ans-10233311.php

 リナちゃんは2022年2月に家族とともにこの会社のピザを食べて、腸管出血性大腸炎になり、その後病状が悪化し、脳障害をおこし、インタビュー時までの2ヶ月間、話すことも見ることもできず、経鼻胃管で栄養補給し続ける植物状態で、現時点を迎えているとのことです。

 インタビュー映像はフランス語ですが、両親の痛ましい心痛がわかります。インタビューを見ることにより、実際に腸管出血性大腸菌に感染して症状が重篤になってしまった場合のの怖さがよく理解できます。

 幼い子供が感染し溶血性尿毒症症候群による重篤な症状に陥った場合、たとえ一命をとりとめても、高度脳機能障害,腎機能障害等を生涯残す場合もあります。

腸管出血性大腸菌による尿毒症では植物人間になったり、腎臓障害を起こすことを示しているイメージ

ポイントカードを使った原因究明


今回の食中毒事件で、フランス語公衆衛生局は、これらの感染症の原因となった共通の食材を見つけるために、被害者が所属する小売チェーンのポイントカードを使って、食中毒患者の原因を追跡したようです。

この経緯の詳細は下記サイトに記されています(フランス語です)。
Pizza Buitoni : les autorités ont utilisé les cartes de fidélité des victimes pour identifier l'origine de l’infection

 簡単に要約すると、被害者に対する聞き込み調査とポイントカードの履歴から、被害者の食べた共通の食品としてブイトーニ社の冷凍ピザが浮上したようです。

 なお、今回のようにポイントカードを使って腸管出血性大腸菌食中毒の原因究明を行うやり方はフランスでは10年前にも実施され、その成果が報告されていいます。別記事で改めましたのでご覧ください。

ポイントカードを利用した腸管出血性大腸菌アウトブレイクの原因究明

ポイントカード

 冷凍ピザが原因と裏切られた時点で、被害の家庭に残っていた開封済みのピザの生地を保健当局が分析した結果、腸管出血性大腸菌が検出されました。このピザから見つかった腸管出血性大腸菌のゲノムと患者から採取した腸管出血性大腸菌のDNAの配列が一致しました。

2022年3月18日、同社は2021年6月から販売されている「フレイシュアップ」シリーズの全ピザの回収を進めています。フランス保健省はこれらのピザを保有する人々に消費しないよう呼びかけています。

工場の衛生管理不備が明るみに

 フランスのニュースチャンネルBFMTVは、腸管出血性大腸菌が検出された冷凍ピザ工場の元従業員からのものと言われる工場内の写真を放送しました。フランス語放送ですが、映像だけみても内容はわかります。

 このテレビ局の紹介しているビデオを見ると、機械の周りにチーズや肉などの破片がこびりついており、衛生管理が不備であることを伺わせます。

 現時点で大腸菌の汚染経路は明確になっておらず、ブイトーニ社は3月30日に、汚染経路が特定され、必要な是正措置を講じるまでの間、生産を再開しないと発表発表しています。3月31日(木)、親会社のネスレは、ピザが大腸菌に汚染されたコドリーの工場で実施された検査は陰性であったと発表しました。

現在、フランスの不正取締当局が調査を続けています。

工場のずさんな衛生管理を示すイメージ