基礎講座-HACCPと微生物検査
食品の微生物検査の目的と精度計算法をわかりやすく説明します

 食品の微生物検査の目的を正しく理解し、その精度について理解しておく必要がある。微生物検査ではどれぐらいの確率で正しく汚染食品を検出できているのだろうか。例えば汚染率10%の食品サンプルをn=3で微生物検査をした場合に、偽陰性の結果を出してしまう確率は?あるいは、汚染率10%の食品サンプルを95%の精度で分析するためには何サンプル分析すればいいのか。本記事では、これらの算出を自分でExcel計算できるようになるために、分かりやすく、順を追って解説する。

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HACCPと微生物検査
出荷時の食品の微生物検査はどこまで役立つの?

食品製造工場で生産される食品(最終製品)の微生物検査の目的は何でしょうか?どこまで信頼できるのでしょうか?食品ごとに設定された微生物規格基準をクリアしていることの確認は勿論、必要です。しかし、自主検査において、食品の中にも最終製品の微生物検査がある程度有効なものと、ほとんど有効性が期待できないものがあります。では、どのような食品で有効で、どのような食品ではあまり有効ではないのでしょうか?本記事では、これを科学的に検証した論文を紹介します。著者は、国際食品微生物規格委員会(ICMSF )の議長(2022年5月現在)、ツヴィエタリング(Zwietering)博士です。

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基礎講座-HACCPと微生物検査
HACCP導入により微生物検査は必要なくなるの?どの微生物検査が残るの?

HACCP義務化の背景には、工程管理により微生物検査を減らしていくという考え方がある。分布及び存在量の少ない危害微生物のリスク判定に、最終製品の数少ないサンプルを抜き打ち検査しても、安全性を担保出来ないからである。では、HACCP導入により微生物検査は必要なくなるだろうか?微生物規格基準を証明する検査以外に、どのような微生物検査が残るのか?本記事ではHACCPに基づく衛生管理における微生物検査の在り方の基本事項について整理する。

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■ 世界最新ニュース
フランスで発生した冷凍ピザによる腸管出血性大腸菌アウトブレイク

2022年3月から4月にかけてフランス全土で冷凍ピザによる腸管出血性大腸菌感染が発生しました。2022年4月25日現在、55人の患者が確認されています。ほとんどの患者は子供たちです。溶血性・尿毒症症候群(HUS)注)も多くの子供たちが発症し、死者も2名出ています。また意識不明の植物状態の子供たちもいて、現在フランス全土で大きな心配時となっています。世界最大の食品・飲料会社のネスレ社の傘下のブイトーニ社の冷凍ピザが原因であると当局は推定しています。現在フランス公衆衛生当局によりついてこの工場の衛生管理状態について調査中です。

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微生物食中毒全般
ポイントカード利用で腸管出血性大腸菌アウトブレイクの原因究明(フランス)

 食中毒菌の原因食品の追求の疫学調査は、患者の聞き取り調査記憶によって実施されます。しかし、食中毒にかかるまでに日数が経っていたり、さまざまな食品を、大量に消費していたりする消費者の記憶を辿ることはしばしば困難です。そこで消費者履歴を正確に記録しているポイントカードを使う試みが 行われ始めています。本記事では、ポイントカードを使って腸管出血性大腸菌の原因食品を究明したフランス国立公衆衛生庁の事例を紹介します。

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薬剤耐性菌
海外旅行を通じて広がる薬剤耐性菌

薬剤耐性菌の世界への広がりに、海外旅行がどのくらい影響しているのでしょうか? オランダのアルシア博士らは、オランダからの海外旅行者が海外渡航中に薬剤耐性菌(ESBL産生菌)をどのぐらい獲得するかについて調べました。その結果、旅行者は世界規模で薬剤耐性菌の出現と拡散の大きな要因と考えられると結論しています。

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基礎講座ー食品の加熱殺菌
食品の水分活性と加熱殺菌時の微生物の耐熱性の関係

低水分活性食品中では加熱殺菌時における微生物の熱耐性が上昇する。したがって、これらの食品の加熱には注意が必要である。水分活性を下げると、どのぐらい微生物のの耐熱性は上昇するのだろうか?本記事は、食品の水分活性が微生物の耐熱性及ぼす影響についてまとめる。

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■ 世界最新ニュース
チョコレートを原因とするサルモネラ菌食中毒がヨーロッパで発生

チョコレートによる細菌性食中毒はほとんど起きません。しかし、2022年4月に、チョコレートによるサルモネラ菌の多国間アウトブレークがヨーロッパで発生しました。子供向けのチョコレート(イタリアの食品会社フェレロのキンダーチョコレート製品)によって、EU9か国とイギリスで合計、約150人の子供たちがサルモネラ菌に感染しましています。同社のベルギー工場から出荷されたチョコレートが原因です。本記事は欧州食品安全機関と欧州疾病予防管理センターが2022年4月12日に発表した中間報告の内容を紹介します。

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サルモネラ
チョコレートを原因とするサルモネラ菌の食中毒リスク

チョコレートは微生物学的には安全性が高い食品です。ほとんどの製品は水分活性が低いため、常温で数ヶ月から1〜2年保存が可能です。しかし、別記事で紹介しているように(2022年4月に、ベルギー工場で生産されたチョコレートを原因とするサルモネラ菌食中毒がEUで発生)、サルモネラ菌による食中毒が稀に発生することがあります。なぜチョコレートでサルモネラ食中毒菌が起きるのでしょうか?これまでにもチョコレートによるサルモネラ菌食中毒が起きていたのでしょうか?この記事は、チョコレートにおけるサルモネラ菌食中毒のリスクについてまとめます。

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■ 世界最新ニュース
欧州食品安全機関(EFSA)は食品の高圧処理(HPP)の効果について評価書を発行しました

 食品の高圧処理は、食中毒の原因や食品を腐敗させる微生物を死滅させる非加熱の食品保存技術です。高静水圧処理(HHP)または超高圧処理(UHP)とも呼ばれています。2022年3月8日に欧州食品安全機関(EFSA)は高圧加工食品の安全性と効果、特に、調理済み食品(RTE)中のリステリア菌の減少に使用できるかどうか、生乳の加熱殺菌の代替法として使用できるかどうかについて、評価書を公開しました。

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