ノロウィルスの新たな感染経路としての唾液感染
ノロウイルスも含めて、一般に、食中毒の微生物は唾液感染はしないと考えていられています。食中毒微生物は糞便由来で排泄され、食品や人の手指などを通じて、再度、人間に感染します。ところが、 2022年6月29日に発表されたネイチャー誌はこの常識を覆しました。米国国立衛生研究所のゴッシュ博士らは、ノロウィルスは唾液から感染することをマウスモデルで証明しました。
抗生物質が体から抜けるまでと抜けた後に腸内細菌叢にどのような影響を及ぼすか?
私たちは、お医者さんから抗生物質を投与されることがあります。処方された抗生物質が体から抜けるまでと、抜けた後に腸内細菌叢にどのような影響を及ぼすのでしょうか?抗生物質投与中には腸内細菌は全滅してしまうのでしょうか?この記事では、抗生物質(この場合はシプロフロキサシン)に投与する前、投与中、投与後の3人の被験者の腸内細菌叢の組成を経時的に調査した結果を紹介します。
腸管出血性大腸菌感染の後遺症
新型コロナウイルス感染症の後遺症が心配されています。食中毒細菌感染の場合はどうでしょう?食中毒感染の場合には感染しても、治癒後は後遺症は残らないと考えている人も多いのではないでしょうか?しかし、そうでもないことを示す論文をこの記事では紹介します。腸管出血性による胃腸炎後の後遺症(高血圧、心疾患、腎臓病)に関する論文です。
ドイツでは最もリステリア菌感染しやすい食べ物はスモークサーモンである
リステリア菌に汚染されたスモークサーモンおよびグレービングサーモン製品が、ドイツにおけるリステリア症感染の深刻なリスクとなっているようです。ドイツでは、10年の間に20件以上のリステリア症のアウトブレイクがサーモン製品に関連しています。原因食品が特定されなかったアウトブレーク事例も含むと、スモーク魚を原因とするリステリア感染症の件数ははもっと上がるのではないか危惧されています。
中国における妊婦やその他の人々のリステリア菌食中毒と食べ物の関係
中国では、現時点で、リステリア菌によるアウトブレイクは確認されていません。したがって、リステリア菌と食べ物との関係についてほとんど分かっていません。この状況は日本と似ています。しかし、病院レベルの調査ではリステリア感染患者は、妊婦を中心に数多く確認されています。この点も、日本の状況と同様です。このたび、中国人のリステリア菌感染にとって危険な食べ物や食生活習慣の一端が明らかになりました。北京疾病予防管理センターのニウ博士らの報告(2022年2月出版)です。
米国でまたピーナッツバターによるサルモネラ食中毒が発生しました
米国でピーナッツバターによるサルモネラ食中毒が発生しました。2022年5月25日現在、12州から合計16人のSalmonella Senftenbergのアウトブレイク株への感染が報告されています。米国では2006年から2012年にかけて、3回もピーナッツバターによるアウトブレイクが発生しています。当時のオバマ大統領がテレビ出演し、繰り返されるアウトブレイクを防げないFDAを非難したことなどでも知られています。あれから10年、またしても、ピーナッツバターによるサルモレラ食中毒が繰り返されてしまいました。
食品の微生物検査の目的と精度計算法をわかりやすく説明します
食品の微生物検査の目的を正しく理解し、その精度について理解しておく必要がある。微生物検査ではどれぐらいの確率で正しく汚染食品を検出できているのだろうか。例えば汚染率10%の食品サンプルをn=3で微生物検査をした場合に、偽陰性の結果を出してしまう確率は?あるいは、汚染率10%の食品サンプルを95%の精度で分析するためには何サンプル分析すればいいのか。本記事では、これらの算出を自分でExcel計算できるようになるために、分かりやすく、順を追って解説する。
出荷時の食品の微生物検査はどこまで役立つの?
食品製造工場で生産される食品(最終製品)の微生物検査の目的は何でしょうか?どこまで信頼できるのでしょうか?食品ごとに設定された微生物規格基準をクリアしていることの確認は勿論、必要です。しかし、自主検査において、食品の中にも最終製品の微生物検査がある程度有効なものと、ほとんど有効性が期待できないものがあります。では、どのような食品で有効で、どのような食品ではあまり有効ではないのでしょうか?本記事では、これを科学的に検証した論文を紹介します。著者は、国際食品微生物規格委員会(ICMSF )の議長(2022年5月現在)、ツヴィエタリング(Zwietering)博士です。
HACCP導入により微生物検査は必要なくなるの?どの微生物検査が残るの?
HACCP義務化の背景には、工程管理により微生物検査を減らしていくという考え方がある。分布及び存在量の少ない危害微生物のリスク判定に、最終製品の数少ないサンプルを抜き打ち検査しても、安全性を担保出来ないからである。では、HACCP導入により微生物検査は必要なくなるだろうか?微生物規格基準を証明する検査以外に、どのような微生物検査が残るのか?本記事ではHACCPに基づく衛生管理における微生物検査の在り方の基本事項について整理する。
フランスで発生した冷凍ピザによる腸管出血性大腸菌アウトブレイク
2022年3月から4月にかけてフランス全土で冷凍ピザによる腸管出血性大腸菌感染が発生しました。2022年4月25日現在、55人の患者が確認されています。ほとんどの患者は子供たちです。溶血性・尿毒症症候群(HUS)注)も多くの子供たちが発症し、死者も2名出ています。また意識不明の植物状態の子供たちもいて、現在フランス全土で大きな心配時となっています。世界最大の食品・飲料会社のネスレ社の傘下のブイトーニ社の冷凍ピザが原因であると当局は推定しています。現在フランス公衆衛生当局によりついてこの工場の衛生管理状態について調査中です。