鶏肉の冷蔵肉や冷凍肉ではカンピロバクターの生存期間はどれくらいなの?

 鶏肉を冷蔵や冷凍保存すると、カンピロバクターの生存期間はどれくらいで、どれぐらいの速度で死滅するのでしょうか?この記事では冷蔵庫や冷凍庫に入れた鶏肉中におけるカンピロバクターの死滅の割合を定量的に測定した論文を紹介します。その結果、冷凍や冷蔵した鶏肉もカンピロバクターの重要な感染経路になることが示されました。

Survival of Cold-Stressed Campylobacter jejuni on Ground Chicken and Chicken Skin during Frozen Storage.
Appl Environ Microbiol. 70(12): 7103–7109(2004).

冷蔵庫に鶏肉を入れる男性

 カンピロバクター(Campylobacter jejuni)は、鶏肉の流通過程では次第に死滅していくと考えられています。なぜなら、微好気性細菌なので空気の酸素濃度はこの菌にとって有害であり、また、最低増殖温度は30°Cだからです。しかし、冷蔵庫ぐらいの低温では、常温に比較すると、その死滅速度は遅くなるとも考えられています。

※カンピロバクターの基礎事項を確認したい方は下記の記事をご覧ください。
食中毒菌10種類の覚え方 ③カンピロバクター

 ところで、冷蔵または冷凍条件下での保存中のキャンピロバクターの生存は、様々な試料を用いて評価されていますが、消費者による加工やその後の保存中に鶏肉製品がさらされる冷蔵と冷凍条件での影響については、十分に理解されておらず、定量的データは不足していました。ヒトの実験的感染において、わずか500個のカンピロバクター細胞を摂取しただけで発病することを考えると、冷蔵・冷凍保存後に生存しているカンピロバクターの存在は重要です。

 そこで、米国農務省農業研究事業団東部地域研究センターのバドウリ博士らは、4℃での冷蔵、-20℃での冷凍、および冷蔵と冷凍の組み合わせが鶏ひき肉と鶏皮のカンピロバクター(Campylobacter jejuni)の生存に及ぼす影響について検討しました。

実験方法の概要は次の通りです。

  • 同じ加工業者から鶏胸肉と皮付き鶏もも肉片の2バッチを、あらかじめ、照射殺菌を行った。
  • これらの鶏肉にカンピロバクター菌液を、最終濃度が約108CFU/gとなるように、植菌した。

 以下の処理およびサンプリングプロトコルを用いました(博士らは、冷蔵と冷凍の組み合わせ条件設定の実験も行っていますが、ここでは下記単独の2実験のみを記します)。

  • 4℃で冷蔵し、冷蔵後、1,3,7日にサンプリング
  • -20℃で凍結し,凍結後、1,3,7,14日にサンプリング
  • 所定の時間間隔で、肉試料を取り出して、C. jejuniの生存率を測定した。

実験の結果の概要はつぎのおとりです。

  • 冷蔵保存だけでは、3日後と7日後の生菌数の減少はわずかでした。3日から7日間の冷蔵保存により,鶏挽肉のカンピロバクターの菌数は0.34から0.81 log10 CFU/g,鶏皮の細胞数は0.31から0.63 log10 CFU/gの減少にとどまりました。
鶏肉を冷蔵庫保存した場合のカンピロバクターの死滅

上の図は、この記事で紹介している論文のデータから一部を抽出し、作図した。
論文では鶏肉と鳥皮の両方の実験を行っているが、ここでは鶏肉のデータのみを記している。

  • 冷凍保存により、2週間で、鶏ひき肉の細胞数は0.56~1.57 log10 CFU/g、鶏皮の細胞数は1.38~3.39 log10 CFU/gの減少がみられました。いずれのサンプルタイプにおいても、時間に対する細胞数の減少率が最も大きかったのは、冷蔵保存の有無にかかわらず、冷凍保存の初日でした。
鶏肉を冷凍保存した場合のカンピロバクターの死滅

上の図は、この記事で紹介している論文のデータから一部を抽出し、作図した。
論文では鶏肉と鳥皮の両方の実験を行っているが、ここでは鶏肉のデータのみを記している。

  • カンピロバクターの生存率は,冷蔵の有無にかかわらず,2週間の冷凍期間終了時点で鶏皮よりも鶏挽肉で有意に高い数値となりました。

以上の実験結果から、博士は次のように結論しました。

  • カンピロバクターは鶏肉中で冷蔵しても冷凍しても、簡単には死滅しない。
  • 冷蔵および冷凍のそれぞれ単独処理や組み合わせいずれにしても、鶏肉の安全な取り扱いと適切な調理の代用にはならない。

 カンピロバクターは、サルモネラ菌や腸管出血性大腸菌などのその他の感染型食中毒菌と異なり、常温流通においては増殖することは不可能であり、むしろ、酸素感受性により、徐々に死滅していくと考えられています。しかし、博士らの研究成果は、冷蔵や冷凍下では、これらの死滅速度が緩やかになることを示しています。

 このことは、冷蔵や冷凍した鶏肉も、カンピロバクターの重要な感染経路になる可能性を示しています。

カンピロバスターは冷蔵や冷凍ではそんなに簡単に死なない

なお、微生物の冷凍と死滅との一般的な関係については、下記の記事に分かりやすく説明していますので、ご覧ください。
冷凍と微生物の死滅