食品微生物検査において、分離した細菌がグラム陰性桿菌である場合、次に重要な判断は、好気性細菌か通性嫌気性菌の判定である。好気性細菌か通性嫌気性菌の判定の簡便法としてOF試験(Oxidation Fermentation test)がある。本記事では、OF試験の原理や判定方法についても述べる。また、OF試験結果が食品微生物検査に持つ意味についても解説する。

好気性細菌と通性嫌気性菌を見分ける方法としてのOF試験

  以下に、寒天培地に出現したコロニーが好気性細菌なのか通性嫌気性細菌なのを区別する簡単な方法を述べる。OFテストと呼ばれるものである。

好気性細菌と通性嫌気菌の見分け方

 このテストは簡単に実施できる。およその手順は以下のとおりである。

  • 2本の試験管の中に寒天培地を入れておく。その寒天培地の中にはペプトンなどの栄養素とともにグルコースが入っている。さらにはこの寒天培地の pH を色で判定するために pH 指示薬を入れておく。ここで用いる pH 指示薬  であるbromthymol blue は pH 中性であれば緑色であるが、 pH が酸性になると黄色くなる。
  • 2本の試験管培地 に、調べたい細菌の培養を接種する。白金線で試験管の底近くまで深く縦に突き刺すような接種をする(穿刺)。
  • 接種の後、一本の試験官の培地の表面に流動パラフィンのようなミネラルオイルをかぶせる。このようにすることによって培地表面への酸素の供給を遮断する。つまり2本の寒天培地のうち一本は酸素が十分供給されるシステムとし、もう一本は酸素が十分に供給されないシステムとする。

 このテストは厳密に言えば、微生物がブドウ糖を発酵する能力を判定するテストである。しかし両培地での細菌の増殖を観察することによって細菌が好気性細菌なのか通性嫌気性なのかについて判断することも可能である。

 酸素が供給されている試験管にのみ増殖が認められるならば、その細菌は好気性細菌と判定できる。流動パラフィンをかぶせた培地の中においてもまた微生物の増殖が認められれば、その細菌は通性嫌気性菌と判定することがでできる。

 また、この試験は微生物がブドウ糖を発酵する能力をもっているかを判定するテスト ではあるが、好気性細菌の場合は、流動パラフィンのない試験管のみが黄色に変色し、通性嫌気菌の場合は両方の試験官が黄色に変色する。微生物が増殖することによって培地中に含まれているブドウ糖が分解され結果として酸が 生じるからである。

注)まれに、グルコースを利用できない細菌が存在する。その場合は、試験管で増殖のみが観察され、培地は黄色に変化しない。この場合も、両試験管での菌の増殖を目視観察し、好気性細菌か通性嫌気菌かを判別すればよい。

OF試験の結果判定

判定結果の解釈

 以上のようにOF試験で判定し、分離株がグラム陰性菌で好気性細菌ならば、シュードモナス のような腐敗細菌と想定すればよい。

OF試験の結果の解釈を表すイラスト

このグループは、食品を腐らせる可能性はあるが、感染型食中毒の原因にはなれない。なぜか?なぜならば人間の腸の中には酸素が不足しているからである。好気性細菌のように酸素を要求する細菌がヒトの腸の中で活発に増殖して腸内細菌との競合に打ち勝つことは難しい。一方で彼らは、酸素が存在するととても早いスピードで増殖します。 従って彼らは動植物の腐敗初期段階で大きな役割を演じる。

好気性細菌は感染型食中毒にならない

 一方、グラム陰性菌でOF試験のF、すなわち、通性嫌気菌の判定になれば、サルモネラ腸管出血性大腸菌などのほとんど全ての感染型食中毒の原因菌を含むので、要注意である。通性嫌気菌の場合は、食品の流通環境のような酸素が豊富な環境においてもクエン酸回路で活発に増殖をし、一方で人の腸内の中のように酸素がない環境でも増殖できるという特性を持つ。 この特性こそが食品を媒介した感染型食中毒を起こしやすい理由である。

 以上のように、グラム陰性菌は、はじめにOF試験を行い、好気性細菌と通性嫌気菌に分けることが重要である。

なお、好気性菌、通性嫌気性菌、嫌気性菌についてのわかりやすい解説記事は別記事にまとめたので、下記をご覧いただくとよい。
微生物の増殖と酸素の関係の関連事項をすべて解説します