一般生菌数や衛生指標菌
糞便系大腸菌群は衛生指標菌として信頼できるか?

 今回紹介する論文は、水道水における糞便系大腸菌群の指標菌としての妥当性の是非をめぐる、いくつかの論文での論争です。水道水において糞便系大腸菌の衛生指標としてはたしてどれだけ信頼できるのかについて、数年前に、2つの相反する結論を主張する論文が出版され、注目されました。今回はこの2つの論文を紹介します。

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基礎講座ー検査法(培養法)
食品の一般生菌数の検査方法の国際的な違い

食品中の一般生菌数の基準を解釈する際に、 一般生菌数の検査方法や測定方法が違えば、違った解釈となる。そもそも定義すら異なってしまう可能性がある。本記事では、食品中の一般生菌数の検査方法として採用されている方法について、主として米国(AOAC方式)とEU(ISO方式)の違いを中心に、国際的な違いについて説明をする。

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ノロウィルスおよびその他ウィルス関連
 ウィルスの変異株は免疫力が低下した回復の遅い感染者で出現しやすい

新型コロナウイルスの変異株(オミクロン株、B.1.1.529系統)が南アフリカであらたに出現し、読者の皆様も、気がかりな週末を過ごされたのではないでしょうか。そもそも、ウィルス変異とは何か、ウィルス変異の理由、仕組みとメカニズムの理解が重要です。特に、どのような状況で変異株が出現しやすいのかについて理解しておくことも重要です。

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基礎講座ー食品微生物学の基礎
微生物の増殖と酸素の関係の関連事項をすべて解説します

  食品微生物学分野においては、分離した細菌がグラム陰性桿菌である場合、次に重要な判断は、好気性細菌か通性嫌気性菌の判定である。本記事では、細菌の増殖と酸素の関係を理解するために、まずは、解糖系とは何か、クエン酸回路(TCA回路)とは何か、電子伝達系とは何かについてわかりやすく説明を加える。また、好気性細菌とは何か、通性嫌気性菌とは何か、偏性嫌気性菌とは何かについても述べる。

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基礎講座ー食品微生物学の基礎
グラム陰性菌の整理に必要なOF試験判定

  食品微生物検査において、分離した細菌がグラム陰性桿菌である場合、次に重要な判断は、好気性細菌か通性嫌気性菌の判定である。好気性細菌か通性嫌気性菌の判定の簡便法としてOF試験(Oxidation Fermentation test)がある。本記事では、OF試験の原理や判定方法についても述べる。また、OF試験結果が食品微生物検査に持つ意味についても解説する。

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一般生菌数や衛生指標菌
食品の大腸菌群検査の意義や基準に対して米国でも疑問の声あり

世界の食品微生物分野での大腸菌群の検査は、今後、消えていくかもしれません。現在、日本では、多くの食品の衛生基準に大腸菌群が入っています。国際的な微生物規格基準を設定しているコーデックスでは、確かに伝統的に食品衛生の指標として大腸菌群を用いてきた(コーデックスにおいては、現時点でも大腸菌群の基準が一部の食品において残っている)。しかし、 すでにEUでは食品の検査に大腸菌群は用いられていません。その代わり、大腸菌(Escherichia coli)および、腸内細菌科菌群の検査が採用されています。 日本以外の主な国は、例えば、米国や南米の一部の食品(乳製品等)で大腸菌群の基準があります。また、韓国でも日本と同様に多く食品の衛生基準に大腸菌群が設定されています。しかし、最近、米国やブラジルでも、乳製品業界や大学識者から疑問の声があがっています。本記事では、それらのいくつかの例を紹介します。

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基礎講座ー微生物の増殖条件とその制御
オキシダーゼ試験の仕組み-グラム陰性菌、特に腸内細菌科菌群の検査法として重要

本記事では、 オキシダーゼ試験(オキシダーゼテスト、シトクロームCオキシダーゼ試験、もしくは、チトクロームCオキシダーゼ試験などの別称あり) とは何か、この試験でわかること、その原理や試験方法(擬陽性などの注意事項含む)、グラム陰性菌で本試験結果が陽性や陰性だった場合の食品衛生学的意義、特に生食用食肉 規格基準に採用されている腸内細菌科菌群の検査法としての重要性、などについて解説する。

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■ 世界最新ニュース
米国とドイツの食品安全に対する消費者意識基本調査-食品微生物学の視点でピックアップ (ニュース)

  先週立て続けに、米国FDAとドイツ連邦リスク評価研究所から、食品安全に対する消費者意識基本調査の結果が公表されました。以下に、特に食品微生物学の観点から、サルモネラ、大腸菌、カンピロバクター、リステリアなどの食中毒菌に対する消費者の認知度などを中心に、要点をピックアップします。

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■ 世界最新ニュース
米国野菜サラダでのリステリア菌の混入によるリコール(ニュース)

 10月29日米国 FDA の発表によると、米国の10の州で袋入りサラダのリステリア菌(Listeria monocytogenes)の混入によるリコールが行われています。Dole Fresh Vegetables、Incは、ジョージア州の農業省が実施したランダムサンプルテストでリステリア菌の自社サラダ製品に陽性結果が出たため、10月29日に4つのブランドの袋入りサラダ製品をリコールすることを決定しました。

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基礎講座ー食品微生物学の基礎
グラム陰性菌とグラム陽性菌の特徴、違い、種類を整理する微生物分類方法(食品微生物学整理箱)

最近は 16srrna遺伝子解析に基づく種の同定が 盛んになっている。その結果、細菌の分類が微細かつ複雑になってきた。しかし食品微生物学の分野では、詳細な分類を行う前に、頭の中で大きな枠組みを理解しておくことの方が重要である。この記事以降、数記事にわたり、食品微生物学の中で登場する各種グラム陰性菌やグラム陽性菌の種類や特徴の整理・覚え方に便利な微生物分類方法、すなわち、頭の中の食品微生物学整理箱をについて述べたい。グラム陽性菌とグラム陰性菌とでは、頭の中で整理しておくべき整理箱の構成が少し違う。これらの枠組みを頭の中に入れておくと便利である。

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