本記事では、食品工場の消毒剤としての過酢酸製剤について説明する。
有機物の影響を受けにくい過酢酸
過酢酸の最も大きな特徴は、次亜塩素酸と異なり、有機物の存在が大量にあっても、殺菌力が落ちにくい点である。

次亜塩素酸の場合には、殺菌対象物に有機物が存在している場合には、微生物の殺菌に使われる活性酸素がこれらの共存有機物の酸化に使われてしまう。この結果、微生物の殺菌効力が低下してしまう。

これに対して、過酢酸の場合には、このような有機物による消耗が比較的少ない。

過酢酸の作り方
過酢酸は、もともと酢酸に過酸化水素を加えて作られる。その結果、強力な酸化剤である過酢酸が生成される。
過酢酸は分解の過程で自らの酸化力に加え、ヒドロキシルラジカル(・OH)などの反応性の高い活性酸素種を生じることがあり、これらが殺菌力の主体となる。
さらに、反応後に生じた酢酸は再び反応系に取り込まれるため、まるで歯車のように酸化反応が循環しやすい特性をもつ。
このようなメカニズムにより、過酢酸は有機物が多く存在する環境下でも、その殺菌力が大きく低下しにくいとされている。

過酢酸製剤の指標基準
過酢酸は食品製造工場のラインの洗浄などに普及している。また、平成28年に肉と野菜の表面殺菌剤の使用が認可されている。

※過酢酸を野菜の除菌に用いた具体例については、下記の記事もご覧ください。超音波洗浄との組み合わせでトマトからのサルモネラのの除菌に関する論文を紹介しています。
野菜や果物の洗浄と除菌方法として注目される超音波洗浄
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