基礎講座ー食品微生物学の基礎
酵母とカビについて

本記事では、食品微生物学において細菌以外の重要な微生物である酵母とカビついて説明する。いずれも細菌のような原核生物よりは高等な生物であるが、どちらも進化の袋小路に入ってしまった。従属栄養にもかかわらず、植物のような細胞壁を形成してしまったために、動物のような発展を遂げることができなかった。また、本記事ではこれらの酵母、カビのの食品微生物学的な観点からの位置づけや意義についても述べる。

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■ 世界最新ニュース
腸管出血性大腸菌(STEC)の血清型O157中心検査はもう古い?(論文)

腸管出血性大腸菌の検査については、過去20年間、血清型O157を中心に検査が実施されてきました。しかし、腸管出血性大腸菌の食中毒はO157に限定されず、他の多くの血清型によってもおきていることが過去10年間の食中毒事例で明らかとなってきました。現在、各国の衛生機関で中心的に行われている血清型O157を中心とした検査は時代遅れになりつつあります。本記事ではこれに関連した論文を紹介します。

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基礎講座ー食品微生物学の基礎
乳酸菌(特に食品の腐敗細菌として)

 食品産業においては、ヨーグルトや発酵食品などで活躍する善玉菌だけでなく、食品の腐敗変敗細菌として問題となる変敗乳酸菌の問題が多い。この記事では、食品の腐敗でさまざまな問題を起こす乳酸菌の問題について重点的に説明する。

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基礎講座ー指標細菌
大腸菌とは何か、大腸菌群とは何か

本記事では、まずは、大腸菌とは何か、大腸菌群とは何か、 両者の違い、これらの微生物の定義、どこにいるのか、食中毒菌なのか、死滅しやすいのか、体内に入るとどうなるのか、腹痛を起こすのか、 などなどの初心者の疑問が一括して解決できるように説明を加えたい。一方、少し踏み込んで、 環境での生存、検査方法、食品で大腸菌菌群が検出されることの意味、国内と海外の大腸菌や大腸菌群の微生物規格はどう違うのか、食品衛生法上の位置づけや問題点、についても説明する。

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基礎講座ー食品微生物学の基礎
食品中の一般生菌数の目安や基準値の理由、データの読み方を理解する

この記事では、食品中の一般生菌数の目安や基準値の理由、データの読み方を理解することを目的とする。新鮮な食品や腐敗した食品、糞便、あるいは空気中にどれぐらいの数の微生物がいるのか?このような私たちの身の回りの微生物数に関する基本的な理解がないと、一般生菌数の測定結果の解釈で、思わぬ落とし穴に落ちる可能性がある。

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基礎講座ー食品微生物学の基礎
培地成分の読解力の必要性

 本基礎講座では、グラム染色の重要性の一連の記事で、グラム陽性菌は疎水性官能基を持った化合物に弱く、 グラム陰性菌は強い、ということを説明してきた。 この理解は、食品微生物の検査培地の成分の読解力にも関連してくる。 本記 […]

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基礎講座ー食品微生物学の基礎
グラム陽性菌と陰性菌の棲家の違い、特徴、覚え方のまとめ

前記事までに、グラム陽性菌とグラム陰性菌の特徴と、これらの食中毒菌としての特性を一つの流れとして理解するために説明をした。グラム陰性菌は物理的ストレスに弱いが化学薬剤には強いこと、グラム陽性菌はその逆で物理ストレスには強いが化学ストレスには弱いことを説明した。また、これまで、感染型食中毒細菌のほとんどはグラム陰性菌であると説明してきた。本記事ではそれらをまとめて整理する。

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基礎講座ー食品微生物学の基礎
グラム陽性菌と陰性菌の特徴ー感染型食中毒と毒素型食中毒

グラム陽性菌とグラム陰性菌の違いは、食中毒菌としての側面でも関連してくる。食中毒菌は毒素型食中毒菌と感染型食中毒菌に2分できる。毒素型食中毒菌とは、菌が作り出す毒素が食品中に蓄積して、ヒトがその毒素を摂食して発症する食中毒である。一方、感染型食中毒菌の場合、ヒトに危害をあたえるのはあくまでも菌自身である。菌自身がヒトの口→胃→腸管へと侵入し、最終的に腸管粘膜上皮細胞から体内に侵入しようとする攻防の結果、発熱や下痢を引き起こす。

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基礎講座ー食品微生物学の基礎
グラム陽性菌と陰性菌の特徴ー化学物質に対する耐性の違い

グラム陽性菌と陰性菌の細胞表層構造の違いは、細菌の化学物質に対する耐性の違いにも直結する。大まかに述べると、グラム陽性菌は化学物質に弱く、陰性菌は強い。陰性菌では外膜のリポ多糖がさまざまな化学物質の侵入を防ぐバリアーとして働く。一方、陽性菌の持つ細胞壁は分厚く、物理的には強固であるが、実は、構造上、スカスカであり、化学的バリアーとしては、ほとんど役に立たないといってよい。

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基礎講座ー食品微生物学の基礎
グラム陽性菌と陰性菌ー構造の違い

本記事では、グラム陽性菌と陰性菌の細胞構造の特徴と違いについて簡単に述べておきたい。構造の基本的理解が、これら2種類の細菌の生息環境、性質、食品衛生上の管理の観点に密接に関連してくるので、要点だけ簡単の述べておく。厚いペプチドグリカン層の細胞壁を持つグラム陽性菌は、グラム染色液で強く染まる。一方、薄いペプチドグリカン層しか持たず、その代わり、細胞壁の外側が粘膜多糖で覆われているグラム陰性菌はあまり強く染まらない。

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