米国で、生の小麦粉生地を原因とするサルモネラ食中毒が再発しています。以前にも当ブログでは生のクッキー生地によるサルモネラ食中毒や腸管出血性大腸菌の問題について触れてきましたが、今回、再度、食中毒がおきてしまいました。米国での生のクッキー生地の摂取に対する注意喚起は、まだまだ必要なようです。

クッキーの生地を生で食べて、主婦が腹痛になってる写真

今回のアウトブレークの概要

2023年5月23日のCDCが発表したところによると、2023年5月23日現在、アウトブレイク株のサルモネラ菌に感染した18人が6つの州から報告されています。発病者は2023年2月27日から2023年5月2日までの日付で発生しています。

 患者の年齢は14歳から68歳で、中央値は47歳、83%が女性です。人種または民族の情報が入手可能な14人のうち、全員が非ヒスパニック系白人と報告しています。情報が入手できる14人のうち、2人が入院していますが、死亡の報告はありません。

 州および地域の公衆衛生担当者は、食中毒になる前の1週間に食べた食品について聞き取り調査を行っています。聞き取り調査した14人のうち、12人がPapa Murphy'sの食品を食べたと報告しました。9人がパパ・マーフィーの生のチョコレートチップクッキー生地または生のスモアバー生地を食べ、1人がパパ・マーフィーのチョコレートチップクッキー生地で作った焼きクッキーを食べたと回答しています。

クッキーの生地は焼かないとダメだと患者に叱っている医者。

上記CDCの調査結果を受け、米国農務省(USDA)は2023年5月23日にHPで次のように呼びかけています。

  • 販売業者:パパ・マーフィーのチョコレートチップクッキーやスモアバーを販売したり、提供したりしない。
  • 消費者:パパ・マーフィーのチョコレートチップクッキーやスモアバーの生地を食べない。消費者は冷蔵庫や冷凍庫にパパ・マーフィーのクッキーやスモア・バーズの生地がないか確認し、捨てるべきである。

クッキー生地を原因とするサルモネラ食中毒は2023年3月にも起きています。なぜ小麦粉を原因とするクッキー生地がサルモネラに汚染され食中毒の原因になるかについての詳しい解説は、下記の記事をご覧ください。

【要注意】生の小麦粉生地でサルモネラ食中毒が発生!(米国事例)

また、同様に生のクッキー生地では、腸管出血性大腸菌による食中毒も来ています。事件のの解説については次の記事をご覧ください。

腸管出血性大腸菌O157感染症の感染経路としての小麦粉を使ったクッキーの生地

クッキーの生地に限らず、小麦粉については、畑にある間に穀物の汚染によりサルモネラや大腸菌の汚染が可能性のある食品です。また、これらの小麦粉の製造過程において加熱殺菌処理がされていないことから、小麦粉を使った製品は生で食べてはいけないということです。

小麦畑にはサルモネラや大腸菌の混入の可能性を示すイメージイラスト

また、以上のような生の小麦粉によるサルモネラや腸管出血性大腸菌食中毒事件を背景に、米国ではパン工場のHACCPの監査において、これらの微生物を危害微生物に認定するように指導しているようです。詳しくは本ブログの下記の記事をご覧ください。

HACCP管理者が学ぶ米国FDAの警告シリーズ❶:A社(パン製造工場)