■ 過去20年間の注目論文
野菜や果物の洗浄と除菌方法として注目される超音波洗浄
超音波洗浄の原理を用いた野菜洗浄機が最近注目されています。野菜や果物に付着したサルモネラや腸管出血性大腸菌などの病原微生物を除去するためです。ブラジルのヴィソーザ連邦大学のジョセ博士らは、ミニトマトからのサルモネラ菌の除去の目的で、超音波洗浄機による洗浄に ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、過酸化水素、二酸化塩素、および過酢酸などの殺菌剤を併用し、その併用効果を検討しました。
サルモネラ菌はどのようなメカニズムで植物の葉っぱの内部に侵入するのか?
前記事で、サラダや野菜を感染経路とするサルモネラ食中毒の原因として新鮮な植物の葉っぱにサルモネラ菌が気孔を通じて侵入するという事例を紹介しました。ではサルモネラ菌は一体どのようなメカニズムで植物の葉っぱの気孔を通じて侵入するのでしょうか?今回紹介する論文はその疑問に対する答えを提示してくれる論文です。前記事で紹介した論文と同じグループで、イスラエル農業研究機構ゴルバール博士らの研究グループの仕事です。
野菜の洗浄や殺菌で要注意!植物の葉の内部に侵入し生存・汚染するサルモネラ菌
サラダや野菜に汚染したサルモネラ菌食中毒が頻繁に世界で起きています。収穫した野菜の洗浄や殺菌は重要な対策です。しかし、このような洗浄や殺菌処理にもかかわらず、近年、新鮮または最小限に加工された葉物野菜の消費に関連したサルモネラ菌の食中毒が頻繁に報告されています。ここで重要なのはサルモネラ菌が野菜の表面だけではなく組織の内部に入り込んでしまうという現象です。
乾燥したサルモネラ菌のバイオフィルム細胞は熱処理、紫外線や各種薬剤・殺菌剤抵抗性を示すが、有機酸では死滅しやすい
本記事は、食品の工場などで長らく生存した細胞、すなわち乾燥に耐えたサルモネラ菌のバイオフィルム細胞が、 熱処理や各種の殺菌剤に対して強い抵抗性を示すが、有機酸では死滅しやすいことを実験的に示した論文を紹介します。イスラエル国立農業研究機構のグルズデブ博士らの実験です。
サルモネラ菌の食品製造工場の乾燥ステンレス上での生存期間は?
これまで一般的には、乾燥した低水分活性食品(aw 0.85以下)は、微生物学的安全性に関してほとんど懸念されていませんでした。ただし、サルモネラ菌に関しては、過去20年間、穀物、種子、ナッツ、チョコレート、ドライフルーツと野菜、乾燥乳製品、スパイス、サラミ、茶など、水分活性の低い多くの食品でサルモネラ菌食中毒が起きています。
お客様のポイントカードのデジタル情報を利用した食中毒の発生原因の疫学調査(米国)
AIや電子情報、デジタル情報を食中毒事件の原因菌や原因食品の解明などの原因究明に活用できないでしょうか?今回はその例を紹介します。お客様のポイントカードの履歴のデジタル情報を食中毒事件の疫学調査に活用した事例です。
原因究明が困難な市販野菜によるサルモネラ菌広域食中毒の原因究明事例
広域食中毒発生時に原因食品やこれらの食品の汚染ルートを疫学調査で解明することは、そう簡単な仕事ではありません。特にキュウリやレタスなどの一般野菜などが原因の場合は流通ルートが広範すぎて、原因究明は困難を極めます。今回紹介する論文は、米国の複数の州にまたがるキュウリに起因するサルモネラ菌による広域食中毒の事件解明の概要をまとめたものです。2014年の事例です。
食中毒の原因菌ごとの患者数ランキングの推定(米国)
1国の食中毒患者数(罹患者数、入院者数、死者数)の総数や事件数ランキングを推定することは、そう簡単なことではないようです。今回紹介する論文は、 米国疾病予防管理センターのスキャラン博士らのグループが、食中毒統計における統計資料、能動的サーベイランス、受動的サーベイランスおよびその他のデータから、原因菌ごとに米国でおきている食中毒患者数の推計を行ったものです。
サラダ及び生野菜による細菌性食中毒統計(米国)
今回は、サラダおよび生野菜が起こすノロウィルス、腸管出血性大腸菌、サルモネラ菌による食中毒事件について米国CDC のハーマン博士らがまとめた総説を紹介します。この総説は、 1973年から2012年の間に米国のCDCに報告された生野菜を起因とする食中毒事例を統計的にまとめたものです。
サルモネラ菌の血清型を次世代シークエンサーで決定ー英国では2015年からin silico MLST法を導入しています
サルモネラ菌の血清型の検査は感染経路を知るうえで重要です。しかし、これは大変な作業です。血清型を遺伝子配列によって決めることができればとても便利ですね。実はサルモネラ菌においてはそれが可能になりました。英国公衆衛生庁(PHE)は2015年から次世代シークエンサーを利用して、サルモネラ菌のin silico MLSTによって決める方法を導入しています。今回はそれに関する論文を紹介します。