遺伝子に基づく検査法
次世代シークエンサーを応用した食中毒原因細菌の解析(米国GenomeTrakrプロジェクト)の劇的成果

 米国CDC、 FDA、 USDA- FSIS、 NCBIは次世代シークエンサー(NGS)を用いた食中毒細菌の全ゲノム解析のための提携を結び、Genome Trackrプロジェクトを2013年に開始しました。このプロジェクトが始まった2013年9月以降、原因食品を解明することができた食中毒事件数が急激に上昇しました。今回紹介する論文は、 Genome Trackrプロジェクト の開始前と開始後でリステリア菌による食中毒の原因究明がどれだけ改善されたかを紹介した論文です。

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基礎講座ー検査法(遺伝子に基づく方法)
病原菌や食中菌の感染ルート把握のための分子疫学解析手法(菌株の識別法)のすべてをわかりやすく解説します

病原菌や食中毒菌の感染ルートの把握には、精度の高い鑑別法(fingerprinting)が求められる。これまでに細菌の株レベルのタイピングは主としてパルスフィールドゲル電気泳動法に代表されるフラグメント解析や、キャピラリーシーケエンサー(サンガー法)により一部の遺伝子配列を読むMLSTやMLVA等が主流であった。しかし、今後、細菌の株レベル分子疫学解析は、次世代シークエンサーによる全ゲノム配列解析が主流になる。本記事では、これらの分子疫学解析法(菌株の識別法)のすべてを、わかりやすく説明する。

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薬剤耐性菌
薬剤耐性菌(ESBL産生菌)による院内感染が病院食堂の食品からおきた

本シリーズでは薬剤耐性菌問題を、特に食品の摂取との関連の記事を中心に紹介しています。前記事では、市販の鶏肉が市中尿路感染での大腸菌の供給源になっている可能性を示す論文を紹介しました。しかし、前記事の研究はあくまでも臨床株と市販肉分離の大腸菌の遺伝子性状の比較による、間接的な推測でした。今回紹介する事例は、実際に病院の食堂で提供される食品由来の薬剤耐性菌(ESBL産生菌)が入院患者の院内感染の原因となったことを直接的に示したレポートです。

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基礎講座ー検査法(遺伝子に基づく方法)
食品微生物検査に必要なPCR法とリアルタイムPCRの原理をわかりやすく説明します

 本記事では食品微生物の遺伝子検査における PCR 法とはどのような技術か、リアルタイム PCR法とはどのような技術か、これらの技術の原理や 仕組み、利点を分かりやすく説明する。 記事内では、これらの技術を理解するのに必要な、プライマー、taqman (タックマン)、定量性、Ct値、サイクル数、検量線等にいてもわかりやすく説明する。また、リアルタイム PCR の定量性について、臨床微生物分野と食品微生物検査においての応用の違いが出てくることについて説明する。

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基礎講座ー検査法(遺伝子に基づく方法)
遺伝子検査による微生物の同定

   本記事では、微生物同定を遺伝子検査によって行う方法を分かりやすく解説する。細菌の種をどのように定義するのか、OTU(operational taxonomic units)とはなにか、16SrRNAとはなにか、16SrDNAとは何か、ハウスキーピング遺伝子とは何か、なぜ16SrDNA遺伝子解析(シーケンス)が同定に適しているのか、系統解析との関連、種の同定に適している配列領域とはなにか、その検査のメリットと限界、留意点について、解説する。

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薬剤耐性菌
シリーズ:薬剤耐性菌問題に食品産業はどのように取り組むべきか?

今記事以降、新型コロナウィルスの次に人類を襲うと心配されているパンデミック問題を、シリーズで扱います。それは薬剤耐性菌の問題です。薬剤耐性菌の問題は感染症の問題にとどまらず、外科手術での事前感染予防対策や、免疫がん療法など、幅広く、甚大な影響を及ぼすと想定されています。2050年頃には薬剤耐性菌による死者数は、現在の癌患者数以上になるとの推計もあります。このように、薬剤耐性菌の問題は極めて深刻であり、食品産業界においても取り組まなくてはならない問題です。したがって、この問題をシリーズ化して扱います。

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一般生菌数や衛生指標菌
ISO基準の一般生菌数(30°C、72時間)検査方法で、低温細菌や変敗・腐敗乳酸菌はどれくらい測定できているのか?

 一般生菌数の測定は、米国(AOAC方式 、35°C48時間 )とEU(ISO方式、30 °C 72時間)に2分されています。ISO方式では米国の方式よりも培養温度を低くして長い時間を培養しています。その理由として、低温細菌をできるだけ拾いたい背景があるからだと別記事で述べました。しかし ISO方式 でも低温細菌は検出には不十分です。 ISO方式 の一般生菌数測定法では、低温細菌や変敗・腐敗乳酸菌を果たしてどれくらい測定できているのでしょうか?

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基礎講座ー検査法(遺伝子に基づく方法)
遺伝子検査による食品微生物検査(シリーズ)

 遺伝子検査による食品微生物の検出・同定に関する手法は多岐にわたる。本シリーズでは網羅的になることを避け、そもそも食品微生物検査における遺伝子検査とは何か、代表的な技術(PCR法、リアルタイムPCR法、lamp法、パルスフィールド電気泳動、MLST法、MLVA法、次世代シークエンサー等)の概略、 遺伝子検査 によってわかること、そのメリット、実施するにあたっての技術特性の理解や留意事項を中心に順次シリーズで解説する。なお、本シリーズは実験マニュアルを提供するものではない。初心者に各技術の特性をわかりやすく説明することを目的としている。

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■ 世界最新ニュース
ノルウェーのスモークサーモン工場でのリステリア菌汚染実態

リステリア菌食中毒の感染経路として、生ハムやナチュラルチーズなどが頻度の高いものとして挙げられます。その他にも、野菜や果物、加熱せずに消費者がそのまま食べるready-to-eat食品なども感染経路となります。スモークサーモンも感染経路のひとつです。2021年の10月に、ノルウェーの海洋研究所は、ノルウェー食品安全局の委託を受けて、サケ切り身の加工処理施設におけるリステリア菌の大規模な汚染調査結果を公表しました。

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■ 世界最新ニュース
鶏肉のカンピロバクターの汚染をめぐる英国大手スーパーの熾烈な公表競争と小規模小売店舗の汚染格差の実態

ある国でのカンピロバクター腸炎の食中毒の発生確率は、 食鳥処理場で汚染するカンピロバクターの菌数レベルで決定されます。 今回紹介するのは英国の先端的取り組み事例です。 「 カンピロバクター1gあたり1,000CFUを超える 」鶏肉を、全体の7%以下にする目標を掲げています。鶏肉のカンピロバクター汚染率の公表義務により、大手スーパーは熾烈なカンピロバクター汚染除去競争を繰り広げています。一方、h小規模小売店舗の実態は。。この記事でその実態を紹介します。

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