■ 過去20年間の注目論文
腸管出血性大腸菌感染の後遺症
新型コロナウイルス感染症の後遺症が心配されています。食中毒細菌感染の場合はどうでしょう?食中毒感染の場合には感染しても、治癒後は後遺症は残らないと考えている人も多いのではないでしょうか?しかし、そうでもないことを示す論文をこの記事では紹介します。腸管出血性による胃腸炎後の後遺症(高血圧、心疾患、腎臓病)に関する論文です。
出荷時の食品の微生物検査はどこまで役立つの?
食品製造工場で生産される食品(最終製品)の微生物検査の目的は何でしょうか?どこまで信頼できるのでしょうか?食品ごとに設定された微生物規格基準をクリアしていることの確認は勿論、必要です。しかし、自主検査において、食品の中にも最終製品の微生物検査がある程度有効なものと、ほとんど有効性が期待できないものがあります。では、どのような食品で有効で、どのような食品ではあまり有効ではないのでしょうか?本記事では、これを科学的に検証した論文を紹介します。著者は、国際食品微生物規格委員会(ICMSF )の議長(2022年5月現在)、ツヴィエタリング(Zwietering)博士です。
ポイントカード利用で腸管出血性大腸菌アウトブレイクの原因究明(フランス)
食中毒菌の原因食品の追求の疫学調査は、患者の聞き取り調査記憶によって実施されます。しかし、食中毒にかかるまでに日数が経っていたり、さまざまな食品を、大量に消費していたりする消費者の記憶を辿ることはしばしば困難です。そこで消費者履歴を正確に記録しているポイントカードを使う試みが 行われ始めています。本記事では、ポイントカードを使って腸管出血性大腸菌の原因食品を究明したフランス国立公衆衛生庁の事例を紹介します。
海外旅行を通じて広がる薬剤耐性菌
薬剤耐性菌の世界への広がりに、海外旅行がどのくらい影響しているのでしょうか? オランダのアルシア博士らは、オランダからの海外旅行者が海外渡航中に薬剤耐性菌(ESBL産生菌)をどのぐらい獲得するかについて調べました。その結果、旅行者は世界規模で薬剤耐性菌の出現と拡散の大きな要因と考えられると結論しています。
チョコレートを原因とするサルモネラ菌の食中毒リスク
チョコレートは微生物学的には安全性が高い食品です。ほとんどの製品は水分活性が低いため、常温で数ヶ月から1〜2年保存が可能です。しかし、別記事で紹介しているように(2022年4月に、ベルギー工場で生産されたチョコレートを原因とするサルモネラ菌食中毒がEUで発生)、サルモネラ菌による食中毒が稀に発生することがあります。なぜチョコレートでサルモネラ食中毒菌が起きるのでしょうか?これまでにもチョコレートによるサルモネラ菌食中毒が起きていたのでしょうか?この記事は、チョコレートにおけるサルモネラ菌食中毒のリスクについてまとめます。
オゾン水は手の消毒にアルコールと同じ殺菌効果があり、手荒れが無い
現在、療現場で手指の消毒として使用される主な消毒方法は、石鹸とアルコールです。石鹸やアルコールに対して敏感な人の手指の肌荒れの原因にもなっています。この記事ではアルコール殺菌と同等の効果を持つオゾン水の効果を示した論文を紹介します。オゾン水はアルコールと異なり、手荒れが少ないこともデータが示しています。
鶏肉由来の薬剤耐性菌はヒト腸内菌に薬剤耐性遺伝子をプラスミド伝播により伝える
薬剤耐性菌が養鶏場での飼育管理の環境で出現し、それが市販鶏肉に汚染しています。ここで疑問なのは、鶏肉由来の抗生物質耐性菌が人体に入った場合、人体にもともと住んでいる感受性菌に抗生物質遺伝子を移すか否かということです。今回紹介する論文は、人のボランティア実験を用いてこのことを証明した実験例です。
空気感染や人から人へうつる場合もある腸管出血性大腸菌
身近な脅威、それが腸管出血性大腸菌(EHEC)です。食物や水を通じた感染が主ですが、実は驚くべきことに、ヒトからヒトへと直接感染するケースもあります。これは特に保育所での子どもたちの間や、重篤な感染症を看病する家族間で注意が必要です。この人間間の感染はどのような状況で、どれほどの確率で起こるのでしょうか?本記事では、この特異な感染経路とともに、保育所や家庭での具体的な感染事例を紹介します。この記事を通じて、あなた自身、大切な人々、そして子どもたちを予想外のEHECの脅威から守るための知識を得ることができます。
養鶏場のストレス環境と鶏のサルモネラ菌感染の関係
ブラジルは世界最大の鶏肉輸出国です。日本の鶏肉の70%以上はブラジルからの輸入に頼っています。わたしたちが毎日外食レストランや食卓で食べているブラジル産の鶏肉の飼育環境が気になるところです。ブラジルののサンパウロ大学のゴメス博士らは、養鶏場の鶏に過密ストレス(1m2あたり 16羽)を与えた場合の、鶏のに与える生理ストレスとサルモネラ菌への感染の度合いを分析しました。
中国では過去20年間、細菌性食中毒の発生件数第1位は腸炎ビブリオ
日本では過去20年間、腸炎ビブリオの食中毒は激減しています。しかし、世界の事情と、日本の事情は異なるようです。中国では過去20年間、細菌性食中毒の発生件数第1位は腸炎ビブリオです。この記事では、2つのレポートを紹介します。