■ 過去20年間の注目論文
ピーナッツバターとサルモネラ菌食中毒
今回はピーナッツバターとサルモネラ菌食中毒についての論文を紹介します。ピーナッツバターは水分活性が0.35以下なので、細菌が増殖することはまずありません。従って細菌による食中毒を想定しにくい食品でした。しかし残念ながら […]
ノロウィルス感染の治療薬として抗菌薬(抗生物質・抗生剤)投与が効く?
微生物学を学んだ人は、抗生物質は細菌の細胞壁やタンパク質合成などを阻害する仕組みの薬剤なので、ウィルスには効かないことを知っています。ノロウィルス感染の治療の薬として抗生物質を使うということは考えられません。ところがこのような常識を覆すような論文が発表されました。ワシントン大学医学部のバルドリッジ博士たちの仕事です。
腸内細菌が食物繊維からつくる短鎖脂肪酸の酪酸が腸の炎症を抑制する
潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患の原因は様々ですが、ポイントは、腸管上皮細胞のバリア性を健康に保つかことです。ではどのような食事をすれば、腸管上皮細胞のバリアを健全に保つことができるのでしょうか?今回紹介するのはそのヒントとなる論文です。 腸内細菌が食物繊維からつくる短鎖脂肪酸の酪酸が炎症性腸疾患の発症を防ぐ役割があることを⽰す2つの論文を紹介します。
人の精神や脳の働きにも腸内フローラが影響する(発達障害・自閉症の場合)
脳腸相関という言葉が最近注目されています。今回はヒトの精神におよぼす腸内細菌叢の影響についての論文を紹介します。自閉症患者の間では腸内環境における腸管上皮細胞のバリア機能が弱いということは知られていました。しかしこれが自閉症とどのように関係しているのかについては分かっていませんでした。 カリフォルニア工科大学のシアオ博士たちは、このメカニズムを、腸内細菌との関係で解明しました。
腸内フローラの改善で痩せる?
彼女と同じ学生寮で同じ食べ物を食べているのに、どうして私は痩せないの?食事が同じでも痩せる人もいれば、太る人がいるのは何故でしょう?今回は、腸内細菌と肥満との間に関係を先駆的に証明した米国ワシントン大学のターンバーグ博士らの論文を紹介します。痩せたいのに食べてしまう、そんなあなたの悩みも、腸内環境における腸内フローラの改善の研究が進めば解消される日が来るかも。
ノロウイルスの感染時期が冬の季節に多いのは牡蠣を食べるからではない
細菌性食中毒は初夏から秋にかけての季節で発生件数がピークとなります。これは気温が高くなることによって食中毒細菌が食品中で増殖しやすくなるからです。ところがノロウイルス感染症の場合は冬に流行します。なぜでしょうか?冬に牡蠣を食べるから?低温で感染力が高まる?科学的データが不足しており、不明でした。 今回紹介する論文は、ひとつの回答を提示した論文です。
ノロウィルスの排出期間や感染力は無症状な調理従事者でも感染者と同じなので、うつる可能性あり
ノロウィルスに感染した健康で無症状の調理従事者(不顕性感染者)からもノロウィルスがうつる可能性があり、感染経路になり得ます。 不顕性感染者 の便中のウイルス濃度や排出量や排出期間、およびその個々の変動に関する体系的な研究は現時点で十分に行われているとは言いません。そこで、オランダの疫学調査研究部門のテウニス博士らの研究を紹介します。
冷凍イチゴを感染経路としたドイツ児童の大規模食中毒事例
ノロウィルスの食中毒といえば、日本においては2017年に刻み海苔で全体で2,000名を超える患者が発生した大規模な食中毒が記憶に新しいところです。ところで海外でノロウイルスによる大規模食中毒事例といえば、2012年にドイツの小学生や幼稚園の児童1万人以上が中国から輸入した冷凍イチゴによって集団感染した事例が有名です。この食中毒はドイツ史上最悪の食中毒となってしまいました。
ノロウィルスの腸内感染メカニズムに腸内細菌が役割を果たしている
前回、ノロウィルスの人工培養が世界で初めての成功例の論文を紹介しました。実は、この論文の前にも、ノロウイルスの培養や感染機構に関して重要な論文があります。今回紹介する論文で用いた細胞は腸管上皮細胞でははく、免疫をつかさどるB細胞です。
ノロウィルス感染メカニズムや予防・治療研究の悲願ーノロウィルスの培養
ノロウィルスの感染メカニズムの解明や予防・治療方法の確立(薬の開発など)にはまずはノロウィルスが培養できることが不可欠です。2016年の8月、ノロウィルス研究におおきな進展が見られました。これまで培養できないと考えられていたノロウィルスの培養に成功したニュースが世界を駆け巡りました。