1月6日の 米国疾病予防管理センター(CDC )の発表によると、スーパー販売のミックス野菜サラダ製品で腸管出血性大腸菌 O 157のアウトブレイクが米国で立て続けに発生しています。ベビースピナッチによるものと有機栽培によるオーガニックサラダによるものが別々に独立して発生しているようです。今週はこれらの食中毒について紹介します。
ベビースピナッチ(赤ちゃんほうれん草)で大腸菌O157:H7の食中毒
1月6日のCDCの発表によると、ベビースピナッチ(赤ちゃんほうれん草)で腸管出血性大腸菌O157:H7の食中毒がおきたと発表されました。販売元は、Josie'sOrganics社のパッケージ済みベビーほうれん草でした。ほうれん草による食中毒感染は2021年10月13日から2021年11月8日までです。
1月6日の時点で、合計15人が腸管出血性大腸菌O157:H7に感染したことが確認されています。患者は米国10州にわたっています。カリフォルニア(1)、インディアナ(4)、アイオワ(1)、ミシガン(1)、ミネソタ(2)、ミズーリ(1)、ネブラスカ(1)、オハイオ(1)、ペンシルベニア( 1)、およびサウスダコタ(2)。死亡者はいませんでしたが、入院率は27%で、4人が入院しました。また、入院患者の内、3人が溶血性尿毒症症候群(HUS)と呼ばれる腎不全合併症を発症しました。患者年齢の中央値は26歳で、80%が女性でした。
患者は、病気になる1週間前に何を食べたかについて、公衆衛生当局から面接を受けました。インタビューされた13人のうち、11人、つまり85%がほうれん草を食べたと答えました。その数は、同じ期間にFoodNet人口調査でほうれん草を食べたと答えた回答者の46%よりも大幅に上回っていました。
一方、公衆衛生調査員は、全ゲノムシーケンス(WGS)データベースを利用して、解析を行いました。その結果、WGSは、患者から分離された大腸菌O157:H7が遺伝的に密接に関連していることを示しました。つまり、これらの患者が同じ食物から大腸菌O157:H7に感染したことが示唆されました。
また、ミネソタ州の当局者は、患者の家に残っていたJosie'sOrganics社のパッケージ済みベビーほうれん草から大腸菌O157:H7の患者分離株と同じ遺伝子型の大腸菌O157:H7を分離しました。そこで、FDAは、陽性製品サンプルのトレースバック調査を実施し、2つの異なる地理的地域にある少数の農場にまでさかのぼりました。しかし、農場内のどこで大腸菌O157:H7が汚染したかまでの特定はできませんでした。
発生は2021年1月6日に終了しました。
有機栽培ミックスサラダで 腸管出血性大腸菌O157:H7の食中毒
同じく1月6日のCDCの別の発表では、4つの州で合計10人の腸管出血性大腸菌 O157:H7感染患者が報告されていると報告しています。この食中毒は2021年11月27日から2021年12月9日までの期間で確認されています。患者の年齢は26歳から79歳で、年齢の中央値は59歳で、100%が女性です。情報が入手可能な10人のうち、4人が入院し、1人が溶血性尿毒症症候群(HUS)と呼ばれるタイプの腎不全を発症しました。死亡は報告されていません。
州および地方の公衆衛生当局は、患者に聞き取り調査を行い、感染前の週に食べた食品について調査しました。その結果、Simple TruthOrganicブランドで販売されているOrganicPower Greens注)を食べたと報告した人は8人、Nature'sBasketブランドを食べたと報告した人は1人でした。7人の買い物客の記録にもこれらの製品の購入履歴が確認されました。その製品には、有機ほうれん草、ケール、フダンソウ、水菜が含まれています。。これらのミックスサラダ製品は、QFC、ジャイアントイーグル、フレッドメイヤーなどの全国のスーパーマーケットや食料品店で販売されていました。
注)OrganicPower Greens:有機栽培で収穫されたベビーホウレンソウ、ミズナ、チャード、ケールをミックスしたサラダ(Simple TruthOrganic社のホームページによる)。
CDCによると、このアウトブレイクの実際の患者数は、報告された数よりもはるかに多い可能性があるとしています。なぜなら、多くの人が医療を受けずに回復し、大腸菌の検査を受けていない可能性があるためです。また、E. coli O157:H7患者がアウトブレイクの一部であるかどうかを判断するのに通常3〜4週間かかるため、今回のアウトブレーク患者の人数はさらに増える可能性があるとしています。
家庭での葉物野菜の扱い方
CDC の下記のサイトで葉物野菜の食品安全性に関しての CDC の見解が整理されています。
Lettuce, Other Leafy Greens, and Food Safety
このガイドラインの簡単な要点を述べると次の通りです。
1) 米国の食中毒発生原因で最も多いのが、葉物野菜である。また、大腸菌 O 157食中毒の原因食品として最も多いのも、葉物野菜である。
2)大腸菌 O 157以外では、ノロウイルス、サルモネラ、リステリア菌、 サイクロスポラ(胞子虫類)である
消費者の葉物野菜を購入した時の取り扱いの注意
1. 「洗わずそのまま食べられる」表示のある製品
消費者は洗う必要がない。なぜならば、商業的な葉物野菜の殺菌条件によりほとんどの有害菌の十分な殺菌除去が行われているからだ。もちろんこのような製品でも米国では時々食中毒を起こしているが、これは製造加工業者の衛生管理の問題。
2. 上記の表示がないか、あるいは、「必ず洗ってから食べてください」 などの表示がある製品
必ず消費者は食べる前に払うこと。
洗い方の注意点
1.水道水の流水洗浄を行うこと
2.浸漬洗浄は避けること。なぜならば浸漬中に汚染された微生物が他の新鮮な別の葉っぱに移動するなど、汚染が広がる可能性があるから。
3.洗剤などを使って洗わないこと。水道水の洗浄で十分である。
葉物野菜の生食を特に注意をしなくてはならない人々
1)65歳以上の成人
2)5歳未満の子供
3)基礎疾患を抱えている人
4)妊婦
※なお、米国で生野菜関連での食中毒統計を整理した論文については、下記別記事もご覧ください。
サラダ及び生野菜による食中毒事例(米国)
※また、野菜の洗浄・殺菌関連の論文は、下記記事もご覧ください。
野菜や果物の洗浄と除菌方法として注目される超音波洗浄
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