なぜカタラーゼ試験でグラム陽性菌の中から乳酸菌を見分けることができるのか?

 本記事では、カタラーゼ試験でグラム陽性菌の中から見分けることができる乳酸菌について説明する。なぜ乳酸菌だけがグラム陽性菌の中でカタラーゼ陰性なのか?カタラーゼ陰性なのに、なぜ酸素条件下で生存できるのか?そもそも、なぜ乳酸菌は酸素があっても乳酸発酵しかしないのか?つまるところ、乳酸菌とはどのような細菌なのかについて説明する。最後に、乳酸菌の定義、特徴、性質および乳酸発酵について基礎知識をを整理する。

グラム陽性菌でカタラーゼ陰性なら乳酸菌である

 乳酸菌はグラム陽性菌に属する。グラム陽性菌の中から乳酸菌を見分けるポイントは、カタラーゼテストを行うことである。

乳酸菌の見分け方

 対象とする微生物のコロニーに過酸化水素をピペットで滴下する。この際、コロニー周辺から泡が発生すればカタラーゼ陽性となる。

過酸化水素水をかければ乳酸菌を見分けることができる

 この泡は地球上のほとんど全ての生物が持っているカタラーゼという酵素によるものである。この記事で述べる乳酸菌を除けば、酸素環境下で生きていける微生物の全てがカタラーゼを持っていると考えてよい。したがって、この標準寒天培地上で発育したコロニーにこの試験を行った場合、ほとんどの場合は泡が出る。

 一方、そのコロニーが乳酸菌であった場合には、泡が出ない。グラム性菌注)であり、且つ、カタラーゼテストの結果が陰性になれば、球菌と桿菌であるかにかかわらず全て乳酸菌になる。

注)ただし、偏性嫌気性菌は除く。ここでは空気中環境下で生育したコロニーの区別について述べている。

グラム陽性菌の中でカタラーゼテストが陰性ならば乳酸菌

カタラーゼとは何か?

 では、カタラーゼとは何か?

 カタラーゼとは、過酸化水素を水と酸素に分解する酵素である。簡単に言えば、地球上に存在する酸素の有毒作用によって細胞が酸化されることを防ぐために働いているものである。酸素存在下では、酵素的や非酵素的な反応によって過酸化水素や過酸化脂質などの過酸化物が発生する。これらは反応性が高く、細胞組織を損傷する危険な物質となる。

 生命が地球上に誕生した時には酸素がなく、しばらく経ってから、太陽光を化学エネルギーに転換する光合成能力をもつ藍藻類が誕生した。

地球史上最初の化学的災害、藍藻の出現

 光合成の副産物として、これまで地球上に存在していなかった酸素が地球上に充満した。地球の歴史においての最初の環境破壊である。酸素の出現は多くの生物にとって致命的な作用をもたらした。酸素から生じる過酸化水素は酸化力が強く、生物の細胞に損傷を与えるからである。ここでは本題からそれるので詳しくは述べないが、この地球最初の環境破壊が、真核生物の誕生や、酸素を電子伝達帯の最終電子受容体として用いるクエン回路の誕生へと繋がっていった。

地球の歴史

 地球上で充満する酸素による酸化から細胞を守るためにさまざまな手段が生まれた。その一つがカタラーゼである。

 カタラーゼの作用により過酸化水素は水と酸素に分解される。したがって、寒天培地上のコロニーに過酸化水を滴下した時に泡(すなわち酸素)が出てくれば、その細菌はカタラーゼを持っているということになる。

カタラーゼの反応式

 酸素環境下で生きることのできる地球上のほとんどの生物がカタラーゼを持っていることを説明するために一つの例を紹介したい。今、缶詰会社に勤めている人がクレーマーからゴキブリが缶詰に入っているとクレームを受けたと仮定しよう。

缶詰にゴキブリが入っているというクレーム

 そこで缶詰会社の品質担当者は、缶詰のゴキブリに過酸化水素を滴下する。その結果、気泡が出てきたとする。このことから、このゴキブリは缶詰の殺菌される前に入っていたのではなくて、クレームを持ち込んだクレーマーが缶詰を開けた後にわざとにゴキブリを入れたものだと結論づけることが可能である。

ゴキブリに過酸化水素水をかけてみる

この泡はゴキブリの持っているカタラーゼによって作られる。ゴキブリも酸素からのその体の酸化を守るためにカタラーゼを持っている。このクレーマーのケースの場合、ゴキブリが缶詰の包装以前に入っていたとしたらレトルト殺菌によってカタラーゼは失活しているはずであった。しかし過酸化水素をかけたら泡が出た。これは、このゴキブリは少なくとも加熱殺菌をされていなかったことを示している。

 以上のように酸素がある環境下で生きていける生物は基本的にカタラーゼを持っている。微生物もその例外ではない。

なぜ乳酸菌はカタラーゼ陰性なのか?

 では、乳酸菌はなぜカタラーゼ陰性なのか?

 乳酸菌も地球上に存在する酸素から自分を守らなくてはならない。従って過酸化水素を分解する酵素を持っているという点では、他の微生物と同じである。ただし乳酸菌の場合、この目的に使う酵素の種類が少し違う。

 乳酸菌はNADペルオキシダーゼという酵素を使う。この酵素もカタラーゼと同様に過酸化水素を分解する。しかし、過酸化水素を分解するために、NADH注)という基質を用いる。

注)補酵素の一つ。NAD(nicotinamide adenine dinucleotide)の還元型。クエン酸回路から電子伝達帯への主な電子の運び手

 過酸化水素水から生じる活性酸素はNADHの酸化作用に用いられてしまう。したがって、反応終了後に、酸素分子の単体として発生することはない。すなわち、乳酸菌のコロニーに過酸化水素を加えると過酸化水素は分解されるが、副産物として酸素の泡が発生しない。

カタラーゼとNADペルオキシダーゼの反応式

 この性質を利用して私たちは乳酸菌を区別する。カタラーゼテストは簡単な実験により乳酸菌を見分ける便利な方法である。

過酸化水素水をかけて泡が出なければ乳酸菌

ではなぜ乳酸菌だけがNADペルオキシダーゼなのか?

 では、なぜ乳酸菌だけがカタラーゼを持たず、NADペルオキシダーゼをもっているのだろうか?

乳酸菌は乳酸発酵だけをする特殊な細菌

 乳酸菌がカタラーゼを持たない理由を説明するためには、まずは乳酸菌の乳酸発酵しかしないという代謝の特殊性を理解する必要がある。

 一般的に微生物は酸素が存在する条件下では クレブス回路(クエン酸回路、 TCA 回路)によって糖類を二酸化炭素と水にまで分解する。しかし酸素のない条件下では、解糖系のみでエネルギーを得るために、酢酸や乳酸などの中間生成物を作る。

※微生物の発酵代謝や呼吸代謝の基本については下記の記事で分かりやすく説明しているのでご覧ください。
グラム陰性菌の整理に必要なOF試験判定

 乳酸菌の乳酸菌の大きな特徴は、酸素が環境中にあってもなくてもどちらにしても乳酸発酵しか行わないことである。乳酸菌は電子伝達帯を使うエネルギー生産を行わない。すなわちクエン酸回路を用いず注)、もっぱら乳酸発酵のみによって増殖をする。この乳酸の代謝の特殊性は乳酸菌ならではのものである。

注)乳酸菌も電子伝達帯に関する諸酵素の遺伝子は潜在的に持っていることが、明らかになっている文献)。また、一部の乳酸菌では、外因性のヘム(後述するように、乳酸菌自体はヘムを合成できない)によって活性化され、酸素存在下でクエン酸回路を用いた呼吸活性が作用し、さらに増殖が若干促進される場合があることも報告されている文献)。しかし、これはあくまでも呼吸活性の遺伝子を潜在的に持っていることや、ヘムを提供した特殊な条件下での事例であり、一般的に乳酸菌の代謝で認められる現象ではない。

発酵代謝とクエン酸回路代謝

 この特徴はヨーグルトやチーズなどの発酵食品に乳酸菌を使う場合にはとても便利な性質である。なぜならば酸素が環境にあってもなくても常に乳酸発酵しかしないからである。
 乳酸菌を人間に例えてみると、発酵食品会社にとっては、乳酸菌君はとても有能な社員だ。なぜならば、酸素があったりなかったり、あるいは酸素濃度に関わらず、常に一定のクオリティの仕事、すなわち乳酸発酵をやってくれるからだ。

乳酸菌は、いつも乳酸発酵をするので安定している

 これに対して通常の通性嫌気性細菌は、酸素があればクエン酸回路を用い、酸素がなければ乳酸菌のような発酵代謝経路を用いる。すなわち環境によって。これらの細菌が作り出すプロダクト(仕事の成果)がまちまちになるということだ。このような細菌を人間に例えると、乳酸菌会社にとって見れば、このような一般細菌君は仕事ぶりが不安定で、とてもじゃないが使えない。

 もし乳酸菌が環境の酸素条件によって発酵代謝から呼吸代謝に切り替えるようなことがあれば、乳酸の生成が極めて不安定になり発酵食品の利用には向かないだろう。

普通の通性嫌気性細菌は酸素があるときとないときで仕事ぶりが違う

なぜ乳酸菌は酸素があってもなくても乳酸発酵しか行わないのか?

 では、なぜ乳酸菌は酸素があってもなくても乳酸発酵しか行わないのであろうか?酸素が豊富にあれば、クエン酸回路を用いた方がたくさんのエネルギーを得られるにもかかわらず、乳酸菌はそのようなことはしない。これは生物学的には不思議だ。

 このことを理解するためには、入門編としてはやや深入りした話になるが、オーバーフロー代謝という概念を簡単に説明しておきたい。

 クエン酸回路を成立させるためには、たくさんの酵素が必要である。

 微生物にとっては、確かにクエン酸回路を構築することによって、大量のエネルギーを得ることができる。しかし一方で、それらの回路を成立させるためには、たくさんの酵素を合成しなくてはいけないという手間もかかる。

 一方、発酵代謝経路の場合は確かに得られるエネルギーは少ないが、とりあえず代謝系がシンプルなので、その代謝系を組み立てるための酵素は少なくて済む。

クエン酸回路に、はたくさんの酵素が必要

 これについては、大腸菌を用いた興味深い研究例がある。大腸菌なでも、環境中にグルコースが豊富に存在し、とりあえず急激に増殖する必要がある場合には、環境中に酸素が存在しても、発酵代謝を選択をする場合があるらしい。

 下のグラフを見ていただきたい。大腸菌が酵素を合成するための総タンパク量を横軸に取り、細胞から生産されるATP量を縦軸に取ってみる。この図からわかるように、発酵代謝の方がクエン酸回路を用いる代謝よりも酵素タンパクあたりのATP生産量の効率がいいことがわかる。

 つまり、クエン酸回路を用いるエネルギー生産系は確かにエネルギー総量は、大きい。しかし、それを作るための酵素を作る作業も必要だ。したがって、酵素一つあたりのエネルギー生産量はそれほど高くないということだ。これは日本のGDPに似ている。日本のGDPは総量としては大きい。しかし、国民一人当たりの生産量はそれほど効率的ではない。

発酵代謝と好気性呼吸でのエネルギー生産効率の違いを示すグラフ

上の図は下記の文献のデータから筆者が作図したものである。

Overflow metabolism in Escherichia coli results from efficient proteome allocation. Nature, 528, pages99–104 (2015)

 一方、発酵代謝系は、作り出すエネルギーの量は少ないが、それに必要な酵素を考えた場合に、酵素タンパクのあたりのエネルギー生産効率は、高い。

クエン酸回路計ではたくさんの酵素をつくらなくてはいけない

酸素があっても発酵をするのは乳酸菌の専売特許ではない

 実は酸素があるにも関わらずエネルギー効率として発酵代謝を選択することは、乳酸菌の専売特許ではない。

 例えばアルコール発酵をする酵母も、条件によっては乳酸菌と同じような代謝形式をとる。酵母の場合、グルコースが乏しく酸素が豊富な環境下ではクレブス回路によってグルコースを二酸化炭素と水に分解し ATP を合成する。しかしグルコースが豊富にある場合には、 たとえ環境に酸素が豊富にあったとしてもアルコール発酵を行う。

 このように、急激に増殖する細胞が、酸素が存在するにもかかわらず、エネルギー⽣産の⽅法として発酵が採⽤される現象は、オーバーフロー代謝として知られている。大腸菌などでもグルコースが、大量に存在する環境では例え酸素があってもクエン酸回路をあえて使わない場合があるということだ。そして一時的に発酵代謝で増殖をする場合があるということである。

 さらに細菌ではないが、ヒトのがん細胞も、周囲に酸素が存在しても酸素を用いずに乳酸発酵形式のみで増殖することが知られている。がん細胞でのオーバーフロー代謝はワールブルク効果と呼ばれている。

がん細胞は酸素があるにもかかわらず、発酵代謝で素早く増殖

オーバーフロー代謝のまとめ

 オーバーフロー代謝とは、次のように整理することができる。

  • 細胞が酸素を得られるにもかかわらず、酸素を使わずに、発酵を行いエネルギーを生産する代謝戦略

 つまり、生物の細胞は、環境中に酸素があるかないかが問題ではなく、基質となるグルコースが環境にどれだけ豊富にあるか否かによって、クレブス回路をとるのか発酵式をとるのかを選択する場合があるということだ。

 発酵代謝の場合、最終的に得られるエネルギーこそ少ないものの、とりあえず手っ取り早く少ない酵素群でエネルギーを得ることができる。燃料となるグルコースが周囲に豊富に存在すれば、 たとえATP 生産の観点では効率の悪い代謝であっても、細胞にとってはむしろ有利になる場合があるということである。これを私たちの日常生活に例えると、朝食の慌ただしい中でつまみ食いをして出かけていくような状態である。乳酸菌は、オーバーフロー代謝の専門家ともいえる。

乳酸菌は贅沢につまみ食い

 このような戦略を微生物が取れるのはあくまでも基質となるグルコースなどのエネルギー源が大量に環境に存在している場合に限定される。別の記事で改めて整理したいが、乳酸菌は栄養の豊富な環境に適応した微生物群である。つまり栄養が周囲にふんだんにあるので、グルコースなどからエネルギーを完全に隅々まで取り出す必要はなく、つまみ食いで充分だということだ。

乳酸菌は贅沢だ

 もっとも、 オーバーフロー代謝はあくまでも短期的な細胞の増殖戦略の話である。また、ブドウ糖が周囲に豊富に存在し、無駄遣いが許されるような環境での話である。

 長期的なタイムスケールや、環境にブドウ糖が豊富でない場合では、クエン酸回路を使ってしっかりとエネルギーを獲得した方が細胞数としてはたくさん増殖することができる。一般生菌数用の標準寒天培地では一般の細菌よく増殖し、大きなコロニーを作る。しかし、乳酸菌は極めて小さなコロニーしか作らないか、あるいは、全くコロニーを形成できない場合が多い。

 すなわち、乳酸菌は栄養リッチな環境でしか増殖できないのだ。オーバーフロー代謝に特化した細菌の弱点ともいえる。乳酸菌の培地については改めて別記事で近日中に公開したい。

乳酸菌は栄養が豊富でないと増殖しにくくなる

 そもそも地球上の生命の歴史を振り返ってみても、元々原始の海に有機物が豊富であった時代には原子細胞はオーバーフロー代謝のみを行っていたと考えられている。ところが有機物が枯渇してくると、たとえそれを得るのにコストがかかったとしても複雑なクレブス回路を発達させてグルコースから得られるエネルギーを隅々まで100%利用しようという代謝回路が進化したと考えられている。

 つまり乳酸菌とは、ブドウ糖などが贅沢に環境に存在している状態で、つまみ食い状態を恒常的に行うように進化してしまった細菌とも整理できる。

乳酸菌はヘムを合成できない

 さて、以上を理解した上で、なぜ乳酸菌がカタラーゼを作らないのかについての結論を述べる。

 これまで述べてきたように、乳酸菌はクエン酸回路および電子伝達系を使って増殖はしない。

※微生物の呼吸、クエン酸回路、電子伝達帯などの基礎的な事項については別の記事をご覧ください。
グラム陰性菌の整理に必要なOF試験判定

 実は、この電子伝達系に構成されているシトクロームは、その補欠因子としてヘム構造を持つ。

※シトクローム関連の基礎事項を確認したい方は、別の記事をご覧ください。
オキシダーゼ試験-グラム陰性菌の整理、特に腸内細菌科菌群の検査法として重要

 一方で、カタラーゼも、ヘム構造を補欠因子として持っている。すなわちカタラーゼと電子伝達系のシトクロームは、ともにヘム構造を補欠因子に持っている点で共通である。

シトクロームとカタラーゼは共にヘムを補欠分子族として含む

 上述したように、乳酸菌がもっぱら乳酸発酵のみによって増殖する。つまり、乳酸菌は電子伝達帯を使わない。一方、そもそも、細菌においてのヘム構造は、主として電子伝達帯で使われている。乳酸菌は電子伝達帯を用いないので、ヘムの構成能力も持っていない。ヘムを合成できないので、ヘムを構成要素とするカタラーゼも合成できない。そこで、乳酸菌は自身を過酸化水素の酸化から身を守るためにヘムではなく、FAD(flavin adenine dinucleotide)を補欠因子とするNADHペルオキシダーゼを用いるわけだ。

 以上やや詳細を丸めて整理したが、大まかな理由としては、このように理解しておくと良いだろう。

改めて、乳酸菌とはどのような細菌か、その定義

 以上のように以上のように、グラム陽性菌でカタラーゼがマイナスならば、すべて乳酸菌という分類になる。この記事の上に示したチャートを見ていただければ分かるように、乳酸菌はグラム陽性菌の中に広く分布しており、分類学的に多岐に渡ることがわかる。要するにグラム陽性菌の中でオーバーフロー代謝に特化して進化した細菌群を全て乳酸菌にまとめてしまっているということだ。

 そもそも『乳酸菌』という総称は慣用的な呼び名であって分類学的な位置を示すものではない。ブドウ糖から一定の割合で乳酸を発酵生産する細菌の総称である。人間にたとえると、名前というよりは職業に相当する。

乳酸菌は分類学的な分類ではなく、職業的な分類だ

 とはいえ、乳酸菌はグラム陽性菌にしか存在しない。球菌の代表的なものはラクトコッカス属である。また桿菌の代表的なものはラクトバチルス属である。

 正確には、乳酸菌の定義として、

  • グラム陽性の桿菌または球菌で、カタラーゼ陰性、内生胞子を形成せず、消費したグルコースの50%以上を乳酸に変換しうる細菌

とされている。

   乳酸菌は14属あるが、乳酸菌の中核グループは、エンテロコッカス、ラクトバチルス、ペディオコッカス、ロイコノストック、オエノコッカス、ラクトコッカス、およびストレプトコッカスの7属である。なお、ヨーグルトやプロバイオティクスなどで活躍するビフィズス菌はラクトバシラス目ではなく、系統学的には他の乳酸菌とは全く別の ビフィドバクテリウム目に属する。従来、ビフィズス菌は乳酸菌の一種と捉えられてきたが、現在、少なくとも系統学的な分類体系からは乳酸菌とは別の細菌グループと整理されている。

代表的な乳酸菌の分類体系

ホモ型発酵とヘテロ型発酵

  さて、乳酸菌は乳酸発酵の様式から、2通りに分けられる。ホモ型乳酸菌とヘテロ型乳酸菌である。

 ホモ型乳酸菌とは、グルコースからできる発酵産物が100%乳酸であるタイプである。このようなタイプの乳酸菌は、生成物が乳酸だけなので、チーズやヨーグルトなどの発酵食品に使いやすい。

ホモ型発酵乳酸菌

 また、乳酸発酵は乳製品に限らない。たとえば、野菜の表面には塩に対して抵抗性を示す乳酸菌も生息している。従って塩漬け野菜では乳酸菌だけが増殖することが可能となり、乳酸発酵を行う。このように乳酸菌によって漬物の pH が下がり、酸っぱい漬物ができる。

乳酸菌と漬物の発酵

 ただし、ホモ型乳酸菌がすべて善玉乳酸菌というわけではない。下記の別記事で整理しているように、ホモ型乳酸菌も食品の変敗乳酸菌として知られている。

 もうひとつの乳酸菌はヘテロ型乳酸菌である。このグループは、グルコースから発酵生成物として乳酸だけではなく二酸化炭素や酢酸もつくる。発酵生成物として乳酸 だけではなく、二酸化炭素や酢酸なども作るので、食品中でこのような乳酸菌が増殖すると、ガスによる膨張や、酢酸による酸味などが生じてしまう。このようなヘテロ型乳酸菌が食品中で増殖することによって食品の変敗が起きる。

 ※乳酸菌による食品の変敗は食品産業にとって重要な事項なので、別記事で改めてまとめてあるのでご覧ください。
乳酸菌(特に食品の腐敗細菌として)

ヘテロ型乳酸発酵