食品微生物検査に必要なPCR法とリアルタイムPCRの原理をわかりやすく説明します
本記事では食品微生物の遺伝子検査における PCR 法とはどのような技術か、リアルタイム PCR法とはどのような技術か、これらの技術の原理や 仕組み、利点を分かりやすく説明する。 記事内では、これらの技術を理解するのに必要な、プライマー、taqman (タックマン)、定量性、Ct値、サイクル数、検量線等にいてもわかりやすく説明する。また、リアルタイム PCR の定量性について、臨床微生物分野と食品微生物検査においての応用の違いが出てくることについて説明する。
遺伝子検査による微生物の同定
本記事では、微生物同定を遺伝子検査によって行う方法を分かりやすく解説する。細菌の種をどのように定義するのか、OTU(operational taxonomic units)とはなにか、16SrRNAとはなにか、16SrDNAとは何か、ハウスキーピング遺伝子とは何か、なぜ16SrDNA遺伝子解析(シーケンス)が同定に適しているのか、系統解析との関連、種の同定に適している配列領域とはなにか、その検査のメリットと限界、留意点について、解説する。
シリーズ:薬剤耐性菌問題に食品産業はどのように取り組むべきか?
今記事以降、新型コロナウィルスの次に人類を襲うと心配されているパンデミック問題を、シリーズで扱います。それは薬剤耐性菌の問題です。薬剤耐性菌の問題は感染症の問題にとどまらず、外科手術での事前感染予防対策や、免疫がん療法など、幅広く、甚大な影響を及ぼすと想定されています。2050年頃には薬剤耐性菌による死者数は、現在の癌患者数以上になるとの推計もあります。このように、薬剤耐性菌の問題は極めて深刻であり、食品産業界においても取り組まなくてはならない問題です。したがって、この問題をシリーズ化して扱います。
ISO基準の一般生菌数(30°C、72時間)検査方法で、低温細菌や変敗・腐敗乳酸菌はどれくらい測定できているのか?
一般生菌数の測定は、米国(AOAC方式 、35°C48時間 )とEU(ISO方式、30 °C 72時間)に2分されています。ISO方式では米国の方式よりも培養温度を低くして長い時間を培養しています。その理由として、低温細菌をできるだけ拾いたい背景があるからだと別記事で述べました。しかし ISO方式 でも低温細菌は検出には不十分です。 ISO方式 の一般生菌数測定法では、低温細菌や変敗・腐敗乳酸菌を果たしてどれくらい測定できているのでしょうか?
遺伝子検査による食品微生物検査(シリーズ)
遺伝子検査による食品微生物の検出・同定に関する手法は多岐にわたる。本シリーズでは網羅的になることを避け、そもそも食品微生物検査における遺伝子検査とは何か、代表的な技術(PCR法、リアルタイムPCR法、lamp法、パルスフィールド電気泳動、MLST法、MLVA法、次世代シークエンサー等)の概略、 遺伝子検査 によってわかること、そのメリット、実施するにあたっての技術特性の理解や留意事項を中心に順次シリーズで解説する。なお、本シリーズは実験マニュアルを提供するものではない。初心者に各技術の特性をわかりやすく説明することを目的としている。
ノルウェーのスモークサーモン工場でのリステリア菌汚染実態
リステリア菌食中毒の感染経路として、生ハムやナチュラルチーズなどが頻度の高いものとして挙げられます。その他にも、野菜や果物、加熱せずに消費者がそのまま食べるready-to-eat食品なども感染経路となります。スモークサーモンも感染経路のひとつです。2021年の10月に、ノルウェーの海洋研究所は、ノルウェー食品安全局の委託を受けて、サケ切り身の加工処理施設におけるリステリア菌の大規模な汚染調査結果を公表しました。
鶏肉のカンピロバクターの汚染をめぐる英国大手スーパーの熾烈な公表競争と小規模小売店舗の汚染格差の実態
ある国でのカンピロバクター腸炎の食中毒発生確率は、食鳥処理場でのカンピロバクターの菌数レベルによって決定されます。今回紹介するのは、英国における先進的な取り組み事例です。「カンピロバクターが1gあたり1,000cfuを超える」鶏肉を全体の7%以下に抑えることを目標としています。鶏肉のカンピロバクター汚染率の公表義務により、大手スーパー間で熾烈なカンピロバクター汚染率公表競争が繰り広げられています。一方で、小規模小売店舗の実態についてはあまり知られていません。本記事では、その実態について詳しく紹介します。
RNAウィルス変異株出現の理由と仕組みー中程度の免疫弱者がウィルスの変異株の出現と拡大原因となりやすい
前記事で、なぜノロウィルスの変異株が出現するのかの仕組みとして、長期感染の免疫弱者に関する論文を紹介しました。しかし、ウイルスの変異株の誕生と変異ウイルスが自然界に拡大する現象は区別して考える必要があります。今回紹介する論文は、RNAウイルスの変異株の出現、およびその後の選択圧(宿主の免疫力)と自然界での拡大の関係を理論的に提示したものです。ウィルス研究者の間で何度も引用をされている重要論文です。
糞便系大腸菌群は衛生指標菌として信頼できるか?
今回紹介する論文は、水道水における糞便系大腸菌群の指標菌としての妥当性の是非をめぐる、いくつかの論文での論争です。水道水において糞便系大腸菌の衛生指標としてはたしてどれだけ信頼できるのかについて、数年前に、2つの相反する結論を主張する論文が出版され、注目されました。今回はこの2つの論文を紹介します。
食品の一般生菌数の検査方法の国際的な違い
食品中の一般生菌数の基準を解釈する際に、 一般生菌数の検査方法や測定方法が違えば、違った解釈となる。そもそも定義すら異なってしまう可能性がある。本記事では、食品中の一般生菌数の検査方法として採用されている方法について、主として米国(AOAC方式)とEU(ISO方式)の違いを中心に、国際的な違いについて説明をする。