米国でまたピーナッツバターによるサルモネラ食中毒が発生しました

 米国でピーナッツバターによるサルモネラ食中毒が発生しました。2022年5月25日現在、12州から合計16人のSalmonella Senftenbergのアウトブレイク株への感染が報告されています。これまでに、米国では2006年から2012年にかけて、3回もピーナッツバターによるアウトブレイクが発生しています。当時のオバマ大統領がテレビ出演し、繰り返されるアウトブレイクを防げないFDAを非難したことでも知られています。あれから10年、またしても、ピーナッツバターによるサルモレラ食中毒が繰り返されました。

今回の事件の概要

 2022年5月25日現在、CDCの報告によると、2022年5月25日現在、12州から合計16人のサルモネラSenftenbergのアウトブレイク株への感染が報告されています。発病者は、2022年2月19日から2022年5月2日までの日付で発生しています。病人の年齢は1歳未満から85歳までで、年齢の中央値は51歳、73%が女性です。情報がある9人のうち、2人が入院しています。死亡者は報告されていません。

 米国FDAも、CDCおよび州や地域の公衆衛生機関と協力して、サルモネラ食中毒の原因について調査中です。

 州および地域の公衆衛生担当者は、病気になる前の1週間に食べた食品について聞き取り調査を行っています。インタビューを受けた10人のうち、10人(100%)が発病前にピーナッツバターを食べたと報告しています。9人全員(100%)がJ.M. Smucker Companyブランドピーナツバター製品を食べたと報告しています。

ピーナッツバターでは腹痛を起こしている中年の女性。

 対象となったピーナッツバター製品(約50種類)はすべて、ケンタッキー州レキシントンにあるJ.M. Smucker Companyの工場で生産されたものです。J.M. Smucker Company は、 Jif ブランドのピーナッツバター製品を自主回収しました。

全米にわたるピーナッツバターによるサルモネラ食中毒

 

 このブランドのピーナッツバターは、米国以外に世界各地に輸出されています。世界各国でこの製品のリコールが始まってています。日本にもこの製品が輸出されているようです。通販サイトなどで販売されているようです。

次世代シークエンサー全ゲノム解析により過去の工場からの分離株と一致

 この会社のブランドのピーナッツバターがサルモネラ食中毒の原因食品として浮上してきたきっかけは、患者の 聞き取り調査によるものでです(10人中9人の患者がこの会社のピーナッツバターを食べていました)。しかし、ここで注目すべきは、今回の患者分離株が12年も前にこの会社の工場の任意の検査で分離されたサルモネラ菌の全ゲノムと比較された点です。今回この会社が原因食品として疑われたあと、2010年にJ.M.Smucker社の施設で採取された環境サンプルについて、全ゲノム配列の解読が行われました。

解析の結果、この2010年のサンプルは、今回のアウトブレイクで疾病を引き起こしている菌株と一致することがわかりました。


サルモネラの全ゲノム配列が工場分離株と臨床株で一致した

 現時点で、患者の聞き取り調査の結果、および12年前にこの工場から分離されたサルモネラ菌の臨床株の全ゲノム配列が一致していることから、ケンタッキー州レキシントンの J.M. Smucker Company 施設で製造された Jif ブランドのピーナッツバターが、今回のアウトブレイクで疾病を引き起こした原因である可能性が高いとCDCは推定しています。調査は現在進行中であり、詳細な情報は随時提供される予定です。

ピーナッツバターによるサルモレラ食中毒は過去にも3回米国でおきている。

 ところでピーナッツバターに関しては、米国では過去に3回もサルモネラによるアウトブレイクを起こしています。過去のアウトブレイクの詳細な解説は下記の別記事で以前に増とめていますのでご覧ください。当時の、大統領だったオバマ大統領がテレビ出演し、繰り返されるアウトブレイクに対してFDAに注文をつけたほどです。

ピーナッツバターとサルモネラ菌食中毒

繰り返されるピーナッツバターによるサルモネラ食中毒にクレームをつけるオバマ大統領

ピーナッツバターのサルモネラ食中毒リスク

ピーナッツバターの製造工程

 さて、なぜピーナッツバターでサルモネラ食中毒が起きるのでしょうか?今回の事件についてはまだ調査中で原因はまだ分かっていません。以前に米国で起きたピーナッツバター食中毒に関しては、上に示した別記事で、その原因究明について解説していますので、ご覧ください。

 ここでは簡単に、大まかにピーナッツの製造工程でのリスクを整理すると、次の通りとなります。

  • ピーナッツバターの原料のピーナッツ自体には、サルモネラ菌の汚染の可能性があります。原料のピーナッツが保管されている状態で、鳥の糞や動物などの接触によって、サルモネラ菌の補選が起きる可能性があります。
  • ピーナッツバターを作る際には、ピーナッツのロースト工程が入りますこの工程でサルモネラ菌は完全に死滅すると想定できます。
  • したがって、ロースト工程以降で、サルモネラ菌が混入する可能性が最もリスクの高いポイントだと想定できます。ローストしたピーナッツバターは、適切な衛生手順が守られないと、加工工場で汚染される可能性があります。


  すなわち、ピーナッツバターの製造工場においては、サルモネラ菌の二次汚染を防ぐための、工場環境における衛生管理が重要な管理ポイントとなります。

工場でのバイオフィルムとして長く住みつく

 ところで、今回のアウトブレークでは12年も前(2010年)に工場で分離されたサルモネラ菌株が今回のアウトブレイクの臨床株と全ゲノム配列が一致しました。これは何を意味するでしょうか?

 もちろん現時点ではまだ調査が始まったばかりですので、12年前から今回のアウトブレイク原因株が工場に住み着いていたと断定するわけにはいきません。しかし、サルモネラ菌は工場でバイオフィルムとして。長らく生きながらえる可能性があります。このことを解説した記事は下記の記事ですので、ご覧ください。

サルモネラ菌の食品製造工場の乾燥ステンレス上での生存期間は?

工場に長年棲みつくサルモネラ菌

低水分活性食品中で長く生存


 ピーナッツバターは水分活性が0.35以下なので、細菌が増殖することはまずありません。サルモネラはピーナッツバターの中では増殖できませんが、製品に入り込めば何ヶ月も生き延びることがで可能です。ピーナッツバターにサルモネラを植菌させて生存実験では、6ヶ月間もサルモネラ菌が生存できることを示すデータも提示されています。

ピーナッツバターの中で長らく生存できるサルモネラ菌