デンマークで発生したリステリア菌の集団感染の原因食が魚肉練り製品であることが判明しました。2022年8月中旬から10月にかけて、デンマークでは、リステリア菌の同一遺伝子型を原因とするリステリア症患者7人を記録しました。これらの患者から採取したリステリア菌の遺伝子型は魚肉練製品から分離されたリステリア菌の遺伝子型と一致しました。

魚のつくね

食中毒の概要

 以下は、デンマーク国家血清研究所(11月9日)およびデンマーク獣医食品局(11月10日)の発表の概要です。

2022年8月中旬から10月にかけて、デンマーク国家血清研究所では、リステリア菌の同一遺伝子型を原因とするリステリア症患者7人を記録しました。患者は男性3名、女性4名です。発病者は70歳以上の6人と子供1人です。うち1人は死亡しました。

お墓の前で悲しむ女性

汚染源追及と原因食品の解明

汚染源追及と原因食品の解明は以下の手順で行われました。

  • 患者はデンマーク全国に在住しており、6人の患者、および1人の死亡患者の親族への聞き取り調査では、全員が特定ブランドの魚肉練り製品(魚のつくね)を食べていたことが判明しました。
医師のインタビューに答えるシニア女性
  • その後、デンマークのレムヴィ港に拠点を置くJeka Fish社の魚肉製品からリステリア菌が検出されました。
  • Jeka Fish社の魚肉製品からリステリア菌と患者分離株を全ゲノム解析によるin silico MLSTで型別をおこなったところ、両者は一致しました(ST7)

全ゲノム解析およびin silico MLSTで型別の基礎を学びたい方は下記記事をご覧ください。

全ゲノム配列(Whole Genome Sequence: WGS)にもとづく解析

デンマークの地図

製品のリコール

 Jeka Fish社は2022年8月1日から11月8日の間に製造されたすべてのフィッシュケーキをリコールしました。また、フィンランド、ドイツ、イタリア、ラトビア、ルーマニア、スロバキアにも輸出された製品もリコールしました。

 事件の調査と機械の清掃の間、工場は数日間すべての生産を停止しました。その後、食品検査庁は生産設備を承認および免除したため、工場は現在、再稼働しています。

リステリア菌感染は多様な食品が原因食となる

 リステリア菌食中毒は、Ready-to-Eat (RTE) 食品(RTE サラダ、デリミート、ソフト/セミソフトチーズ、シーフード)および冷凍野菜など、さまざまな食品が原因となります。水産食品としては、スモークサーモンが最もその発生頻度が高いです。

ドイツでは最もリステリア菌感染しやすい食べ物はスモークサーモンである

ノルウェーのスモークサーモン工場でのリステリア菌汚染実態

 今回紹介したのは魚肉練り製品です。魚肉練り製品によるリステリア食中毒は比較的珍しい事例です。

 いずれにしても、リステリア菌もグラム陽性菌で、環境にしぶとく生存し、二次汚染の原因となります。あらゆる種類の食品において、リステリア菌は注意が必要です。特に消費者が購入してそのまま食べる食品、すなわちready to eat食品の場合には、細心の注意を払う必要があります。

食品製造工場で話し合う男女

リステリア菌の基礎事項を確認したい方は、下記記事をご覧ください。

食中毒菌10種類の覚え方 ⑧リステリア菌

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