基礎講座ー食品微生物学の基礎
グラム陰性菌の整理に必要なOF試験判定

  食品微生物検査において、分離した細菌がグラム陰性桿菌である場合、次に重要な判断は、好気性細菌か通性嫌気性菌の判定である。好気性細菌か通性嫌気性菌の判定の簡便法としてOF試験(Oxidation Fermentation test)がある。本記事では、OF試験の原理や判定方法についても述べる。また、OF試験結果が食品微生物検査に持つ意味についても解説する。

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一般生菌数や衛生指標菌
食品の大腸菌群検査の意義や基準に対して米国でも疑問の声あり

世界の食品微生物分野での大腸菌群の検査は、今後、消えていくかもしれません。現在、日本では、多くの食品の衛生基準に大腸菌群が入っています。国際的な微生物規格基準を設定しているコーデックスでは、確かに伝統的に食品衛生の指標として大腸菌群を用いてきた(コーデックスにおいては、現時点でも大腸菌群の基準が一部の食品において残っている)。しかし、 すでにEUでは食品の検査に大腸菌群は用いられていません。その代わり、大腸菌(Escherichia coli)および、腸内細菌科菌群の検査が採用されています。 日本以外の主な国は、例えば、米国や南米の一部の食品(乳製品等)で大腸菌群の基準があります。また、韓国でも日本と同様に多く食品の衛生基準に大腸菌群が設定されています。しかし、最近、米国やブラジルでも、乳製品業界や大学識者から疑問の声があがっています。本記事では、それらのいくつかの例を紹介します。

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基礎講座ー微生物の増殖条件とその制御
オキシダーゼ試験の仕組み-グラム陰性菌、特に腸内細菌科菌群の検査法として重要

本記事では、 オキシダーゼ試験(オキシダーゼテスト、シトクロームCオキシダーゼ試験、もしくは、チトクロームCオキシダーゼ試験などの別称あり) とは何か、この試験でわかること、その原理や試験方法(擬陽性などの注意事項含む)、グラム陰性菌で本試験結果が陽性や陰性だった場合の食品衛生学的意義、特に生食用食肉 規格基準に採用されている腸内細菌科菌群の検査法としての重要性、などについて解説する。

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■ 世界最新ニュース
米国とドイツの食品安全に対する消費者意識基本調査-食品微生物学の視点でピックアップ (ニュース)

  先週立て続けに、米国FDAとドイツ連邦リスク評価研究所から、食品安全に対する消費者意識基本調査の結果が公表されました。以下に、特に食品微生物学の観点から、サルモネラ、大腸菌、カンピロバクター、リステリアなどの食中毒菌に対する消費者の認知度などを中心に、要点をピックアップします。

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■ 世界最新ニュース
米国野菜サラダでのリステリア菌の混入によるリコール(ニュース)

 10月29日米国 FDA の発表によると、米国の10の州で袋入りサラダのリステリア菌(Listeria monocytogenes)の混入によるリコールが行われています。Dole Fresh Vegetables、Incは、ジョージア州の農業省が実施したランダムサンプルテストでリステリア菌の自社サラダ製品に陽性結果が出たため、10月29日に4つのブランドの袋入りサラダ製品をリコールすることを決定しました。

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基礎講座ー食品微生物学の基礎
グラム陰性菌とグラム陽性菌の特徴、違い、種類を整理する微生物分類方法(食品微生物学整理箱)

最近は 16srrna遺伝子解析に基づく種の同定が 盛んになっている。その結果、細菌の分類が微細かつ複雑になってきた。しかし食品微生物学の分野では、詳細な分類を行う前に、頭の中で大きな枠組みを理解しておくことの方が重要である。この記事以降、数記事にわたり、食品微生物学の中で登場する各種グラム陰性菌やグラム陽性菌の種類や特徴の整理・覚え方に便利な微生物分類方法、すなわち、頭の中の食品微生物学整理箱をについて述べたい。グラム陽性菌とグラム陰性菌とでは、頭の中で整理しておくべき整理箱の構成が少し違う。これらの枠組みを頭の中に入れておくと便利である。

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■ 世界最新ニュース
米国の食中毒発生状況ーもう1つのサルモネラ菌食中毒の原因食品はサラミソーセージ(ニュース)

ここ数週間では、米国で最も関心事のある食中毒事例は先記事お伝えしたメキシコから輸入された玉ネギによるサルモネラ菌広域食中毒です。一方で、発生件数は少ないですが、現在、複数州で、サルモネラ菌食中毒が米国では発生しています。最初の報告は9月18日にはじまり、現在までに8州で合計21人が感染し3人が入院しています。患者の大半が18歳以下の若者です。発熱、嘔吐、下痢などの症状が出ても、 医者にかからない患者が多数想定され、 CDC は実際の患者はこの数字もよりもはるかに高いと推定しています。

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基礎講座ー微生物の増殖条件とその制御
保存料「ナイシン」について

前記事では、日本で広く用いられている保存料や日持向上剤について記した。本記事では、ソルビン酸やしらこなどのように、日本では保存料表示義務のある食品添加物のナイシンについて解説する。ナイシンは、乳酸菌同士の抗菌作用として用いられる天然抗菌剤のバクテリオシンの一つである。ポリカチオンペプチドの一つであり、体への影響や体に悪いというデータはなく、過去40年間にわたり食品の保存の目的で全世界で広く使用されている。

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■ 世界最新ニュース
米国のサルモネラ菌による大規模食中毒の原因食品と感染経路がようやく分かった!メキシコから輸入の玉ねぎが原因か?(ニュース)

ここ数ヶ月間、全米各州でサルモネラ菌による原因不明の胃腸炎が発生していました。この大規模食中毒の原因と感染経路がようやく解明されつつあります。まずは食中毒の規模ですが、 CDC の10月23日時点での発表によると、全米にまたがるサルモネラ菌による大規模食中毒は、全米37州で652件であり、入院患者は129人に上るとしています。今回の大規模食中毒は、ここ一か月間、原因不明のサルモネラ中毒と米国では報道されてきていました。しかし、この度ようやく CDCとFDA がその原因を特定しつつあるようです。

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■ 世界最新ニュース
食中毒菌サルモネラ菌の感染力を逆手にとって、癌の最新治療法として利用(論文)

食中毒菌のサルモネラ菌の感染力を逆手にとって、サルモネラ菌を正義の味方に使う論文が,2021年10月21日にネイチャーコミュニケーションに出版されました。サルモネラ菌を癌治療に使おうというものです。 マサチューセッツ大学アマースト校の研究グループの研究です。

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