以前、このブログでEUや日本における消費期限や賞味期限の考え方について紹介しました。では、米国ではどうでしょうか? 実は驚くべきことに、これまで米国では消費期限や賞味期限の表示が法律で義務化されていませんでした。しかし、今回カリフォルニア州が米国で初めて、期限表示の法制化に踏み切りました。本記事ではその詳細についてご紹介します。
食品の期限表示に関するこれまでの米国の法律状況
米国では、EUや日本とは異なり、消費期限や賞味期限などの食品の期限表示に関して、これまで法律での義務がありませんでした。唯一、乳児向け製品に限り表示が義務付けられていたものの、それ以外の食品では、製造者が自主的に期限を記載するか、あるいは全く記載しない場合もありました。これにより、店頭では消費期限や賞味期限が記載されたもの、あるいは全く表示がないものが混在していたのです。
さらに、混乱を招いた要因の一つとして「販売期限」(Sell By)が挙げられます。販売期限とは、スーパーなどの小売店が自主的に設定した、商品を店頭に並べるまでの期限です。これがそのままパッケージに表示されていることがありました。また、その他、『Expires On』(〇〇に期限が切れる)や、『Freshest Before』(〇〇までが最も新鮮)の表示も同時に混在しており、消費者の混乱を招く要因となっておりました。
消費者は、これらの多種多様な表示の違いを理解できずに混同し、その結果、多くの食品が誤って廃棄されるケースがありました。
カリフォルニア州の新たな法律制定
うした問題を受け、カリフォルニア州は2024年9月28日、米国で初めて食品の期限表示に関する法律(カリフォルニア州議会法案660号)を制定し、この混乱を解消するための取り組みを開始しました。
具体的な内容は以下の通りです:
- すべての食品に「消費期限」(Use By)または「賞味期限」(Best if Used By)の表示を義務付ける。
- スーパーなどが自主的に設定する「販売期限」やその他の表示をパッケージから除去し、表示を禁止する。
2026年7月1日以降に製造される製品にこの統一用語が適用され、従わない場合は販売が禁止されます。
ただし、以下の製品は品質および安全日付表示に関する規定の対象外とされています。
- 乳児用調製粉乳
- 卵または加熱殺菌された殻付き卵
- ビールおよびその他の麦芽飲料
期待される効果
今回の法律により、カリフォルニア州ではこれまで廃棄されていた多くの食品が無駄にならずに済むことが期待されています。
食品ロスの削減は、SDGs(持続可能な開発目標)にも関連しており、特に世界的な飢餓問題に対する重要な一歩と考えられています。この法律が、持続可能な地球環境の実現に向けて健全な効果をもたらすことが期待されます。
まとめ
米国では、EUや日本と異なり、消費期限や賞味期限の表示がこれまで義務化されていなかったことは驚きです。しかし、今回のカリフォルニア州の法律制定により、米国でも消費者の食品に対する意識が高まることが期待されます。ただし、これはカリフォルニア州に限った措置であり、米国全土での義務化には至っていません。今後、この動きが他の州にも広がるかどうか、注目されます。
日本やEUでの消費期限、賞味期限に関する法的な位置づけについては、下記の記事をご覧ください。
EUにおける消費期限や賞味期限の設定法に関する考え方については、下記の記事をご覧ください。