韓国産キムチによりカナダで腸管出血性大腸菌0157食中毒

 韓国産キムチによる腸管出血性大腸菌O157:H7の食中毒がカナダで発生しているようです。カナダ公衆衛生庁(PHAC)によって1月29日に発表されました。 2022年1月28日の時点で、キムチに関連する腸管出血性大腸菌O157の食中毒事例が14件確認されています。 本記事では現時点でカナダ公衆衛生庁の発表内容を紹介します。また同時に、過去のキムチによる下痢性大腸菌感染症として、 2012年に韓国で発生した腸管毒素原性大腸菌(ETEC)の事例も紹介します。

韓国産キムチによる食中毒の概要(現時点での調査状況)

 2022年1月29日現在、カナダ公衆衛生庁は、州の公衆衛生パートナーであるカナダ食品検査庁(CFIA)およびカナダ保健省と協力して、アルバータ州とサスカチュワン州の2つの州で発生した大腸菌O157感染の調査を行っています。

 これまでの調査結果に基づくと、州別の患者数は、Alberta州(13)とSaskatchewan州(1)です。患者の年齢範囲は0歳から61歳の間で、入院や死亡は報告されていません。当局による聞き取り調査によると、大腸菌O157に感染した患者の多くは、体調を崩す前にハンクックブランド(韓国文字のみ)のオリジナルキムチを食べたと回答しています。

 CFIAは、 1月28日に、ハンクックブランドのオリジナルキムチで2022年1月29日より前に販売した製品群についてリコール警告を発行しました。CFIAは食品安全調査を継続しており、他の製品のリコールにつながる可能性があるとしています。

キムチ

キムチによる過去の下痢原性大腸菌感染症の食中毒事例(韓国)

 ところでキムチによる下痢性の大腸菌感染は、 2012年にも韓国で起きています。このアウトブレイクは、腸管出血性大腸菌ではなく、腸管毒素原性大腸菌(ETEC)によるものです。

 腸管毒素原性大腸菌(ETEC)感染症は、ETEC は途上国における乳幼児下痢症の最も重要な原因菌であり、先進国においてはこれらの国々への旅行者にみられる旅行者下痢症の主要な原因菌して知られています。日本でも下痢原性大腸菌による食中毒事例のなかではETEC による発生件数がもっとも多いのが現状です。特に、ETEC O169:H41が原因とされる食中毒事例や散発下痢症は日本でも世界でも頻繁に食中毒を起こしています。

 以下に紹介する韓国国立保健研究院感染症センターのチョー博士らの論文は、韓国で確認された最初のETECO169の発生に関するものです。

Outbreak of enterotoxigenic Escherichia coli O169 enteritis in schoolchildren associated with consumption of kimchi, Republic of Korea, 2012

 この食中毒はキムチによっておきました。小中高の 合計 7校から1642件の症例が特定されました。

 2012年9月6日、A(小学校)、B(高校)、C(小学校)、D(小学校)の4つの学校から下痢性疾患のクラスターが報告されました。その後、2012年9月7日、F校(小学校)、9月9日、E校(女子中学校)、G校(高校)から、下痢性疾患の生徒数の増加が報告されました。

 2つの学校では、大根のキムチの摂食がこれらの下痢性疾患との強い関係が認められました。他の5つの学校では、大根またはキャベツのキムチが食品の中でより高いリスクを持っていることがわかりました。

 ETEC O169は、これらの学校の230人の学生から分離され、キムチを製造し7つの学校すべてに配布した食品会社X社のキムチ製品から検出された分離株と同一であることが判明しました。

 以上の結果から、韓国でキムチによるETECO169感染の発生が確認されました。

キムチの入った給食を食べて食中毒を起こす子供

漬物原料としての白菜の管理

 ところで、キムチの主成分は、韓国では白菜です。

 白菜といえば、日本でも、上に紹介した韓国のキムチで腸管毒素原性大腸菌食中毒が起きた2012年に、8月に札幌市で白菜の浅漬による腸管出血性大腸菌O157による患者数169名、死者8名を数える大規模食中毒事件が発生しています。

 葉物野菜は、大腸菌を含むさまざまな微生物が生息している土壌で育てられます。したがって、これら葉物野菜の葉の表面は、大腸菌などのの微生物によって汚染される可能性が高いです。

※畑土壌と大腸菌の生残との関係については別記事でまとめていますのでご覧ください。
腸管出血性大腸菌O157はどのような場合、畑の土壌中で長期間生残するのだろうか?

 特に白菜は葉の層を重ねて構成されているため、内側の葉に微生物汚染が起きて容易に除去できない可能性があります。これらの細菌を的確に白菜から除去できないと、食中毒の原因になる可能性が否定できません。

 塩漬けの白菜の準備家庭におけるトリミング、塩漬け、洗浄過程の適正な管理が求められます。

※腸管出血性大腸菌O157の葉物野菜への汚染の関連記事として、最近米国では袋詰め生野菜による腸管出血性大腸菌食中毒が多発しています。下記が関連記事です。
スーパー販売のミックス野菜サラダで腸管出血性大腸菌O157のアウトブレークが連続発生(米国)

※この記事は本ブログ用に書き下ろしたオリジナル原稿です。