腸管出血性大腸菌O157はどのような場合、畑の土壌中で長期間生残するのだろうか?

 腸管出血性腸管出血性大腸菌O157の感染症の主な感染経路は、牛肉を原因とした経路です。その他に、牛の糞を介して、畑の土、環境水などで生存し、野菜などに二次汚染し、生野菜やサラダなどの食べ物が感染源となる事例もあります。ところで腸管出血性大腸菌O157が畑の土壌中で長い間、生存するためにはどのような条件が必要なのでしょうか?この問題について、オランダのグローニンゲン大学のバン・エルサス博士らが、土の中に存在する微生物の多様性と栄養物をめぐる競合関係が重要な役割を果たしていることを明らかにしました。

※腸管出血性大腸菌の基礎事項を確認したい方は、下記記事をご覧ください。
食中毒菌10種類の覚え方 ①腸管出血性大腸菌

腸管出血性腸管出血性大腸菌O157の畑土壌での生存

 博士らは、腸管出血性大腸菌O157を土の中に接種する際に、あらかじめ土の中の微生物群集の多様性を色々な条件で作り出しておきました。そして、微生物群集の多様性の高い土の中では、外から接種した腸管出血性大腸菌O157はあまり長くは生き残れませんでした。一方で、微生物群集を単純化しておくと、腸管出血性大腸菌O157は長く生き残れることを見出しました。

つまり、腸管出血性大腸菌O157の土の中の生残性との微生物の多様性との間には負の相関関係があるということです。

どうやら、土の中の微生物が多様であると腸管出血性大腸菌O157が長く生き残れない理由については、多様な微生物群集であるほど多様な栄養成分奪ってしまうという 、栄養物をめぐる競合関係が が原因のようです。

   腸管出血性大腸菌O157が野菜など汚染するためには、腸管出血性大腸菌O157が土の中で果たしてどれくらいの期間生き残れるかということがとても重要な要因となります。博士らの研究は、畑の土の多様性が、外様の侵入者をのさばらせないためにとても重要であることを示しています。

私達、食品微生物学の研究者は、普段あまり環境微生物の生態学について論文を読むことが多くありません。 この論文は、腸管出血性大腸菌O157のような外来病原菌の環境(土)の中での生存に及ぼす微生物群集の影響を明確な実験で示した実例として、とても注目されています。

2012年に発表されてから既に431回引用されています(2021年10月Scopusで更新)。

論文→Microbial diversity determines the invasion of soil by a bacterial pathogen
PNAS, 109, 1159–1164 (2012)

※この記事は公益社団法人日本食品衛生学会の会員限定メールマガジンで私が執筆した記事を、学会の許可を得て、メルマガ発行以後1年以上経ったものについて公開しています。ただし、最新状況を反映して、随時、加筆・修正しています。